漫画家・桜多吾作(おおた ごさく)さんの訃報をお聞きしました。心からご冥福を
お祈りいたします。
私は桜多さんの近年の活躍を詳しくは存じ上げておらず、今回の一連の報道を通じ、
スポーツ紙で釣りをテーマにしたイラストエッセイなどを連載し、人気を博していた
ことを初めて知りました。私にとって桜多さんと言えば、いずれも永井豪さん原作の
「マジンガーZ」「グレートマジンガー」「UFOロボ グレンダイザー」等々の
コミカライズ版で、中でも大のお気に入り、マジンガーZのコミックス(全6巻)
を引っ張り出してきて、久々に読み返してみました。
原作者のコメント欄で永井さんが述べられているとおり、人間くささがより多く
あふれ出ているのが桜多版マジンガーで、バイオレンス、狂気、アクション、お色気、
それにギャグがほどよいバランスで成り立っていて親しみやすく、それが当時小学生
だった私には永井版本家マジンガーよりも受け入れやすかったのでしょう。ひとつの
物語の中で、それらが目まぐるしく入れ替わり場面転換するのでメリハリが効いて、
そのひと工夫が子供にも飽きさせず読ませる秘訣だったのかもしれません。ギャグが
加速すると、兜甲児ら登場人物が極端にデフォルメされたキャラ化ボディではしゃぎ
まわります。当時はまだSD(スーパーデフォルメ)って言葉はなかったかと思うの
ですが、その走りだったとも言えそうです。
主人公の甲児も相当にはっちゃけますが、シリーズ序盤、一番悪乗りするのが彼の弟・
シローで、ヒロイン・弓さやかにあの手この手で迫りまくるなど、甲児が一応ヒーロー
なのであまり極端に羽目を外せないのをしり目に、暴走し、好き勝手やるのが痛快
なのですね。
上記の傾向が特に顕著なのが、別冊少年マガジンでの連載を収録した第1巻と2巻で
しょうか。物語はほぼテレビシリーズを踏襲しており、要所要所でテレビ画面には
収まりきらない「おふざけ」がさく裂します。
ところが、掲載紙が冒険王に移った第3巻以降はシリアスさがぐっと増し、人物が
SD化する場面も少なくなります。物語もテレビとはかけ離れたオリジナリティーな
エピソードが中心となり、ブロッケン伯爵、ピグマン子爵などなど、共通の敵役は
登場させながらも、ストーリーは独自の長編ものが多くなります。2巻までは
テレビ版と同様、毎回新型機械獣を引き連れやってくるあしゅら男爵がマジンガーに
軽くあしらわれ、「おぼえてろよ!」の捨て台詞とともにすごすごと去っていく
お決まりのパターンで、桜多さんは同じような繰り返しのマンネリズムだと、読者が
飽きてしまうと悟ったのではないでしょうか。作画タッチも劇画基調となり、それに
伴い、シローらの悪乗りがほとんどなくなるのは少し寂しい気もします。全員大人
びてしまうのは、ドクターヘルとの幾多もの激しい戦闘をくぐり抜け、成長した証
でもあるのですが。
ところで、第4巻が欠けていることにすでにお気づきになられたことでしょう。
当時何度も書店に通いながら、なぜかいつ訪れても4巻の在庫がなく、ついに手に
入れられなかったのです。今なら「お取り寄せ」して手元に置こうとしたでしょう
けど、小学生の私にはそこまで考えが及ばなかったようです。それに、4巻は友達が
所有し、(当時は)いつでも読むことができたので、「まあいいや」とあっさり
あきらめてしまったみたいですね。多分にコレクター的な素養を持ち合わせている
だろう私、しかしその中途半端加減は、このエピソードからも明らかですね。
それからずいぶんのちに、大都社だったか?から再発売された桜多版マジンガーで、
コミックスの4巻にあたるものを買い求めて、ようやく欠落箇所を補完することが
できました。全巻ではなく、抜け落ちているその巻だけを購入するあたり、根っから
中途半端な私らしいです。
今回見つけられませんでしたが押し入れを引っ掻き回したら出てくるとは思うので、
いずれ近いうちに、個人的にいわくつきの第4巻にあたるパートを読み直そうと
考えています。
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