蕎麦遺産

未来の世代に引き継ぐべき「蕎麦」に関するあらゆる情報を調査し、「蕎麦遺産」として登録しています。

生粉打ち亭(新宿区納戸町)の「三種盛り」「山かけそば」

2008年11月30日 | 蕎麦屋(都内)
【平成20年11月某日 調査・登録】
 こちらの店「生粉打ち亭」は前掲の「たかさご」のすぐそばにありますが、「たかさご」同様に土地勘がない方には少し分かりづらい所にあります。
 店名の由来にもなっている「生粉打ち(きこうち)」とは、小麦粉・山芋・布海苔などの「つなぎ」を一切使わずに、蕎麦粉と水だけで打つ蕎麦のことを言います。
 こちらの店では、福井・山形・栃木などから取り寄せた国内厳選蕎麦を用いて、店内に設けられたガラス張りのそば打ち処で、皮むき・製粉し、薫り高い蕎麦を打っています。この店内のそば打ち処では「そば打ち教室」も催されています。


 「三種盛り」は、(画像左から)江戸そば・田舎そば・津軽そばの盛り合わせです。
 この店は、蕎麦だけでなく、そばつゆにも大変なこだわりを持っています。醤油は島根の再仕込み醤油、味醂は伝承古式醸造法による昔仕込本味醂、砂糖は阿波和三盆糖およびグラニュウ糖が使われています。出汁は鰹節・昆布・どんこを使用して1時間じっくりと煮出して取られますが、鰹節は本枯節の厚削り・昆布は利尻昆布・どんこは国産が使われています。


 「江戸そば」は、皮むきした丸抜きそばを自家製粉し、メッシュ30番で篩った粉を80%、20番で篩った粉を20%混ぜて打ったそばだそうです。3種類のそばの中では最も白い色をしています。


 「田舎そば」は、皮のついたままのそば「玄そば」を50%、丸抜きそばを50%混ぜ、自家製粉した粉をメッシュ40番で篩った粉を使用しているそうです。3種類の中では一番黒くて太く、香りもひと際高く仕上がっています。


 「津軽そば」は、「江戸そば」の粉を使用し、呉汁(大豆をすりつぶした汁)で打ったそばで、青森の郷土そばだそうです。製法が複雑なため消滅し、今では幻のそばといわれているそうです。独特の食感と甘みがあり、3種類の中では、のど越しが一番よく仕上がっています。


 「山かけそば」



 仕上げは勿論「そば湯」です。「ごちそうさま」で店をあとにしました。


★生粉打ち亭
  所在:東京都新宿区納戸町10番地
  電話:03(3235)7177
  品代:三種盛り1,500円、山かけそば1,200円

蕎麦の膳 たかさご(新宿区中町)の「せいろう」「鴨南蛮そば」

2008年11月24日 | 蕎麦屋(都内)
【平成20年11月某日 調査・登録】
 こちらの店「たかさご」は、神楽坂の外れというべきか、市ヶ谷の近くというべきか、土地勘がない方には少し分かりづらい所にあります。交通の便もあまり良くありませんが、それでも都営大江戸線が開通し、牛込神楽坂駅ができてからは比較的アクセスが楽になりました。
 こちらの店主 宮澤佳穂氏はNHK文化センターの「そば打ち講座」の講師をされておられ、生粉打ち十割そばの名人でもあります。



 こちらの蕎麦は、店主自ら厳選した国内産玄蕎麦を自家製粉し、蕎麦粉十割によく冷えたアルカリイオン水を加えて打つ生粉打ちです。また、汁は7年以上寝かせた本節と宗田節の荒削りを長時間弱火にかけて、鰹の風味と濃を充分に引き出した逸品です。
 
 「せいろう」は都内屈指の出来といっても過言でないと思います。十割には思えない仕上がりの蕎麦、実に奥行きのある汁、味わい豊かな山葵や葱、いずれも完成美を満喫できます
 そば湯がトロリとしてまた美味!「せいろう」をいただく猪口の隣にもう一つ別の空の猪口が置かれており、そば湯はそれでいただきました。

 そして、「鴨南蛮そば」も絶句の出来映えです。蕎麦もさることながら、蕎麦をいただいた後の汁(肉や葱のコラボレーション)が実に美味で、最後の一滴まで干すことができます。

 「撮影は堅くお断り」とのことで、写真でご紹介できないのが残念です。

★蕎麦の膳 たかさご
  所在:東京都新宿区中町22番地
  電話:03(3260)3908
  品代:せいろう788円、鴨南蛮そば1,365円

並木藪蕎麦(台東区雷門)の「ざるそば」「おかめそば」

2008年11月22日 | 蕎麦屋(都内)
【平成20年11月某日 調査・登録】
 この店「並木藪蕎麦」は、「かんだやぶそば」「池の端藪蕎麦」とともに、「藪 御三家」と称される名門の蕎麦屋です。



 店は浅草の雷門のすぐそばにあります。


 「ざるそば」は笊を逆さに使って蕎麦を盛っているのが特徴です。
 「藪蕎麦」はどこでも辛いつゆが定番のようですが、中でもこの並木藪蕎麦のつゆは日本一辛いと評判です。昔から伝えられている江戸蕎麦の粋な手繰り方は、箸で掴んだ蕎麦の先のほうを少しだけつゆに付け、ズズっと口に運ぶというものです。これは蕎麦本来の香りを楽しめるからですが、まさに、そんな手繰り方がピッタリ(そうしなければ辛過ぎてしまう)の超辛口のつゆに仕上がっています。江戸っ子の痩せ我慢ではありませんが、こういうつゆも江戸蕎麦にはイイものだと感じます。



 「おかめそば」は蒲鉾・湯葉・麩が入っています。「ざるそば」とは違って、つゆは柔和にまとめられています。丼に口をつけてグイっといただくことができます。



 仕上げは勿論「そば湯」です。「ごちそうさま」で店をあとにしました。


★並木藪蕎麦
  所在:東京都台東区雷門2-11-9
  電話:03(3841)1340
  品代:ざるそば700円、おかめそば950円

黒澤(千代田区永田町)の「焼き味噌」「出汁巻き玉子」「せいろ」「湯葉そば」等

2008年11月15日 | 蕎麦屋(都内)
【平成20年11月某日 調査・登録】
 この店「黒澤」は、著名な映画監督であった故・黒澤明氏の名を冠し、映画の感動を食で再現しようと努めています。
 蕎麦は、NHKのそば打ち講座の講師も務められた蕎麦名人 高橋邦弘氏直伝の自家製粉手打ちそばです。


 料亭風の店構えの突き当たりにガラス張りになったそば打ち処があります。


 まずは例によってお酒から・・・青森の特別純米酒「田酒」です。そして、肴は「焼き味噌」です。とても香ばしく酒によく合います


 「出汁巻き玉子」は出汁がタップリ効いた極ウマ玉子です。二人でいただいたので、わざわざお皿二つに半人前ずつ分けてくれました。これだけ旨い肴が揃えば、お酒も進みます。次は秋田の山廃「春霞」を熱燗で


 さあ、いよいよお目当ての蕎麦です。山梨の名店「翁」で腕を磨いた職人による手打ち蕎麦です。北海道・茨城・信州産の蕎麦の実を店頭の石臼で自家製粉した蕎麦粉が使われています。削りたての鰹節でとった汁で手繰る蕎麦は香りも豊かで最高です。



 店の内装は黒澤映画のセットを感じさせる造りとなっています。


 「湯葉そば」は蕩けるような湯葉が美味しい蕎麦に絡み、秀逸な味を創り出しています。



 仕上げは勿論「そば湯」です。「ごちそうさま」で店をあとにしました。


★黒澤
  所在:東京都千代田区永田町2-7-9
  電話:03(3580)9638
  品代:焼き味噌420円、出汁巻き玉子840円、せいろ735円、湯葉そば1,260円、田酒1,260円、春霞840円

蓮玉庵(台東区上野)の「古式せいろそば」「かき揚げそば」「やきのり」等

2008年11月09日 | 蕎麦屋(都内)
【平成20年11月某日 調査・登録】
 この店「蓮玉庵」の屋号は、初代の八十八氏が近くにある不忍池の蓮を見て、葉の上にまろぶ玉の如き露にちなんで「蓮玉庵」と名づけたことが由来とのことです。創業は安政6(1860)年という老舗蕎麦店です。
 著名な歌人 斉藤茂吉の短歌に「池之端の蓮玉庵に吾も入りつ上野公園に行く道すがら」とあるだけでなく、森鴎外の「雁」や、一葉・逍遥など明治の文豪の文筆にもしばしば登場する有名店です。


 白地の暖簾


 今日は秋も深まり、寒さが一段と増した1日でした。そんな日にはやはり熱燗ですね。蕎麦屋の熱燗のアテには「やきのり」が似合います。


 こちらの店のそばは、妙高高原等の「露下そば」を主に使いながら、適量の小麦粉をつなぎにして打っています。
 さて、こちらは、昼間(14時まで)限定の「古式せいろそば 別打ち入り三枚重ね」です。


 三枚のひとつ、奥の薄黄色のそばは香り豊かな「柚子切り」です。



 同じく昼間限定の「かき揚げそば」は、小海老と玉ねぎのかき揚げが入ったそばで、温かいそばと冷たいそばが選べます。かき揚げがカラっと揚がった逸品です。


 プリプリの小海老



 仕上げは勿論「そば湯」です。 「ごちそうさま」で店をあとにしました。


★蓮玉庵
  所在:東京都台東区上野2-8-7
  電話:03(3835)1594
  品代:古式せいろそば1,000円、かき揚げそば1,000円、やきのり400円、御酒630円

九段 一茶庵(千代田区神田神保町)の「たまごやき」「つくね揚げ」「純せいろ」「湯葉とじそば」等

2008年11月03日 | 蕎麦屋(都内)
【平成20年11月某日 調査・登録】
 この店「九段 一茶庵」は、そば名人と言われた故・片倉康雄氏の技術と伝統を受け継ぎ、平成2(1990)年に開店しました。片倉康雄氏は明治37年生まれで、著名な文士や北大路魯山人と交流しながら、そば打ちの技術だけでなく、素材や道具の選定、器造りなどにも傾倒し、そばを芸術の域にまで高めた方です。


 めっきり涼しくなって熱燗が恋しい季節になりました。今日は富山の「立山(本醸造)」にしました。穏やかなふくらみのある味わいがあって後口のスッキリとしたキレのある酒です。


 「たまごやき」は新鮮な玉子をそばつゆで仕立てたものです。味に奥行きがあり、上品な甘さも手伝い、酒の肴によく合います



 「つくね揚げ」は、蔵王合鴨から作ったこの店特製の逸品です。歯ざわりやヌチャっとした食感が最高です。


 これだけ美味しい肴が続きますと、当然に酒も続きます。今度は宮城の「一ノ蔵(超辛口純米酒)」を冷で!凛として端正、そして爽やかな味わいに特徴があります。


 いよいよ蕎麦です。「純せいろ」は、1日20枚限定の希少品で、北海道産の新そばが十割で打たれています。蕎麦の香りが漂う逸品です。



 「湯葉とじそば」は、上質の生湯葉を新鮮な玉子でとじた温かいそばです。


 生湯葉がトロリとして、玉子やミツバの風味と絶妙に融合し、味・風味・食感のすべてが揃った逸品に仕上がっています


 そばは太打ちと細打ちが選べます。今回は太打ちを選びました。かなりの太さで、コシ・食感・歯ごたえを強く感じることができます。


 仕上げは勿論「そば湯」です。ごちそうさまでした。


 満足・満腹で店をあとにしました。


★一茶庵
  所在:東京都千代田区神田神保町3-6-6九段アビタシオン1階
  電話:03(3239)0889
  品代:たまごやき800円、つくね揚げ550円、純せいろ1,000円、湯葉とじそば1,300円、立山(本醸造)800円、
     一ノ蔵(超辛口純米酒)1,000円

蕎楽亭(新宿区神楽坂)の「二色そば」「深山そば」「そば茶アイス」

2008年11月01日 | 蕎麦屋(都内)
【平成20年11月某日 調査・登録】
 この店「蕎楽亭」は神楽坂毘沙門天の裏手にあり、蕎麦通にはよく知られた店です。店主の長谷川健二氏は福島県会津のご出身で、蕎麦の名店として有名な千代田区猿楽町の「松翁」で修行を積まれた後、市ヶ谷で独立開業されたのち、平成17(2005)年にこちらに店舗を移されました。


 店頭の看板、「商い中」の札と石臼


 蕎麦は主に福島県会津柳津町産や茨城県岩瀬町産が使われ、玄そば及び丸ぬきのそばの実を店頭の石臼で製粉しています。
 出汁には尾札部産の真昆布に枕崎産の本節、そしてイリコと乾椎茸が使われています。
 また、醤油は小豆島産の三年熟成醤油と愛知産の白醤油、山葵は伊豆湯ヶ島産、ねぎは千住ねぎ、大根は福島県会津産の辛味大根が使われ、産地や素材にもこだわった仕事をしています。

 「二色そば」は「そば」と「十割そば」の合わせ盛りです。「そば」はつなぎを一~二割ほど使っています。「十割そば」は玄そばのまま挽いているので色が黒めです。上質の蕎麦だけが持つ香りが上品に漂う逸品に仕上がっています。


 「そば」


 「十割そば」


 今の季節<秋>限定の「深山そば」は、会津地鶏と原木なめこや天然きのこをふんだんに使って作られています。つゆの醤油は薄めで、きのこから出る芳醇な香りが蕎麦本来の持つ香りと融合し、最後の一滴までつゆを飲み干してしまいたくなるほど絶妙な芸術作品に仕上がっています




 凝った焼物の器に入った「七味」


 そう、そばの仕上げは勿論「そば湯」です。


 最後にいただいたのは自家製の「そば茶アイス」です。竹製の器で提供され、そばの香りが仄かに漂う濃厚なアイスクリームです。トッピングされている炒られた蕎麦の実がカリっとしていて香ばしく、とても良いアクセントになっていました。ごちそうさまでした。


★蕎楽亭
  所在地:東京都新宿区神楽坂3-6神楽坂館1階
  電話:03(3269)3233
  品代:二色そば1,050円、深山そば1,600円、そば茶アイス380円