秋田市を流れる旭川にある、保戸野川反橋付近の水位観測所に関する続き。今回はごちゃごちゃした話であることを、あらかじめお知らせしておきます。
川の水位は、ほぼリアルタイムでインターネットで誰でも知ることができる。考えてみれば便利な時代になったものだ。
地域によって異なるかもしれないが、水位のデータを公開する公式なサイトは、2種類存在する。(別にマスコミなどが河川管理者からデータ提供を受けて公開しているものもある)
「各河川管理者がそれぞれの管理河川について公開するサイト」と「国土交通省が全国の情報を集約したサイト」である。
前者は、一級河川の本流(直轄区間)については国土交通省各河川国道事務所等(秋田では「あきた道 川情報STATION」)、委任している支流については各都道府県が運営する。
後者は、「国土交通省 川の防災情報(http://www.river.go.jp/kawabou/ipTopGaikyo.do)」。
2つのサイトのデータそのものは、もちろん同じだけど、ページデザイン(同じ画面でライブカメラ映像が見られるなど)や操作方法は異なる。
とりあえず水量を見たいのなら、国土交通省 川の防災情報のほうがいいかもしれない。川が直轄か委任かに関わらず、1つのサイトで済むし、観測所の検索がわりと使いやすい。
国土交通省 川の防災情報で、「秋田県」にある「旭川」の観測所を検索してみると…(県を指定しないと、後楽園の前を流れる岡山県の旭川も表示される。徳島にも小さい旭川があるみたいだ。)
川の防災情報サイトより抜粋
「秋田建設」という観測所は、川の流域ではなく、県庁の敷地内で雨量を測定しているということらしい。
「種別」すなわち測定内容が「水位・流量」となっているのは、3か所。
旭川の規模に対して多いんだか少ないんだかよく分からないけれど、太平川は「太平本町」と「牛島」の2か所。途中で合流する川がなければ、このくらいで妥当なんだろうか。
ただ、その3つの観測所をよく見ると…
上流の仁別の「務沢(むさわ)」はいいとして、残り2つはどちらも「中島」。
1つは、千秋中島町にある「中島」、もう1つは保戸野通町の「中島(指定)」。
どういうこと?
保戸野通町の「中島(指定)」のほうが、前回紹介した保戸野川反橋下流側右岸の「中島水位観測所」「秋田県秋田土木事務所」と表示が出ている建物。
データを表示させてみると、他の観測所と同様に、避難判断水位(ここでは3.42メートル)、はん濫危険水位(同3.60メートル)なども示されている。
種別欄では「流量」とあったのは、前回のお皿で測定した流速のことだろうか。だけどデータは示されていない。(他の観測所も同様)
問題はもう1つの「中島」観測所。
所在地からすれば、保戸野川反橋より上流。川伝いの距離にして約950メートル、間に2つの橋(鷹匠橋、保戸野新橋)を挟んだ所。奥羽本線の橋の下流側の秋田北高校と秋田工業高校の間に架かる「新中島橋」の下流側左岸に当たる。
そこには、秋田市上下水道局のポンプ場(秋田市下水道中島ポンプ場)があるけれど、県が川の水位を測定するような施設はあったかな? 現地へ。
下流側右岸から。対岸が千秋中島町。奥の丘は千秋公園の北端
なるほど。橋のすぐそばの道沿いに、フェンスで囲われ、アンテナが立った白い小さな建物(構造物?)があった。保戸野川反橋の水位観測所を小さくしたような感じ。それのこと? 対岸へ。
やはり同じような看板が設置されていた。
【9月2日追記】そういえば、ここにこういうモノがあったのは、以前から意識にあったけれど、目的や管理者については考えたことがなかった。あるいは下水道ポンプ場関連のものだと、無意識に認識していたのかもしれない。
「秋田地域振興局 旭川ダム管理事務所 中島警報局」とある
こちらは組織再編にしたがって地域振興局に替わっているが、素人には地域振興局と秋田県庁が結びつかない。「秋田県」を入れてほしい。
つまり、ダムの放水時に警報を出すための施設なんだろうか?
そういえば、昔は川沿いのところどころに、放流時に鳴動する表示灯とサイレンが設置されていたものだが、今は撤去されたようだ。じゃあ、ここが鳴るの? そんなふうにも見えないけど。(ダム放流時の警報について岩手県の例)
ちなみに、各地図サイトでは、この場所に名称がちゃんと記載されている。川反橋の観測所は載っていないのに。
っていうか、これがダムの警報局なるものであることは分かったのはいいけど、水位測定との関係は? 「水位観測所」との表示はひとこともない。
新中島橋の上から見る。後方の茶色い建物は下水ポンプ場
草に埋もれて分かりにくいけれど、警報局直下の川の中に、コンクリート製の升状の物体が設置されている。もしかしたらこれが水位測定器だろうか。
ネットで公開されている、こちらの「中島」の水位には、はん濫危険水位などの表示がない。
ということは、水害の判断基準にはならない観測所なんでしょう。したがって、保戸野川反橋の「中島(指定)」観測所のほうが、重要度は高そう。
その判断基準のことを「指定河川洪水予報」と呼ぶ(「指定された河川の洪水予報」という意味)そうなので、それ用の観測所ということで「(指定)」が付いているのか。
2つの中島観測所がある区間は、江戸時代に付け替え工事が行われた人工の川(以前はもっと東の千秋公園のふもとを流れていた)。だから、ほぼ直線だし、途中で流入する水路はない。
2つの中島観測所の水位データを比較してみると、増減の変遷は当然ながら連動している。
数値としては、新中島橋の「中島」のほうがいつも20センチほど高い傾向。右岸と左岸の違いや川幅などの影響か。
それにしても、紛らわしい。秋田県庁内部では取り違えないのだろうか。どう呼び分けているんだろう。
何よりも、保戸野川反橋付近を指して「中島」と呼ぶのは、大いに違和感がある。改称してほしい。「保戸野川反橋観測所」だと長そう、「川反観測所」だと飲み屋を連想しそう、無難に「保戸野観測所」「矢留町観測所(対岸の地名から)」とか。あと、組織として消滅した「秋田土木事務所」の看板を替えないと。
新中島橋のほうは地名はいいとして、こちらの「水位観測所」は現地に表示がなく、ネット上だけの呼称になっている。せめて「中島警報局水位観測所」などにすればいいのでは?
それ以前に、新中島橋のほうはダム警報局がメインの用途で、水位観測所としては本格的でなさそう。水位観測の機能を廃止しても、問題がないのではないだろうか。
旭川は「秋田市記念市民歌」に「水きよき旭の流れ」と歌われる、秋田市を代表する川。
秋田市中心部では、護岸で固められて水際には近寄れないけれど、それでも流域の住民には身近な存在。「川」といえば旭川のことを指すし、旭川の水量を見て雪融け・晴天続き・そして大雨といった気象の変化を実感し、話題とする。
一方で、いざという時に旭川がどうなるかは、あまり知らない。【3日追記】いちおうハザードマップは配布されている。
8月中旬の増水ピーク時の保戸野川反橋上流。この時の「中島(指定)」観測所では1.4メートル
台風10号が接近し、岩手や北海道を中心に甚大な被害が生じている。幸いにも旭川を含めて秋田市では大きな被害がなかったが、今後被害を受けない保証はない。それなのに、水位などのデータを知る方法も、岸にある施設の役割も、知らない住民が多いはず。そんなことでも分かりやすく教えてくれれば、住民の川への関心は高まるのではないだろうか。
【2018年9月28日補足】旭川ダムの運用が変わって、現在は、放流しても市街地では影響がなくなったため、警報装置を撤去しているとのこと。上流側には今もあるらしい。でもそのことは住民には知らせてくれたのだろうか。
川の水位は、ほぼリアルタイムでインターネットで誰でも知ることができる。考えてみれば便利な時代になったものだ。
地域によって異なるかもしれないが、水位のデータを公開する公式なサイトは、2種類存在する。(別にマスコミなどが河川管理者からデータ提供を受けて公開しているものもある)
「各河川管理者がそれぞれの管理河川について公開するサイト」と「国土交通省が全国の情報を集約したサイト」である。
前者は、一級河川の本流(直轄区間)については国土交通省各河川国道事務所等(秋田では「あきた道 川情報STATION」)、委任している支流については各都道府県が運営する。
後者は、「国土交通省 川の防災情報(http://www.river.go.jp/kawabou/ipTopGaikyo.do)」。
2つのサイトのデータそのものは、もちろん同じだけど、ページデザイン(同じ画面でライブカメラ映像が見られるなど)や操作方法は異なる。
とりあえず水量を見たいのなら、国土交通省 川の防災情報のほうがいいかもしれない。川が直轄か委任かに関わらず、1つのサイトで済むし、観測所の検索がわりと使いやすい。
国土交通省 川の防災情報で、「秋田県」にある「旭川」の観測所を検索してみると…(県を指定しないと、後楽園の前を流れる岡山県の旭川も表示される。徳島にも小さい旭川があるみたいだ。)
川の防災情報サイトより抜粋
「秋田建設」という観測所は、川の流域ではなく、県庁の敷地内で雨量を測定しているということらしい。
「種別」すなわち測定内容が「水位・流量」となっているのは、3か所。
旭川の規模に対して多いんだか少ないんだかよく分からないけれど、太平川は「太平本町」と「牛島」の2か所。途中で合流する川がなければ、このくらいで妥当なんだろうか。
ただ、その3つの観測所をよく見ると…
上流の仁別の「務沢(むさわ)」はいいとして、残り2つはどちらも「中島」。
1つは、千秋中島町にある「中島」、もう1つは保戸野通町の「中島(指定)」。
どういうこと?
保戸野通町の「中島(指定)」のほうが、前回紹介した保戸野川反橋下流側右岸の「中島水位観測所」「秋田県秋田土木事務所」と表示が出ている建物。
データを表示させてみると、他の観測所と同様に、避難判断水位(ここでは3.42メートル)、はん濫危険水位(同3.60メートル)なども示されている。
種別欄では「流量」とあったのは、前回のお皿で測定した流速のことだろうか。だけどデータは示されていない。(他の観測所も同様)
問題はもう1つの「中島」観測所。
所在地からすれば、保戸野川反橋より上流。川伝いの距離にして約950メートル、間に2つの橋(鷹匠橋、保戸野新橋)を挟んだ所。奥羽本線の橋の下流側の秋田北高校と秋田工業高校の間に架かる「新中島橋」の下流側左岸に当たる。
そこには、秋田市上下水道局のポンプ場(秋田市下水道中島ポンプ場)があるけれど、県が川の水位を測定するような施設はあったかな? 現地へ。
下流側右岸から。対岸が千秋中島町。奥の丘は千秋公園の北端
なるほど。橋のすぐそばの道沿いに、フェンスで囲われ、アンテナが立った白い小さな建物(構造物?)があった。保戸野川反橋の水位観測所を小さくしたような感じ。それのこと? 対岸へ。
やはり同じような看板が設置されていた。
【9月2日追記】そういえば、ここにこういうモノがあったのは、以前から意識にあったけれど、目的や管理者については考えたことがなかった。あるいは下水道ポンプ場関連のものだと、無意識に認識していたのかもしれない。
「秋田地域振興局 旭川ダム管理事務所 中島警報局」とある
こちらは組織再編にしたがって地域振興局に替わっているが、素人には地域振興局と秋田県庁が結びつかない。「秋田県」を入れてほしい。
つまり、ダムの放水時に警報を出すための施設なんだろうか?
そういえば、昔は川沿いのところどころに、放流時に鳴動する表示灯とサイレンが設置されていたものだが、今は撤去されたようだ。じゃあ、ここが鳴るの? そんなふうにも見えないけど。(ダム放流時の警報について岩手県の例)
ちなみに、各地図サイトでは、この場所に名称がちゃんと記載されている。川反橋の観測所は載っていないのに。
っていうか、これがダムの警報局なるものであることは分かったのはいいけど、水位測定との関係は? 「水位観測所」との表示はひとこともない。
新中島橋の上から見る。後方の茶色い建物は下水ポンプ場
草に埋もれて分かりにくいけれど、警報局直下の川の中に、コンクリート製の升状の物体が設置されている。もしかしたらこれが水位測定器だろうか。
ネットで公開されている、こちらの「中島」の水位には、はん濫危険水位などの表示がない。
ということは、水害の判断基準にはならない観測所なんでしょう。したがって、保戸野川反橋の「中島(指定)」観測所のほうが、重要度は高そう。
その判断基準のことを「指定河川洪水予報」と呼ぶ(「指定された河川の洪水予報」という意味)そうなので、それ用の観測所ということで「(指定)」が付いているのか。
2つの中島観測所がある区間は、江戸時代に付け替え工事が行われた人工の川(以前はもっと東の千秋公園のふもとを流れていた)。だから、ほぼ直線だし、途中で流入する水路はない。
2つの中島観測所の水位データを比較してみると、増減の変遷は当然ながら連動している。
数値としては、新中島橋の「中島」のほうがいつも20センチほど高い傾向。右岸と左岸の違いや川幅などの影響か。
それにしても、紛らわしい。秋田県庁内部では取り違えないのだろうか。どう呼び分けているんだろう。
何よりも、保戸野川反橋付近を指して「中島」と呼ぶのは、大いに違和感がある。改称してほしい。「保戸野川反橋観測所」だと長そう、「川反観測所」だと飲み屋を連想しそう、無難に「保戸野観測所」「矢留町観測所(対岸の地名から)」とか。あと、組織として消滅した「秋田土木事務所」の看板を替えないと。
新中島橋のほうは地名はいいとして、こちらの「水位観測所」は現地に表示がなく、ネット上だけの呼称になっている。せめて「中島警報局水位観測所」などにすればいいのでは?
それ以前に、新中島橋のほうはダム警報局がメインの用途で、水位観測所としては本格的でなさそう。水位観測の機能を廃止しても、問題がないのではないだろうか。
旭川は「秋田市記念市民歌」に「水きよき旭の流れ」と歌われる、秋田市を代表する川。
秋田市中心部では、護岸で固められて水際には近寄れないけれど、それでも流域の住民には身近な存在。「川」といえば旭川のことを指すし、旭川の水量を見て雪融け・晴天続き・そして大雨といった気象の変化を実感し、話題とする。
一方で、いざという時に旭川がどうなるかは、あまり知らない。【3日追記】いちおうハザードマップは配布されている。
8月中旬の増水ピーク時の保戸野川反橋上流。この時の「中島(指定)」観測所では1.4メートル
台風10号が接近し、岩手や北海道を中心に甚大な被害が生じている。幸いにも旭川を含めて秋田市では大きな被害がなかったが、今後被害を受けない保証はない。それなのに、水位などのデータを知る方法も、岸にある施設の役割も、知らない住民が多いはず。そんなことでも分かりやすく教えてくれれば、住民の川への関心は高まるのではないだろうか。
【2018年9月28日補足】旭川ダムの運用が変わって、現在は、放流しても市街地では影響がなくなったため、警報装置を撤去しているとのこと。上流側には今もあるらしい。でもそのことは住民には知らせてくれたのだろうか。