ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

将王 24手目「覚悟」

2016-01-17 22:20:02 | 小説
小倉はいわば将棋界の長い長い歴史と戦っている。「通りで強いわけだ」と心の中で苦笑いを浮かべてみる。

「小倉先生、残り1時間です」

記録係の戸前三段の声が小倉の耳に届き、視線を声の主に向ける。若者は気押されたように俯いた。

あと1時間。小倉の形勢判断では少し苦しいが、まだはっきり悪い訳ではなかった。しかし、このままの状態で時間を使いきり、秒読みにでもなれば、勝ち目のない事は分かりきっていた。残り時間のあるうちに、勝負を決したい。小倉は直感を頼らざるを得ないと覚悟した。
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