犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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棺ボール箱

2019年08月07日 | 介護ウチのバヤイ
[あらすじ] 同居母86歳パーキンソン病要介護2認知症状少々は、
どらやきをフランスに送る、と言って、宅食業者の通販に葉書で食品を注文した。
4~5千円の冷凍食品が二品届き、そしてまだ不在票が手元に残る。
着払いで約28,000円だという。

家から2㎞ほどの郵便局に、車で向かう。
朝8時に、犬の点滴を手伝いに友人Mが家に来てくれる、その前に
ひとっ走り用事を済ましてしまおう。

ガランとした局の、郵便物受け取り窓口へ向かう。
不在票を渡し、身分証を見せる。
局員が奥に荷物を探しに行く。



遅い。
なかなか戻って来ない。

そういえば、28,000円分の食品という荷物の大きさを
私はイメージしていなかったな、と
待ちながら思った。

思ってから更にしばらく待った揚げ句、
ガラガラガラと局員が荷物を押して戻って来て言う。
「すごい重いんですけど、大丈夫ですかねえ?」

えっ。と、
一人じゃ無理なくらい?
「台車はお貸ししますけど。」
じゃあ、車まで借ります。

台車と呼んでいるのは、
直方体の辺をパイプで組んでキャスターを付けただけの
シンプルな形の物だ。
腰より少し低いくらいの高さに作ってあるので、
重い荷物を積み下ろししやすくなっている。

これ、見たこと有るな。
ああ、この高さ、こんな感じの台車に、
こういうふうに箱が載っているの、
霊安室との棺の移動の様によく似ている。



後部座席には入らない。
車の後部のハッチを開けて、
すっぽり入り切る幅なのでホッとした。
まったく、こういう型の車じゃなきゃ、もっと苦労しただろう。

それに、段ボール箱が大き過ぎて、持ち上げるとなんだかグニャグニャする。
友人Mは台車を持っている。
でもこの荷物はフツウの台車からははみ出て運びにくそうだし、
家の前の砂利道は台車に向かない。
二人で持って運んだほうが良さそうだ。
そう、棺のように。



友人Mを手招きして、駐車場へ向かう。
ハッチを開ける。
「どうしたのお!これええ!」

友人Mには、事の次第は全部話してある。
ついでに、以前届いたどでかい発泡スチロールの箱も見せたことがある。
それに、Mは日頃たいへん冷静な人で、そうそう叫んだりしない。
それでも、叫ぶのだ。
そうだよね。やっぱ驚くよね。

大きい荷物を見たって、中身が家具だと思えば、大きさも値段もふさわしい。
中身が食品だと知っているだけに、驚くわけだろう。

驚くMと私で段ボール棺を家に運んだ。
そして、釘を抜きじゃないガムテープを剥がし、箱を開けた。



おおお。
これが送りたいどら焼きだな。
ひと袋何十個入りなんだ?それが束になっている?
何?そっちにもう一束どら焼きが有る?
Mが言う。
「良かったねっ、賞味期限、10月だよ!」

そっちは何だ?
かりんとう?すごいカサだな。
何?そっちにもう一束かりんとうが有る?

じゃあこの数々の小さい段ボール箱を開けていこう。
そっちは何?
おでん?なるほど。
って、12食も要らんわ!

これは、一口水ようかん?
何十個入ってんだ?
何?そっちにもう一箱水ようかんが有る?
まったく、うちは菓子問屋か。

こっちは、何か贈答用の瓶詰めだわ。
佃煮とか、鮭ほぐしとか。
ああ、何かホッとする。

これは何?ロシアケーキ?
ロシアケーキって何?
「ああ、ロシアケーキね、こういう形だよね。」と、Mは知っている。そうか。
何?そっちにもう一箱ロシアケーキが有る?
なんかアレじゃないか、たくさん有るうち一個だけ激辛とか。
それじゃロシアンルーレットケーキか。



母にその荷物の山を見せて、これは極端であり困る、と申し入れるが、
山のような菓子を見ても母は特段驚いた様子も無く、
「それには理由が有る。」と言う。

大脳辺縁系の欲求にドライブが掛かって前頭葉のブレーキが壊れている人の
理由をきちんと聞くと、こちらの脳みそには到底理解し難いので、
私は馬になりたい。



「これは子どもっていうか、大人も入るよー。」とM。
そうね。レッツトライ。

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