今や日本人には当たり前の存在のコンビニエンスストア。身近になったのはここ20年くらいのことではないだろうか。
秋田市内では、現在はローソンやファミリーマートが幅を利かせているが、秋田進出はここ十数年のことで、これらは後発組。
僕の記憶でいちばん古いコンビニは、1985年頃にできた「ヤマザキデイリーストアー」だった。(今はその場所に店舗はない)
まだ「コンビニエンスストア」という言葉すら知らなかった(大人でも知らなかったんじゃないか)し、24時間営業ではなかったはずだが、いろんな商品があり、ケースで保温されたあんまんや肉まん、コピー機、バーコード(POS)のレジが珍しかった。
赤地に黄色で「D」がデザインされた看板とともに、コンビニの存在を知らしめたのが、ヤマザキデイリーだった。
その後、平成に入り他のコンビニが増えてくると、ヤマザキデイリーはどちらかといえば(僕の認識では)マイナーな存在になってしまった。
しかも、店舗数が少なく、品揃えが悪い印象があったり、現金以外の決済方法への対応が遅れているような印象があったりして、正直言って敬遠していた。
しかし、知らぬ間に状況が変わっている点が多々あり、僕が誤解していた点もあった。
まず、とても基本的なことを知らなかったのだが、現在は「ヤマザキデイリーストアー」でなく、1999年に「
デイリーヤマザキ」という名に変わったのだそうだ(一部は「ヤマザキデイリーストアー」のままの店舗も残存)。
そしてデイリーヤマザキはその名の通り、山崎製パン(の子会社の「株式会社デイリーヤマザキ」)が経営している。全国39都府県に店舗があるようだ。
当ブログ「ランチパック」カテゴリーをご覧いただいている方は察しが付くと思うが、ここでもやはり秋田と青森だけは事情が異なる。
山崎製パンではなく、
秋田県内の店舗は「たけや製パン」、青森県内の店舗は「工藤パン」のそれぞれ「デイリー事業部」という部門が経営している。ヤマザキと一種のフランチャイズ契約を結んだ形らしく、たけやとは1982年、工藤パンとは1991年に契約を締結した。現在は秋田に37店舗、青森に23店舗ある。
ちなみに、よく似た看板の「ヤマザキショップ(Yショップ)」というのがある。これもヤマザキ傘下だが、コンビニとは多少違うようだ。うまく説明できないが、コンビニほど本部の意向が反映されず、統一感がそれほどないようだ。
僕がデイリーの品揃えが悪いと感じていたのは、これと混同していた点もあったようだ。
ヤマザキの公式サイトの店舗検索(秋田・青森分も検索可)によれば、秋田市内には10店舗のデイリーヤマザキがある。
浜田地区の国道7号線と旧道が分岐する羽越本線桂根駅そばの「秋田南バイパス店」、県庁第二庁舎向かいの「山王二丁目店」、秋田大学と秋田高校の間の「秋高通店」、そしてたけや製パン本社のお膝元「秋田工業団地店」など。
数は少ないが、幹線道路に面していたり、他のコンビニが出店しないような場所にぽつんとあるなど「そういえばあそこにあったな」と印象に残る店舗がある。
また、ごく一部だが、店内でパンを焼いていたり惣菜などを作ったりしている店、大手が対応する前からATMを設置していた店もある。
そういえば、7号線沿いの下浜駅前にもデイリーがあったが、公式サイトの検索結果にないところを見ると、あれはYショップなのだろう。
と思って、NTTの「iタウンページ」で検索してみると、「ヤマザキデイリーストアー下浜海岸店」というのがある。デイリーなのかYショップなのか、どっちなのか分からない。
一昨年夏、下浜で撮影した写真に、この店が写っていた。拡大してみると、
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旧称の「ヤマザキデイリーストアー」だ(看板のデザイン自体、現在のと少し違う)
少なくとも、当時はデイリーだったことになる。現在は状況が変わったのだろうか。
また、Wikipediaのデイリーヤマザキの項目の「特徴のある店舗」の病院内に出店している例として、秋田市内の3つの総合病院に店舗があることになっている。
「秋田市立病院店」「秋田組合総合病院店」「日赤病院店(病院名は秋田赤十字病院)」だそうだが、ヤマザキの公式サイトにも、各病院の公式サイトにも、iタウンページにも、そうしたデイリーヤマザキは見当たらない。(売店は存在することになっている)
ちなみに青森県内を調べると、もっとユニークな店舗があった。
それは「青森駐屯地店」と「弘前駐屯地店」。自衛隊の駐屯地にある店らしい。地図で見ると、駐屯地の敷地内に印があるので、一般人が自由に行かれる店ではなさそう。しかも弘前では酒を売っていて、青森では酒・タバコは扱わないが、店内でパンを焼いている。
秋田にも自衛隊駐屯地があるからデイリーがあってもよさそうだが、これは工藤パンとたけやの方針の違いなんだろう。(上記の病院に出店しているのが事実だとすれば、これはたけやの方針なのだろう)
前置きが長くなってしまいましたが、ここからが本題。
1月12日にデイリーヤマザキとJR東日本から「
岩手、山形、福島、新潟、長野各県のデイリーヤマザキにSuicaを導入します~あわせて本日よりチャージサービスを開始~」というプレスリリースがあった。
これにより、青森と秋田を除くJR東日本エリア内のデイリーヤマザキで、Suicaでの決済とチャージ(入金)が可能になるようだ。
しかし、上記の通り、秋田・青森は経営者が違うので、秋田のデイリーでSuicaを使えるのは、当分望めそうもないと思っていた。
ところで、JR秋田駅西口の南側、明田地下道までの市道と線路の間は「中通七丁目」という住所で、ほぼ全域が旧国鉄の所有地だった。
現在はパチンコ屋やマンションもできたが、JR東日本秋田支社や関連会社の事務所などが多く並ぶ「鉄道の町」。
その並びに「東日本旅客鉄道 秋田地区総合事務所」という建物があり、数年前まで1階にその名も「秋田ストア」という店があった。一度も入ったことはなかったが、JRの購買部みたいな店だったのではないだろうか。「一般の方も利用できます」とか表示が出ていた。
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現在の秋田地区総合事務所
その店はなくなり、跡地が「
デイリーヤマザキ中通七丁目店」になった。
JR東日本は「NEWDAYS」というコンビニを系列に持ち、秋田駅構内にもある。駅の外とはいえ、自社の敷地に他のコンビニを出店させるとは、どういうつもりなんだろう。ちなみに、新潟支社管内では、駅の中にデイリーヤマザキがあるところもあるそうなので、ヤマザキとは仲が悪くはないということだろう。
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秋田地区総合事務所とデイリーヤマザキ
店の前の駐車場にはいつも車が停まっている印象がある。24時間営業だし、旅行客が来る場所でもないので、駅利用者よりも車で前を通る人を狙った店なのだろう。
このデイリーヤマザキは、たけやがやってるんだから当然Suicaは使えないと思ったら、
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「Suica使えます」という掲示が!(写真左側)
この店ではSuicaが使えるようだ。
店内のレジにはEdyだったかの他の電子マネーも使えるような表示があったが、店の外に向けた掲示はSuicaだけだった。
秋田の他のデイリーの店舗は未確認だが、大家さんであるJRへの配慮で特例として中通七丁目店だけ対応させたのだろうか。たけやさんも気が利きますな。
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ちなみに隣は「JRパルビル」という。JRの関連会社が入居している
上記の通り、敬遠していたデイリーヤマザキだったが、入ってみた。秋田のデイリーに入るのって、たぶん10年ぶり以上?
至って普通のコンビニで、印象はおおむね他のチェーンと変わらない。
品揃えがよくなくて、狭くて、店の人の愛想が悪いような、昔のヤマザキデイリーのイメージが覆された。
掲示通り、Suica決済ができた。
ローソンのと同型と思われる、カードを置くタイプのリーダー。レジの画面に一瞬選択ボタンらしきものが表示されたが、すぐに消えて客側でタッチする必要はなかった。
この店に置いているパンは、当然「ヤマザキ(たけやでのライセンス製造分)」と「たけや」ブランドオンリー(と後述のオリジナル製品)。
間違ってもフジパンやシライシパンの製品があるわけないか…(ブルボンのバウムクーヘンなど、お菓子は他社製品が多かった)
【25日追記】ローソンなど、一般コンビニにはなぜか置いていない「たけやフレッシュランチ」も、この店には揃っていた。たけや製品だからあるのは当然だけど、これもデイリーヤマザキの魅力と言えそう。
デイリーヤマザキのオリジナルの菓子パン・惣菜パンが「
グルメモア」シリーズ。
パン屋さんがやってるコンビニのオリジナルパンだけに、期待できそう。
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「グルメモア」シリーズの一例
透明な袋に入って10種類くらい並んでいたが、どれも大きくて安めの価格。(感想については後日、別記事にて)
これらは、当然、たけや製パンが製造したと思いきや、
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びっくり!
なんと青森の
工藤パン製!!
確認したグルメモア商品すべてが、工藤パンで製造されていた。
工藤パンの自社開発商品ではないとはいえ、工藤パンが製造した製品が秋田県内で売られているのは初めて見た。
(青森県内の「いとく」でたけやの饅頭やバナナボートが発売されているそうなので、逆のパターンは既にある)
でも、なぜたけやが自分で製造しないんだろう。
想像だが、秋田県内・青森県内のデイリーヤマザキ各30店舗程度のためだけに、それぞれ製造していては効率が悪いから、両県合わせて60店舗分をまとめて工藤パンで製造することにしたのだろう。青森市から秋田まで運ぶのが大変な気もするけど。
たけやと工藤パンの間には、こういうつながりがあったんだ。
たけやでは(ヤマザキや工藤パンも同様だけど)、ローソンの「ウチカフェスイーツ」など、他のコンビニのオリジナル製品を委託されて製造(OEMってやつですな)している。その一方で、肝心のデイリーヤマザキのオリジナル製品の製造を、仲間とはいえ他社に委託しているのが、複雑でおもしろい。