中でも、Googleは我々の暮らしを便利にしてくれるサービスを提供しているが、アメリカ製のものを日本人が日本という場所で使っているせいか、使いにくい、もしくは注意を要する場合がある。なんでもかんでもGoogle頼みでなく、国内のサービスのほうが使いやすく分かりやすいこともある。
防衛省は、イージスアショアの説明において、Googleマップの特性を理解せずに使ってしまったことで、失敗してしまった。
国土交通省国土地理院という、日本の地理の専門機関もあるというのに、アメリカの民間企業の無料サービスを使うという態度からして、安易だ。
僕も最近、Googleマップを使ってしまったばかりに、失敗しかけてしまった。バス車内で恥をかきかけたといううだけですが。そのてんまつ。
秋田市新屋から秋田市中央部(卸町とか川元とかの辺り)へ移動することになった。バスで1本の区間。中央交通の新屋線と思ったが、羽後交通の急行本荘・秋田線がちょうど来る時間。久しぶりに乗ってみよう。
新屋線と羽後交通では運賃体系が異なり、秋田市内の同じルートの同じバス停間でも、羽後交通のほうが少し安い。
羽後交通のバスは、運賃表示器がなく、運転席の裏(いちばん前の座席の前)に小さい文字の運賃表(三角表)が貼ってあり、それを確認しないといけないのが、乗り慣れない客にとっては敷居が高い。
しかし、現在はインターネットで運賃が調べられる便利な時代。
ナビタイムとGoogleマップの2つが使える。ナビタイムはページが重いようで、表示に時間がかかるから、その点ではマシなGoogleで検索。
バス停名である「日吉神社前からハローワーク秋田前」の検索結果。
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表示された運賃は「200円」。
中央交通だと270円だからずいぶん安いなと思いつつ、あまり時間もないので詳細も地図も確認せずに閉じてしまった。これが間違いだった。
バスは5分弱遅れた。でもスマホのバスロケーションシステムアプリ「知らせてビューア」で把握できたので、不安もイライラもなし。やはりバスロケはいい。
羽後交通本荘営業所には、今年2月に新車が3台入り、この路線にけっこうな頻度で充当されている。期待を裏切らず、そのうちの1390号車が来てくれた。
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乗客は3人くらい。
新屋地区では、この少し後に新屋線が続行する時間帯だった。そのためバス停で待っている高齢者は、羽後交通をやり過ごして100円で乗れる中央交通を待っていた。羽後交通自体に乗り慣れない【27日補足・よその街のバスであるという、ある種の先入観】ということもあるだろう。
一方、美大の学生らしき人は乗りこんできた。運賃は少し安く、どちらも駅方面へ行くわけで、(特に秋田以外から来た)若い人にとっては羽後交通も先入観なく選択肢に入るようだ。
羽後交通の新車エルガミオの車内。
座席配置は前方が1人掛けの「都市型」。
中央交通は運転席側は2人掛け・車椅子スペースの折りたたみ席は1人掛けの「郊外1型」。弘南バスは折りたたみ席も2人掛けの「郊外2型」。座席自体は、中央交通も弘南バスも羽後交通も同じ。
つり革は三角形。
降車合図ボタンは、中央交通など全国的に多いオージ製でなく、シェアとしては2番目と思われるレシップ製。でも、見たことがない新タイプのボタン。
「降車信号装置KSP-500シリーズ」で、オージの新しいものと似た雰囲気の、枠が黄色くボタンがオレンジ色。オージのよりも全体に小ぶりで、若干押しづらい気もした。
整理券は、羽後交通としてはかなり珍しいであろう感熱紙式。
インク式では「うごこうつう」と波状に紋が入った専用の紙が使われていたが、感熱紙では社名が印字されることもあり、無地。中央交通と同じ小田原機器製で、券面の印字も同じ。日付の年は「19」。
運賃箱は、見た目はきれいだが、新車のノンステップバスに不釣り合いな幅の広いものが鎮座。昔ながらの小田原機器製。現在は製造されていないはずだし、投入口のプラスチックが色あせていたので、中古品か。
さらに羽後交通では珍しい、本荘営業所では初の液晶式運賃表示器も搭載。2画面を横に並べたタイプ。
中央交通、弘南バス、JR東日本701系などで採用されている2画面タイプは、グレーまたは黒い枠で2画面を横に並べたレシップ製。こちらは白い枠で、画面デザインは似ているようで違いそう。
羽後交通のは「指月電機製作所」というメーカーのものらしいが、同社のバス鉄道機器事業は、2017年9月に小田原機器へ譲渡されたらしいから、これは小田原が継承したモデル?
ちなみに「秋田指月」という関連会社が羽後町にあるので、そのつながりで羽後交通が採用しているのかも。
画面では、レシップのバス用と同じく、運賃だけでなく2つ先のバス停名も表示される。
レシップでは、右画面全部を使って表示するので、その間は運賃表は左画面で半分ずつ表示する。個人的には頭がこんがらがって好きでない。
羽後交通のものでは、運賃表部分はそのままで、画面の右上の狭いスペースでバス停名を表示。文字は小さいけど、このほうが分かりやすい。
【2020年6月14日追記】ローマ字も表示されるが、2020年初め時点では「むつみまち」は「むつみちょう」、「さんのう(十字路)」は「さんおう」と読める表示になってしまっていた。
羽後交通伝統の、運転席後ろの三角表も、運転士用の1区間ずつ手でめくる運賃表も健在だった。
あと三角表の上に掲げられた、運転士氏名と「私は次のことを守ります」の黄色い表示板も健在。
秋田大橋を渡り、あっという間に降りるバス停。
中央交通では「ハローワーク秋田前」だけど、同じ場所なのに羽後交通では「茨島」というバス停名。運賃表示器でもそう表示されている。
ところが、車内放送では「ハローワーク前」だか「ハローワーク秋田前」だかと言った。中途半端だし、この路線では本荘側でもハローワーク前を通るから、さらにややこしい。
降車ボタンを押して(電子音のチャイムもレシップ製らしく、聞き慣れない音色)、200円を手にして、念のため運賃表示器を見たら、「250円」?!
【2020年6月14日追記】チャイム音だけで「次、停まります」など音声はなし。
手前の茨島三丁目とハローワーク前の間は、そんなに距離がないから、あわてて50円玉を探し出し、支払うことができた。
もし古い車が来ていたら、運賃表示器がないので、事前のGoogleの結果をうのみにして200円しか払わず、「50円足りませんよ!」と言われて恥をかいていた(もしくはそのまま実質的に不正乗車してしまったか)ことだろう。
運賃表示器付きの新車で良かった!
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じゃあGoogleの「日吉神社前からハローワーク秋田前まで200円」は何だったのか。間違いだったのか。
実は冒頭の検索結果の右側には、地図上にルートが表示されていたのだが、それをよく見ていれば気づくはずだった。
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なぜか手前の茨島三丁目で下車して歩く指示。茨島三丁目までなら200円だから間違ってはいない。
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でもなぜそんなことをさせるのか(中央交通新屋線ではそうならない)。
さらに、地図上でハローワーク秋田前の位置が不自然。
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ハローワーク秋田前のバス停の位置が間違っている。
より正確に言えば、昔は2か所のハローワーク前バス停があり、かつて卸町経由新屋線が使っていて、2016年に廃止された側のバス停が存続していることになっている。一方、現役である県道側のハローワーク前のバス停は存在しないことになっている。
さらにもう1点。Googleマップでは、羽後交通のバス停は「茨島」とされているのだが…
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茨島バス停も2か所に分散している。ハローワーク前と同じ位置と、国道13号側と。
Googleマップでは、バス停が2か所あることにはなっているが、両方とも13号線上の同じ場所にあることされているのだ。
したがって、急行本荘線は13号線側に停車するとみなされ、ハローワーク前(も間違っているわけだけど)まで行きたい場合は遠くなるので、茨島三丁目で下りて歩けという指示になったようだ。
ここの場合、同名バス停が分散し、かつバス会社によって名前が違ってと、複雑な状況なのを差し引いても、根本的なバス停の場所を間違っているのはいただけない。それが誤誘導の主因だと思う。
今年3月、Googleではゼンリンとの提携を解消(?)したことで、マップの表示が変わり、正しくない情報が増えたと話題になった。それ以前から、悪意があるのか勘違いなのか、ユーザーの登録によって、空港の滑走路上にファミレスがあるといった不正確な情報もあった。
このバス停の件もそれらの一環なのだろうか。
差し当たって、ハローワーク前と片方の茨島の位置の修正の要望を、Googleにしておいた。そこが直されれば、ある程度は改善されそう。
でも、「こういう経緯があるのですが、ここが間違ってこうなっています」と細かく言葉で説明して訂正を求められる仕組みでないのは歯がゆかった【27日補足・マピオンなど日本の地図サイトでは、入力欄がある】。この点もGoogleはイマイチ。
秋田県内のバス検索に関しては、国際教養大学が関与したそうだけど、そちらへも情報提供したほうがいいのかな…
最後に、上の画像でも示されているように、Googleマップのルート検索では、地図上に走行ルートが表示される。歩いたり車で走行する時は便利で、路線バスのルートも表示されるのだけど…
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上の図の黄緑色の線が、秋田市中心市街地循環バス ぐるるのルート。バス停名では木内前、通町、ねぶり流し館前、大町通り、川反入口(旧交通公社前)の区間。
見て分かる通り、黄緑の線は、木内前から道路を無視し、秋田中央警察署の敷地などを突っ切り、旭川の橋がない所を斜めに飛び越え(西部警察か)…とメチャクチャ。
加筆した赤い細い線が、道路を走る本来の経路。
Googleのバス路線検索においては、ルートは「道路に従う」すなわち「線」ではなく、「隣り合ったバス停の間を直線で結ぶ」という「点」で認識しているようだ。
徒歩や車では、ちゃんと道路の線形を認識できているのだから、それを応用してなんとかできないのだろうか。
このことも、上記のハローワーク前や茨島のような「バス停の位置が間違っているのに、バス路線として成り立ってしまう」ことの一因になろう。
【27日追記・画像追加】Googleで茨島三丁目からむつみ町までを検索し、茨島交差点周辺の検索結果。
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いろいろおかしい。
グレーの線がバスのルートで下から上へ進む。左側が中央交通新屋線、右側が羽後交通本荘線。実際には、この方向・この区間では、両路線とも同じルートで、加筆した赤い線が正当。
ただし、両社でバス停が違う(本荘線は急行らしく1つ飛ばす)のと、上記のハローワーク前と茨島の位置が間違っていることにより、両社ともそれぞれ違う間違った線が描かれている。
羽後交通は、(地図下の枠外の)茨島三丁目から、誤った位置の茨島を経て旭川・太平川合流点を飛び越え、上の枠外のむつみ町へ向かう。
新屋線は、茨島三丁目から、誤ったハローワーク前へ。その次は川元小川町なのだが、下り便が一方通行区間であるため、上下で位置が離れている。ここでは赤で記した上り側を通るべきなのだが、また間違って下り側のバス停を通ってしまって、むつみ町へ向かっている。
さらに青い点線は徒歩ルートなのだが、これは茨島交差点から国道13号を1ブロック東の古川添交差点まで行って(向かいへ横断して)、また茨島交差点へ戻るという、嫌がらせのようなルート。
茨島交差点には横断歩道はなく、横断地下道「バラロード」がある。Googleではバラロードのことを認識しておらず、ここで横断させてはならないと判断し、最寄りの横断歩道がある古川添まで回らせているのだろうか。賢いようでいて抜けているというか…(以上追記)
やはり、現段階ではGoogle一辺倒はよくない。他のサービスの奮闘とGoogleの改善に期待。※Googleマップについての別の記事。
【2020年2月24日追記】2020年2月24日改めて検索してみると、バス停位置の誤りは直っていないが、道路でない部分を一直線に突っ切る線が引かれるのは解消されていて、道路上をたどるようになっていた。
ただ、バス停の位置が間違っているのだから、間違った道路をルートとしていることになり、結局間違っているのは変わりない。
一見しておかしいとは思いづらくなったものの、国道上でUターンしたり、バスが入れない小さい道へ曲がったり、一方通行を逆走したりと、相変わらずやりたい放題。【2020年6月14日時点でも変わらず。】