冷蔵室

[あらすじ] 同居母86歳パーキンソン病要介護２認知症状少々、
宅食のカタログを見て注文葉書を書き、大量の食品を購入。

届いた段ボール箱は身長159㎝体重56㎏の人間を
折り畳んで詰め込んで車の荷台に積めるほどの大きさであった。

※

「良かったね、冷凍の物は無いよ。常温保存のできる物ばかりだよ。」
と、友人Ｍが言う。
そうなのだ。そこはまずひと安心なのだ。
とは言え、場所を取るわ。

まあ、ちょうど冷蔵庫の買い替えは考えていた。
いや、とっくに買い替えねばならなかったのに、先延ばしにしていたのだ。

※

家から２㎞ほどのところを走る東八道路は、郊外の幹線道路にありがちな
大規模量販店が沿線に連なる。
私は４軒の家電量販店をハシゴして、今の冷蔵庫の様子を見た。

分かったこと。
・型落ちの機種はインバーターが無いから、
　消費電力も大きいし、音もうるさいかもしれない。
・今使っているのと同じくらいのサイズが良いのだが、
　360リットルくらいの冷蔵庫というのは機種が少ない。
・400リットル超えるくらいの物のほうが、消費電力が少ない。
・野菜室に液ものを入れやすくしてある機種がけっこう有る。

新しい家電を買うために、あれこれ選ぶのは楽しいものだよね。
自分の思い通りに選べれば。

同居母が冷蔵庫を使うと、
・ドアを開けたまま何分もかかる。
・主室やドアポケットに物を出し入れすると、こぼす。
・だから、野菜室に母が必要な物すべてを揃え、そこで完結してくれるのが理想的。

ただし、本人は「まだできる。」と思っているので、主室に物を入れる。
しかし、背は曲がっているし、目は「開かない」ので、じゃんじゃんこぼす。
こぼれたものは、その高さから下方すべてを汚し、金属を傷める。
野菜室が使いやすい物が良い。

ああ、でも
・フレンチドアいいな。必要な範囲だけをちょいと開ければ良い。
・真空機能などの付加要素の有るチルドいいな。予定通りに調理できなくても日持ちがすると助かる。
・冷凍室の引き出しは浅いのが２段のほうがいいな。深いと忘れる領域ができてしまう。

などなど、やはり自分自身の使い勝手も考えたくなる。
そういった要件で考えると、400リットルを超えるサイズの物になる。
しかし消費電力は却って小さい。
じゃあいいか。

思い切って、注文してみた。

※

翌日。
冷蔵庫の上に吊り棚が有ることに気付いた。
大きい冷蔵庫は入らないじゃないか。
慌ててキャンセル。ふう。

やはり、その前に決めていた物にすることにしよう。
あるネットショップで、チャットで在庫確認ができる、という。
希望日に設置してもらえるか、注文前に問い合わせできるのだ。
ギリギリの日程なので、チャットしてみる。

すると、20分もしない間に返事が来て、希望の８月８日に設置できる、という。
14時過ぎ、すぐに注文した。

※

翌朝気付くと、そのショップからメールが来ていた。
前日の17時50分頃だ。
見ると、「最短設置日は８月９日になります。」と書いてある。
話が違う。

やれやれ。
注文のタイミングからメールのタイミングまでの間に
配送業者の予定が埋まったということなのだろうか。

私は、チャットをコピー＆ペーストして、
こういう次第だから８日に設置を希望します、と返信した。

※

しかし、ショップからの返信は、
やはり設置は９日になること、チャットの時点では可能だったが、
お客様の返信のタイミングでは既に予定が埋まっていた、と言う。

オイコラ。
９日と言い始めたのはそっちのメールからじゃないか。

※

と思い、さらに返信して食い下がろうと思ったのだが、
文面を推敲している間に、段々情けなくなってきた。

母の行動範囲である台所で大掛かりな作業をするので、
母のショートステイ中に済ませてしまいたい。
ギリギリのタイミングになってしまったのは、一旦、別の物に気が行っていたからだ。

なんでこんなにギスギスしなけりゃならんのだ。
と思ったら、泣けてきてしまったのだ。

※

ここは諦めて、９日の設置にしてもらうことにした。
前日の夜まで、９日の何時になるかは、分からない。

母のショートステイからの帰宅は、10時半過ぎだ。
朝一番だったら助かるのだが。

※

冷蔵庫は空っぽにして、準備万端だ。