明くる朝、といっても午前11時を過ぎていた。自室ベッドの上の小倉は、朦朧とした状態で携帯電話を手にした。
「ヘボンと対戦させてもらえませんか?」
受話器の向こうで川野の驚きと戸惑いが感じられた。いま、この朦朧とした時を逃せば、またヘボンに負ける恐怖が自分を支配してしまう。だから先手を打ったのだ。
「いいんですか?」。川野は小倉を気遣うように言った。
「はい。まだ間に合うのであればですが」
「ソフトの開発側は喜ぶと思いますよ。小倉さんと対戦するのが念願だった訳ですから」
「ええ、まあ」
「小倉さん」
「はい」
「この対局の勝ち負けによって、あなたの価値が変わることはないですよ」。川野は小倉の気持ちを見透かしたように言った。
「そうですかねえ」
「ええ、全く変わりません」
本当はその理由を聞きたかった。しかし、あえて小倉はそれを尋ねることなく、電話を切った。
「ヘボンと対戦させてもらえませんか?」
受話器の向こうで川野の驚きと戸惑いが感じられた。いま、この朦朧とした時を逃せば、またヘボンに負ける恐怖が自分を支配してしまう。だから先手を打ったのだ。
「いいんですか?」。川野は小倉を気遣うように言った。
「はい。まだ間に合うのであればですが」
「ソフトの開発側は喜ぶと思いますよ。小倉さんと対戦するのが念願だった訳ですから」
「ええ、まあ」
「小倉さん」
「はい」
「この対局の勝ち負けによって、あなたの価値が変わることはないですよ」。川野は小倉の気持ちを見透かしたように言った。
「そうですかねえ」
「ええ、全く変わりません」
本当はその理由を聞きたかった。しかし、あえて小倉はそれを尋ねることなく、電話を切った。