広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

協働大町ビルの文字2

2024-08-07 23:37:07 | 文字・書体
竿燈まつり期間中の秋田市大町三丁目の「協働大町ビル(旧・協働社大町ビル)」。
竿燈会場近くだけに人通りが多い

玄関
提灯は夏の間下げられているようだが【10日訂正・10日時点で提灯もなくなっていた】、竿燈期間中限定の「お食事処」「祝竿燈まつり」の看板が出ていた。
手書きで、味のある文字。

2021年にこのビルの駐車場の表示を取り上げた。相撲文字のような書体。1972年のビル竣工時からあるのかなと推測していた。
(再掲)
駐車場表示は現時点でもそのままだが、2022年10月~2024年5月の間に、高さ制限の注意書きが活字で新設されている。


竿燈の看板は、(少なくとも1957年から)1992年までの「竿灯」ではなく、「竿燈」表記なので、1993年以降に書かれたと考えられる。
楷書に含まれる書体だと思うが、タッチが独特。相撲文字と通じる点もあるのではないか。同じ人の揮毫なんだろうか… 昔は、こんな手書き看板はたまにあったと思う。

なお、ドア左の掲示枠【10日追記・実は液晶ディスプレイ?】の中には、縦書きで「祝竿燈 協働大町ビル」と書かれていたが、それはまた違うタッチで、普通の楷書に近い。
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ひらりオープニング

2023-04-27 20:11:32 | 文字・書体
秋田市が少しだけ舞台になった、1992年のNHK連続テレビ小説「ひらり」。
2023年に再放送中で、秋田編を見た勢いで、続けて視聴している(4月からは14時台・毎日1話放送に変更)。

初回放送当時は、土曜日と冬休み中にちらりと見るくらいで熱心に見ていなかったので、登場人物は知っていても、ストーリーは初めて見るも同然。スタジオセットの収録部分が多いので、当時の街並みなどが見られるわけではないが、バブル景気と昭和両方の余韻を残す、当時の雰囲気はなんとなく感じる。

以前も触れたように、そのオープニングは、当時の連続テレビ小説としては画期的だったと、今改めて感じる。
テーマ曲が歌詞付き、空撮映像に本編のダイジェストを織り交ぜた映像、横書きで控えめに表示されるクレジットなど、ドラマの中身以上に“トレンディー”に見える。

ただし、タイトル「ひらり」だけは手書きと思われる毛筆の縦書き。その前の「連続テレビ小説」は活字(後述)の横書き。
クレジットは画面右下
クレジットは、この当時ではまだ手書き毛筆の作品もあったが、本作はすべて活字。それも、明朝体、角/丸ゴシック体ならまだしも、教科書体なのが珍しい。異例かも。
教科書体がひらりのイメージに合うのかと考えれば、合っていないような。相撲が題材のドラマだからといって、江戸文字(相撲文字=関連記事)にすると、もっとおかしくなるけれど。
「ドリームズ・カム・トゥルー」は左右で違う書体
「作」「音楽」「藪沢ひらり」といった小さい文字は、丸ゴシック体。ナールではない、硬めの丸ゴシック。
写研の石井丸ゴシックとも、モリサワの丸ゴシック(かつてのバスの行き先表示に使われていた書体など)とも、どこか違う。
(下の各画像参照)「ら」の1画目が左に戻る、「り」がつながっているのは、石井丸ゴの特徴だが、「ら」2画目の縦線は石井丸ゴほど左に膨らんでいないし、「き」はモリサワっぽい気もする。何でしょう?

教科書体のほう。
現在、モリサワからデジタル化されて発売されている(ユニバーサルデザインではない、従来からの)教科書体は「教科書ICA」シリーズ。写真植字機時代から存在し、どうもイワタの教科書体と関連があるようで、国語の光村図書の教科書の文字にも似ている。
ひらりの教科書体は、それとは異なる。

全体に柔らかい線、「石」が平べったい、「か」3画目の位置と向き、「り」が一筆書きが特徴。
写研製「石井太教科書 BT-A」と思われる。少し細い石井中太教科書 DBTというのも存在するが、1996年リリースだそうなので、違う。

昭和末の教科書や教材類では、出版社によっては石井教科書体もよく使われていた。かつての官製はがきの「郵便はがき」の文字も。だから、見覚えがあって、親しみがある文字ではある。

教科書体では、最近の一部格安フォントは別として、数字(やアルファベット)も、算数の教科書で使うような専用の形をしている。石井教科書体もそのはずだが、ひらりでは、
明朝体のようなセリフ体

写研書体がデジタル化されつつあるが、石井教科書体がそうなることはあるだろうか。石井教科書体の最後の晴れ舞台がひらりだったかもしれない。
文字については以上。



インパクトのある江戸っ子親子を演じた、花沢徳衛、石倉三郎という俳優を知ったのが、ひらりだった。
埼玉県の甲子園の常連校「花咲徳栄」の名を見ると、花沢さんを思い出す。

こんな出演者も。
「ピアノ奏者 丸山和範」
ひらりの母が、綿引勝彦と逢瀬を重ねる「バー ソワレ」のピアニストとして、時たま出演。直近では79回、90回。今のところ、演奏する後ろ姿や指先ばかりで、セリフはなく顔も見ていない。

丸山和範氏は作曲家・編曲家。
ちょうど1990年代半ば辺りから、テレビ番組などの音楽を多数担当。「古畑任三郎」のオーケストレーション(編曲)、「NHKニュースおはよう日本(1997~2008年)」テーマ曲作曲、連続テレビ小説「ちゅらさん」の音楽など。


最後に、主題歌「晴れたらいいね」について。
曲は「題名のない音楽会」で黛敏郎氏に批評されたのは、以前の記事の通り。
歌詞のほうで、当時から気になっていた2点。クレジットでは「作詩」表記だから、“歌詩”なのかな?

「サザエさん」同様、本編では表示されない歌詞が、文字放送の字幕では表示される。
その中から、「こくわ」。
キウイの仲間で日本に自生する、標準和名「サルナシ」のこと。僕はこの歌で知った。
「‘こくわ’の実」とシングルクォーテーション(字幕では左右で全角半角が違うようだけど)で囲ってあるのは、元々の詩に忠実な表記のはず。

もうひとつ。
「かなり たよれるナビゲーターになるよ」
「~ たよれるナビに ~」と歌われる部分。
これも詩の表記そのままらしい。1992年末の紅白歌合戦で歌われた(「決戦は金曜日」とのメドレー)時も、字幕はそう表記された。
年明けにクラスの女子生徒が、字幕を間違えていたとNHKに対して憤慨していたが、そうではなかったようだ。

21世紀では、「ナビゲーター/ナビゲーション」とその略「ナビ」の意味は誰もが知っている。
しかし、カーナビゲーションシステムも普及していなかった当時では、「ナビ」の語は通じなかったかもしれない。
だから、説明の意味で、詩はフル表記にしたのかもしれない。だとすれば、せめて、フリガナやカッコで「ナビ」と歌うことを伝える方法はあっただろう。
もしかしたら、「ナビ」という略語が、一般向けに広く使われた最初が、「晴れたらいいね」だったのかも。

続きはこちら
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クレしん誤植【修正済み】

2023-04-23 23:03:19 | 文字・書体
2023年4月22日放送のテレビ朝日「クレヨンしんちゃん」第1178回(らしい)。
1・2話目は連続する「父ちゃんが坊主頭だゾ」の2016年の再アフレコ版。
3話目が新作の、
TVerより
「ひなわりなんてキライだゾ」

「ひなわり」って何?
しんのすけの妹は「ひまわり」。
しんのすけは、いろいろ言い間違い(?)をするが、妹の名を間違うことはない。

そもそも、音声のサブタイトルコールでは「ひまわりなんてキライだゾ」と言っているし、TVerの画面下の文字、番組の公式サイトの表記とも、この話のサブタイトルは「ひまわり~」としている。
テレビ朝日公式サイト おはなし一覧より
作中にも、「ひなわり」という言葉は出てこなかった。
ということで、サブタイトル画面の間違いなのだろう。
この画面の文字は、パソコンでは出力できない、写研製の写真植字機専用書体「ファニー」を使っている。だから、まさに“誤植”。

現時点では、公式サイトなどでの訂正や説明はない。できあがったものを部分修正するのは難しいとは思うが、「TVer」と「テレ朝動画」の見逃し配信でも「ひなわり」のまま。金曜日のBS朝日での遅れ放送はどうなるか。【末尾の追記の通り、週明けには修正された。BSでも修正して放送。】


うっかり「ま」を「な」と入力してしまい、修正される機会を逃して、放送されてしまったということになろう。
写植文字なので、キーボードで入力してそのまま画面になるのではなく、間に何段階か作業が増えているはずで、その分、文字を目にする人は多いと思われるが、みんな見逃してしまったのか。
ひところは、アニメ業界はギリギリのスケジュールで製作していたとか、海外で製作しているとか聞いたが、今はどうなのか。

いずれにしても、CM明け最初に大きく表示される文字、しかもメインキャラクターの名前を間違えて放送してしまうとは、恥ずかしい。「放送事故」に含めてもいいかもしれない。
※以前から繰り返すように、直接間違えた当人よりも、それを発見できないでしまったチェックする人たち=組織全体に、責任がある。
シンエイ動画さん(でいいのかな)、しっかりしてください。

【24日追記&画像追加・修正された】24日夕方にTVer、テレ朝動画を確認すると、どちらも「ひまわり」にしれっと修正されていた。
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みんなのうた字幕2

2023-02-05 23:18:32 | 文字・書体
みんなのうたと歌詞の字幕について。前回の続き
※以下、過去の放送の書体については、録画映像のほか、番組公式ホームページ掲載のキャプチャ画像から判断。曲や時期によっては、字幕がない画像がアップされていて、全貌は不明。

終わってしまった2022年12月・2023年1月の再放送曲から。
「バナナ村に雨がふる」。1987年8月・9月。これも久しぶりに聞いたが、記憶通り。
シチュエーションは「オランガタン」にちょっと似ているが、2者の敵対はないし、曲はポップで明るい。これがトラウマになる子はいないだろう。
この作詞が前回「ポケットの中で」の銀色夏生。ポケットの中でとは打って変わって明快。作曲・乾裕樹、歌・EPO。
南家こうじのアニメーションも、詞に合わせてポップで楽しいが、詞に合わせて色数が限定されているのが特徴。
字幕。

これも当時標準のモリサワ「テレビ太ゴシック体BT1」。

なのだけど、
「片手(かたて)」
「男(おとこ)」
「女(おんな)」
ふりがな(ルビ)が手書き!
昔のみんなのうた(に限らずテレビ全般)では、ルビ以外の本文でも、活字の中に部分的に手書き文字で混ざることがたまにあった。
今のデジタル製作と異なり、後で間違いに気付いても、工程上、作り直しが間に合わず、手で修正したのだろう。※2020年代の修正の事例(メゲメゲルンバ)

バナナ村では、ルビの指定もしくは作成時の入力を忘れてしまって、仕方なく手で書き加えたのか。
当時は、NHKでも民放でも、手書きテロップは珍しくなく(例えば「たんけんぼくのまち」など)、それを手掛けるスタッフ(美術スタッフということか?)がいたようだ。各人の個性がある文字ではあるが、それなりに上手い文字。
だけど、このルビは、なんか下手な字。専門スタッフも手配できず、AD(?)か誰かが書いたのだったりして…

バナナ村でルビが振られるのは、片手、男、女のみ。ほかの漢字は、村雨花空口大が出てくるが、ルビなし。
小学校で習う学年は、「片」が6年生で、ほかは1年生。すべての漢字にルビを付けるべきだったのでは?
なお、タイトルに含まれる「村」と「雨」は、当時の曲が始まる前のタイトル画面でルビが振られていて、作中では振らなかった可能性はある。今回の再放送のCGタイトルにはルビなし。

昭和末期のみんなのうたの歌詞のルビ振り基準はどうかと、他の曲を少し見てみたが、明確なルールはなさそう。曲の対象年齢を意識している感じは多少する。
同じ漢字が複数回出てくる曲では、初出時のみルビ。
例外は1984年「メトロポリタン美術館」の「美術館」の「ミュージアム」。これは当て字だからか、毎回ルビ付き(カタカナのルビはレア)。そのほかの漢字は「大理石」も「靴下」も一切ルビなし。【13日追記・ほかにも例外はあるようで、1980年「展覧会で逢った女の子」では、3番までで2度ずつ・計6度出る「展覧会」の、各フレーズの初回(=3度)と、各フレーズ1度ずつ出る「逢った」すべてにルビが振られる。】


「神父さんのパイプオルガン」。1987年4月・5月。
「ロバちょっとすねた」に続く、アグネス チャン(この曲では名黒なし)・東京放送児童合唱団の歌。これも楽しい歌で、「ボワボワチュッチュー」のフレーズがインパクトあり。
これも36年ぶりに聞いた。「ボワボワチュッチュー」以外の部分は、あまり記憶になかったけれど、まあ想定内。「ボワボワブーブー」のフレーズもあったのは忘れていた。
僕はこの歌で「パイプオルガン」という楽器を知ったかもしれない。アトリオン音楽ホールはまだなかったので。尾崎真吾のアニメーションで描かれるパイプオルガンは、パイプが7本しかなく、ウツボカズラのようにふにゃっとした形。こういうパイプオルガンもあるのだろうか。

作曲は、ポケットの中での吉川洋一郎(「吉」は上の横棒が短いのが正当)。
作詞は小黒恵子。童謡作詞家で、「ロバちょっとすねた」ほか、みんなのうたも多数手掛ける。動物が出てくる歌が多い。12月・1月にはもう1曲放送された(後日また)。

字幕。

これは、モリサワBT1ではなく、写研「石井ゴシック(石井太ゴシック?)」。モリサワによってデジタル化されようとしている。
ポケット~とバナナ村~の間の時期の製作だが、書体どころかそのメーカーが異なるのだ。写研とモリサワの書体は、それぞれの写植機でないと扱えない。NHKには両方の写植機があったのだろうが、それにしても(インストールしておけば自由に切り替えられるデジタルフォントとは違って)気軽に書体を使い分けるというものではなかったと思う。

1987年4月・5月の他の新作3曲の字幕がどうだったかは不明。
しかし、1つ前の2月・3月(※)と、1つ後の6月・7月の曲は、基本のモリサワBT1の字幕。
※ゆらんゆろん、風のオルガンと名曲。余談だが、みんなのうたでタイトルに「オルガン」が含まれるのは、風の~と神父さんの~の2曲のみ。
したがって、神父さん~は、例外というか臨時の措置として写研書体を使用したと言える。

このように、この頃のみんなのうたでは、モリサワBT1を原則としながら、たまに石井ゴを使用する場合があった。
憶測だが、字幕を作ろうとした時に、NHKのモリサワ写植機が、故障したりふさがっていたり、あるいはモリサワ写植機のオペレーターがつかまらなかったりして、じゃあ、写研写植機のほうで、となったのかも。
石井ゴのほうがすっきり見える気はする。個人的にはモリサワのゴシック体のほうが好きだけど。


ここで、2021年1月に(単発で?)再放送された曲。
1988年10月・11月初回放送の「フラミンゴのワルツ」。「ラッタッタ ラッタッタ」が印象的な尾藤イサオの歌。
その字幕が、

モリサワBT1でも、写研石井ゴシックでもない。「な」の3画目と4画目がつながっている。
モリサワ「太ゴB101」だ!
BT1のベースとなった書体であり、前回のように同時期のテレビ東京「演歌の花道」の歌詞で使用されており、デジタル化されて現在でもお目にかかるフォント。
「そ」は一筆書き
↑BT1や石井ゴでは、2画の「そ」。太ゴB101も、もしかしたらデビュー当初は2画で、途中から(この時点ですでに)一筆書きに改訂されたのかもしれない。
同時期新作の他の3曲のうち、公式サイトの画像で確認できた「みんなでステップ」と「風の歌が聞こえますか」でも、同じくB101を使っている。
この前月の4曲は不明。次月以降は、以前のようにBT1をメインとしながら、たまに石井ゴを使っている。

したがって、かなり例外的に、太ゴB101が使われたことになる。
NHKのモリサワ写植機の中に、BT1がセットされていない個体があって、それを使わざるを得なかったとか、書体の指定もしくは操作のミス(我々素人がパソコンでやりがちだけど)で、うっかりB101を使ってしまったとかだろうか。

ただし、冒頭の歌手・アニメーション作者表示。
これだけ石井ゴシック
通常ならば、BT1にせよ石井ゴにせよ、歌詞と同じ書体で表示されるようだが、これも例外的。
なお、表示位置は上下左右中央まちまちだが、これは映像を邪魔しない配慮だと思う。文字のサイズ(長体/平体を含む)や改行・行間隔も統一されていないが、これは単にこだわりがないためかも。
余談だが、歌手名は「うた」とされるのが基本だが、堺正章版の「北風小僧の寒太郎」では「歌」と漢字表記。
「神父さんのパイプオルガン」は歌詞と同じく石井ゴ

1985年4月・5月放送の「ああおかしいね」という歌。これも銀色夏生作詞で、筒美京平作曲。
歌詞と同じくBT1
「う」は、BT1より石井ゴのほうが縦に長い印象。「尾」の「毛」の右への飛び出しや、「真」の下の点のバランス、「ア」2画目の始まりの位置、小さい「ョ」の大きさなども違う。


そして、1989年1月に昭和が終わり平成へ。その直後に変化。
1989年4月・5月の「旅人のように」では、BT1が使われていたのが確認できる。
この間は、ホームページの画像に字幕が入っていないので確認できないが、1989年10月・11月の「教室大笑い」「はる なつ あき ふゆ」では石井ゴが使われ、それ以降、BT1は一切使われなくなったようだ。
したがって、1989年度の前半で、モリサワ「テレビ太ゴシック体BT1」は使われなくなってしまった。方針転換なのかもしれないが、NHKの字幕作成機器の更新によるものではないだろうか。
詳しくは不明だが、同じ辺りでテレビ東京「演歌の花道」も、太ゴB101から石井ゴに変更されている。

写研書体に一本化されたみんなのうた。1989年12月・1990年1月の所ジョージ「背中でツイスト」のセリフ部分では、丸ゴシック体の写研「ナール」が使われる。角ゴシック体以外の字幕は、みんなのうた史上初かもしれない。
翌年の「東の島にコブタがいた」でもセリフはナール。
1994年4月・5月の「ボクの勝ち」という歌では、部分的に写研「ファン蘭」というデザイン書体を使用。

そして、1994年8月・9月の「また明日」「花かんざし」、それにたしか「チュンチュンワールド~おげんきたいそう~」では、メインの歌詞としてナールが使われる。
ホームページで確認できる限りでは、10月以降もナールへ移行したかに思えるものの、1996年4月・5月「星空のオルゴール」「父さんの背番号」や、1996年6月・7月「かざぐるま」「切手のないおくりもの(2度目のリメイク)」「ずっと友達」では、石井ゴシックが復活。6月・7月の「おじいちゃんのブランコ」だけはナール。これを最後に、石井ゴシックは確認できない。
段階的移行を経て、1996年度半ばに、ナールへ完全移行ではないだろうか。【2024年6月27日コメントいただき追記・1996年4~7月の歌は、初回放送時はナールだったとのこと。となると、もう少し早い移行だったのか。】
石井ゴもナールも、写研書体だから切り替えは容易なのだろうが、明らかに見た目が違う2書体を、同じ番組の同じ時期の同じ用途で並行して使っていたのはなぜなのだろう?


その後、2003年頃までは、ナールが使われているのを確認できる。以降分は、ホームページでは歌詞がない画像ばかりになって、分からなくなる。
2003年10月・11月の「りんごのうた」では、写研のニュースタイルの角ゴシック体である「ゴナ」が使われる。


ただし、りんごのうた冒頭の歌手・映像作者表示は、昔ながらの石井ゴシック。

2000年代後半には、多くのテレビ番組で写研の字幕が使われなくなり、パソコンのデジタルフォントへ移行していき、写研はすっかり影を潜める。みんなのうたも同じ流れだったのではないだろうか。
現在では、曲によってさまざまなフォントが使われているようだ。
以上、みんなのうたの字幕書体の変遷。

2022年12月・2023年1月の再放送曲では、字幕とは別に、印象的なものが2曲あったので、後日。
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みんなのうた字幕1´・冬の下は冫

2023-02-02 19:55:02 | 文字・書体
久しぶりに、NHK「みんなのうた」、および文字(書体)の話。今回は以前の記事の補足編。敬称略。
みんなのうたの2023年2月・3月の再放送曲の1つが「ポケットの中で」。
名曲ぞろいだと思う、昭和末2・3月初回放送作品の1つ。1986年、うた・斉藤由貴、作詞・銀色夏生、作曲・吉川洋一郎、絵・やなせたかし。
作詞、作曲のおふたりは、みんなのうたでほかの曲も作っており(このコンビではポケット~のみ)、偶然なのか2022年12月・2023年1月に1曲ずつ再放送されている(詳細はおいおい)。

初回放送時は小学校3年生。なんだか分からない歌詞で、絵は暗めで若干怖い感じもしたが、嫌いではなく、記憶に強めに残っていた。
何度か再放送されているそうだが、しっかり見るのは37年ぶり。
改めて見聞きすれば、比喩が多用されている、と言えばいいのか、やはりよく分からない。でも、今なら、なんとなく分かるような分からないような…
アンパンマン作者と同一人物とは思えない絵(アニメーションでなく、静止した絵にズームする動き)は、歌詞に連動しているのかどうか、これも難解。その1つに、水平線の向こうに、帽子をかぶって涙を流す少女の大きな顔が斜めになっている絵があったのを思い出したが、考えてみれば気持ち悪い。そして、秋田県出身の版画家・池田修三っぽさがある。時折出てくる気球のバルーンが、レモンであることは初めて知った。
初めのほうの「桃色の砂糖菓子をかじりながら」の部分が、テープが劣化したように音が不安定になるかのように聞こえたが、伴奏(アナログシンセサイザー?)の音だけで歌はそうなっていないので、意図的にそういう音色にしたのだろう。

そして、その歌詞の字幕。

以前の記事の通り、昭和末期時点では、原則としてモリサワ製「テレビ太ゴシック体BT1」を使っていた。
同社「太ゴB101」をベースにした写真植字機(写植)用の書体で、デジタル化されていない(B101はデジタルフォントとして活躍中)。

BT1は、「北風小僧の寒太郎」で例示したように、「冬」の下の2つの点の向きが右下がりと左上がり、つまり「ン」になっているのが、変わっていると思っていた。
これはBT1だけではなく、1995年頃のWindows3.1&NEC製レーザープリンターで出力した、モリサワ「中ゴシックBBB」でも同じデザインだったようだ。現行のBBBはそうではないので、いったん「ン」でデジタル化されてから、形が改められたことになる。

ポケットの中でにも「冬」が出てくる。37年前に見た時、気付いていたが、

やはり、「ン」。

どうして「ン」なんだろうと、ずっと謎だった。今、ネット検索したら判明。
それは「冬」の部首に、忠実に従ったから。

冬の部首は、なんと「にすい」なのだそう。冷、凍と同じ。
というわけで、「ン」じゃなく「」なのだった!
ちなみに冬の上「夂」は「ふゆがしら」。

現時点(昭和末でも)では「冫」の冬は「変わっている」と思ってしまうが、本来は「冫」であるべきで、この書体はそれを守っていたことになる。
手書きで「冬」を「冫」で書く人など見たことがないが、やはり本来はそうであったのだろう。いつの時代に変わったのだろう。
令和の「令」の一件もあったけれど、元々の文字、学校教育で標準とされる文字、活字体と、違いが出てしまうものだ。
【3月24日追記・太平洋戦争終結を報道する、1945年8月(16日?)の秋田魁新報の見出しの「終」の冬の下が冫だった。】


モリサワの明朝体「リュウミン」など他の書体では、どんな「冬」だったのか気になる。
ここで、テレビ東京「演歌の花道」。BSテレ東で、昔のものを再放送している。その歌詞の字幕が、同時期のみんなのうたのそれに似た雰囲気がある。厳密にはやや小さく、書体は「太ゴB101」のほう。ちなみに、みんなのうた同様、平成に入ると写研の石井太ゴシック体に変わるようだ。
髪がふんわりとした五木ひろしが「さざんかの宿」を歌った回。いつ放送かは記録し忘れたが、1983年か。

↑BT1と異なることが分かりやすいのが「か」や「な」。BT1は線のカーブやつながりをなくした、シンプルなデザイン。

普通の「冬」!
ということは、BBBはデジタル化されても当初は冫だったのに、B101は写植時代から普通の冬だったことになる。なかなか複雑。

みんなのうたと字幕について、続く
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不ぞろいの看板フォント

2022-07-18 20:04:46 | 文字・書体
お店の看板のフォント(書体)の話。
※2021年8月にアップしようと思って、アップしそびれていた記事です。現状は違っている可能性もあります。
秋田市の泉と八橋の間の新国道(県道56号)を通ると、気になってしまう看板がある。

昔は、ケンタッキーフライドチキン八橋店とピザハットが入っていた建物。2018年8月2日からやきとりのチェーン店になっている。
店の軒先の横書き文字は、「炭火焼き」「やきとりの扇屋」。
そのフォント
「扇屋」は、フォントワークス「くろかね EB」。明朝体やゴシック体という既存のくくりに入らないフォント。最近、テレビのバラエティ番組のテロップでわりと見かけるフォントで、「て」が「T」に見えるなど、かなりクセがある。でも、この使いかたでは、角ゴシック体とあまり違いが分からない。

「炭火焼き」「やきとりの」は、一見、全部同じ、“モダンスタイル”の角ゴシック体フォントに見えるが、2書体使われている。「炭火焼き」と「やきとりの」で違う。だって「き」の形が違うもの。3画目と4画目が、炭火焼きのほうはつながり、やきとりのほうは離れている。
やきとりのほうは、この点(+1、2画目が右側で少し上がる)が特徴的で、よく見かけるモリサワ「新ゴ」。

炭火焼きのほうは、字游工房「ヒラギノ角ゴシック体(ヒラギノ角ゴ)」か。高速道路の標識のW5よりも太いウエイト(W8かW9)で、あまり見たことがないはずだけど、これもヒラギノ角ゴなのか。そして新ゴとけっこう似ているのが意外。同じフォントでも太さで印象が違うもんだ。
もし「き」あるいは「さ」の文字がなければ、2フォントを混在していることに気付かなかったかもしれない。
なお、建物とは別の2つの看板にも「やきとり」の文字があり、それは新ゴ。


色は反転しているが、大きさは同じ「炭火焼き」と「やきとり」。同じくくりの、異なるフォントを並べて使うのって…素人には、そうした意味が分からない。
一般的に「1つの場面で、書体をいくつも使いすぎない」のが基本だと思うし、どちらかといえば「同じ場面で使うフォントは、シリーズ(メーカー)をそろえる」ものだと思っていた。
こういう看板って、特にチェーン店では、専門家がデザインをするのだと思う。何らかの意図があって、こうしたのか。



秋田市内には、同じ県道56号沿いの茨島にもこの店がある。
2012年時点ではとんかつ屋が入っていて、2015年には今のやきとり屋に代わったが、看板のデザインは現行と別。2017年~2019年の間に、今の看板に替わった。

大小5つの「やきとり」は新ゴ、1つだけの「炭火焼き」はヒラギノ。
ということは、理由はともかく、このチェーン店ではそのようにフォントを使い分けているのかと思った。ところが、公式サイトを見ると、
公式ホームページより
「やきとり」の「き」がつながっていて、「炭火焼き」と同じ。新ゴを使っていない。

Googleマップストリートビューで、秋田県外の店舗を見ると、
ストリートビューより宇都宮宮内店
秋田とは色使いは異なるものの、ほぼ同じ看板。地上の縦書きの「やきとり」だけはヒラギノ。その他の「き」は、炭火焼きもやきとりも、3・4画目が離れているが新ゴとはまた別の「き」。1つの縦書き看板の中で、違う組み合わせで2ゴシック体が混在している。
この新たなフォントは、モリサワ「UD新ゴNT」のようだ。新ゴのユニバーサルデザイン版の1つで、かなを「ネオツデイ(のUD版)」と組み合わせたフォント。
※NHKの全国ニュースなどの字幕のフォントが、今春から変更されている。それもモリサワの新ゴのUD新ゴ版だが、NTが付かない、かなも含めて本家新ゴをベースにした「UD新ゴ」という別製品。

UD書体だから、宇都宮のほうが新しい看板かと思いきや、2015年時点で設置されていた。その後できた秋田の店では、UDから非UDフォントに変えたことになる。

ストリートビューより郡山八山田店。2017~2018年設置
右の炭火焼きだけUD新ゴNT、その他3つはヒラギノ。郡山市内の他2店舗も同じような感じ。


以上、どの店でも、それぞれ2つのゴシック体フォントが使われていた。だが、その使い分けの法則は見いだせなかった。
ただ、3つは混在していないし、この3つ以外のゴシック体は使われていなそうで、ある程度の指定はされているのだろうか。
もしかしたら、
・企業内部で何らかの暗号的な使い分けがある。
・フランチャイズ契約した企業、あるいは看板業者が違うなどにより、厳密な統一が図れなかった(ある程度の地域を単位にまちまちになった)。
のか。
地域や制作時期で違ってしまうのは許容できるとしても、1つの看板に2つのゴシック体を混在させるのは、美しくはないと思う。小学生だって「き」の違いは気付く。
運営企業が無頓着だったとしても、店舗や看板を作ったデザインのプロが、これを許してしまったのだろうか。
今、デザイン業界で使われているパソコンには、大手メーカーのフォントが使い放題の契約がされていることが多いようだ。だから、プロでも、気安く、必要以上にフォントを使ってしまうようなことがあるのだろうか。

予定通りならば、あと2年もすれば写研の書体も、モリサワによってデジタル化されて、それに加わることになるだろう。
写研のモダンゴシックと言えば「ゴナ」。モリサワの新ゴとは、ゴタゴタがあったそうで、デジタル化でゴナと新ゴが同じ契約内で使用できるのは、隔世の感。ただ、今となっては新ゴが事実上の主流で、ヒラギノなどその他同系統フォントも定着した中に、ゴナが食いこむ余地があるのか。素人ながら興味がある。
だけど、こういう無頓着な看板ならば、ゴナの「炭火焼き やきとり」が現れるかもしれない。
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リマスターの字幕

2022-02-14 21:06:36 | 文字・書体
1980年代に、NHKで「シルクロード」という紀行番組があった。NHKスペシャルの前身、NHK特集のシリーズの1つで、大きく分けて3シリーズ作られた。
特に最初の1980年度「シルクロード 絲綢之路(しちゅうのみち)」は、当時は関係が悪くなかった中国との共同取材による貴重な映像で、日本にシルクロードブームを巻き起こした。
僕はリアルタイムでは幼くて記憶がないはずだが、その後の再編集版や再放送で見たことがあり、喜多郎によるテーマ曲が感動的。そんな思い出はいずれまたとして、今回はその字幕・テロップについて。

シルクロードは、1990年代前半~中頃=平成初期はさほど再放送されていなかったのではないだろうか。2000年近くになって、よく再放送されるようになった。「NHKアーカイブス」が発足した頃で、過去の番組を活用する方針になったのだろうか。
そして2000年代に入ると、劣化した映像を復元する「デジタルリマスター」という技術が広まった。
シルクロード 絲綢之路は2005年にリマスターされた。さらに2019年には4Kリマスターされた。最近は、4K放送でないBSプレミアムでも、その4K版を2Kに再変換して放送している。それでも、初回放送時よりもきれいではないかと思える画質。そこまでする必要があるのかという気もするけれど…

4Kリマスターで映像がきれいになったということは、その字幕(の文字)もきれいになっている。初めて見た時は、その鮮明さに驚いた。

アナログ放送、あるいはブラウン管テレビの字幕といえば、輪郭がぼんやりしたものであった。それはデジタル放送と比べてということであって、昔はそれが普通だったわけだけど。
2007年だったか、初めて地上デジタル放送を見た時、映像の鮮明さよりも、字幕がドギツイほどくっきりしているのに違和感に近いものを覚えた。シルクロードリマスターの字幕にも、それに近い感慨を覚えた。
今のデジタル放送のデジタルフォントと同じくっきりさなので、一瞬、リマスター時に字幕を入れ直したのかと疑った。よく見れば、
「き」とか
この書体は、写研「石井太ゴシック体」だ。今のところパソコンでは使えないから、やっぱり写真植字(写植)により記録されていた字幕を、リマスターしたのだろう。写植文字もまた、輪郭がぼんやりしたイメージを持っていたが、ここまでくっきりするのに再び驚いた。
初期のデジタルリマスターは、1コマずつ手作業も多用して作業を進めると聞いたが、今もそうなんだろうか。それともAIなんかも関わるようになったのだろうか。

昔のテレビ番組を見ていると、例えば連続テレビ小説の出演者名やみんなのうたの歌詞では、同じ映像内でも、同じ書体なのに突然文字の縁取りの太さや表示位置が微妙に変わってしまうことがある(時には傾いたり)。時間や技術の制約もあったのだろう。でも、シルクロードではそういうのはなさそうで、きれいにまっすぐそろっている。そこまでリマスターで修正できないと思うので、当時から丁寧に字幕を作っていたのだろうか。写研では、コンピューターを用いたテレビ用電算写植「テロメイヤー」を1983年に発売しているが、シルクロード 絲綢之路当時は発売前だから、手動写植だったのだろうか。

数年後、モリサワから石井太ゴシック体もデジタル化されて発売されれば、これと同等の字幕を容易に製作できるのだろうが、一足先に見られた。


紀行番組だから、画面に地図が表示される。今ならGoogle EarthやフルカラーCGで表示されるところだが、1980年では、
こういう地図
テロップによる線画で、フリーハンドで道や山脈、砂漠を描いて、そこに写植文字を入れている。それが、
むにゅーっとズーム
背景が動画、テロップ自体がズームするという点では、当時としてはがんばったのではないだろうか。わりと最近まで、テレビ朝日の十津川警部シリーズで、列車の運行ルートを説明する時にも、同じ手法がされていた。

でも、こんな地図も。
上と同じ回
砂漠がランダムなドットで示されるのは、この番組定番。
でも、右下固定表示で、山脈の形がなんか違う(ややなだらか)し、何より書体が違う。当時は部分的に色を変えることはしなかったはず。
拡大
細い丸ゴシック体。これってフォントワークス「ナール」【14日訂正】「スーラ」?
写研書体ではないし1980年にはまだなかった。デジタルリマスターの一環というよりは、ついでに、補足説明の意味で新しい地図を作って追加したのか?


さらに、絲綢之路を、切り口を変えて再編集した1981年放送「もうひとつのシルクロード」というのも、デジタルリマスターされ放送されている。
「報告/鈴木ディレクター」
フルネームでなく、姓+職名の字幕なのが当時のNHKらしさ。最後のスタッフロールではフルネーム。
でも、この角ゴシック体は、石井ゴシックではないような…
手書き文字はいかにもシルクロードのそれだけど
フォントワークス「ニューセザンヌ」か。
最後は、
1995年制定の卵のNHKマーク
ということで、隠すそぶりもなく、新しく字幕を入れ直していることになる。
編集前のフイルムなりテープが残っていて、それを使ったのか。当時の放送用マスターの状態が悪すぎたとかだろうか。ご苦労なことです。
それならば、あと数年待てば、石井太ゴシック体のデジタル字幕も入れられたのに。
この地図もあえて「ソ連」で作り直したのか
「イリ地方」は黄色い文字。
1991年に崩壊した「ソ連」を表示するフォントは、2002年リリース。ただし、前身のセザンヌは1990年。


なお、シルクロード本編の終わり画面は、
卵じゃない旧NHKロゴ
↑下の次回予告はニューセザンヌ。

石井太ゴシック体とニューセザンヌを比べてみる。
本編

もうひとつの
シルクロードでは、語り「石坂浩二」と音楽「喜多郎」(と作家などゲストも?)は独特な手書き文字であった。
今見ると、本編ともうひとつのほうで、別の文字だ。これももうひとつのほうを再編集した時に、改めて書いたのだろうか。似せてはいるが筆跡が違う。

その他エンドロールは縦スクロール。【14日訂正・以下、説明が途切れたり意味不明な点があったのを修正しました】
本編/石井太ゴシック体

もうひとつの/ニューセザンヌ
やっぱりニューセザンヌはモダンスタイルゴシック体らしい印象を受けるし、読みやすい。
そして、石井太ゴシック体は、線の両端が中央より太いなど正統派オールドスタイルゴシック体であることが分かるが、古臭い感じもしない。21世紀でも通用するだろう。
素人の個人としては、ひらがなはちょっと古くさいし、モリサワのオールドスタイルゴシック体で代替可能だし、すでにあまたのゴシック体が存在する中で、数年後にあえてこれを選んで使う人がいるかとも思うけれど。
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みんなのうた字幕1・冬の下がン

2021-04-29 23:44:20 | 文字・書体
NHK「みんなのうた」は、2021年で放送開始60周年。
それぞれ思い出の曲があることでしょうが、今回はテレビ画面下に表示される、歌詞の字幕の書体のこと。
子どもの頃から多少意識してはいたが、近年書体に興味を持つようになって、特定したくなった。その話。

60年も放送しているから、字幕は時代で変化している。
※みんなのうたは、偶数月に新作曲が2~4曲作られ、並行して過去曲の再放送がされるのが原則。
放送初期は字幕がなかったようだ。
僕が意識して見るようになった、1980年代中頃には、再放送を含む全曲で同じ書体の字幕だった。字幕がなかった古い曲でも、再放送時に新たに入れていた可能性もある。
その後、平成に入るかどうかの時、新作曲は一見同じようだが別の書体に変更されていた。
平成の間にさらに変遷があって、現在の新作曲はもちろんデジタルフォントで、曲ごとにフォントを変えているようだ。昭和~平成初期の曲の古い曲の再放送時は、当時の文字そのままのことが多い。NHKが保存しておらず視聴者から提供された、古い映像を放送する時は、新たに入れている。まれに、昔も字幕が入っていた記憶があるのに、デジタルフォントで字幕を入れ直した曲も存在する(アップル パップル プリンセスとか)。字幕なしのマスター映像を(リマスターして)使っているとかなのだろう。

今回は、個人的にいちばんなじみがある1980年代中頃に見られた書体について。
※この時期でも、ごくまれに違う書体が使われた事例があるのだが、それは後日。ここでは標準の書体だけ。
再掲)3行表示は珍しいが、書体は標準
昔のみんなのうたの歌詞といえば、こんな角ゴシック体を思い浮かべるかたは多いだろう。

時期的に写真植字機(写植)書体なのは確実。中学校の美術の時間に習ったような、典型的な、今では「オールドスタイル」に分類されるゴシック体なのも、異論は出まい。
写研の石井太ゴシック体にちょっと似ていそうだが違い、現在の各社デジタルフォントには該当なし。

ネットを調べたら、ありがたいことに少ないが情報があった。感謝。【5月4日訂正と追記・コメントにて情報をいただいたので、削除や追記しました。】
これはモリサワのデジタル化されていない書体で、漢字と仮名で違う書体だそうだ(デジタル時代でも、漢字と仮名でフォントを変えて組み合わせて使うことはあり、それ用の仮名だけのフォントがある)。

仮名は、「テレビ太ゴシック体BT1」という書体。
漢字もある同社「太ゴB101」の仮名をベースに、装飾的な部分を削ってシンプルにした書体とのこと。
例えばB101では、「お」2画目が下に下りたところで一旦ハネているのを連続化、「か」3画目の内側に戻るハネのカット、「な」の3~4画目の連続を分離といった具合。
書体名の通り、当時の解像度の低いテレビ受像機に映し出しても、つぶれず読みやすいデザインにした文字のようだ。

テレビ太ゴシック体BT1は、NHK以外の局でも使っていたようで、例えばTBS。
1972年の日本レコード大賞
【6月18日追記】1971年のアニメ「天才バカボン(第1作、元祖天才バカボンよりも先)」のオープニングの歌詞(にしからのぼった…)も、テレビ太ゴシック体BT1のようだ。ただし「やなぎのえだに」だけは、何か事情があったようで、手書きの太いゴシック体。(以上追記)

多少書体を見分けられるようになった目で見ると、「さ」「き」の形、「と」1画目の角度、全体にやや縦長に感じるバランスなど、モリサワらしさがある、ような気がする。
なお、ベースになったという太ゴB101はデジタル化されているが、「そ」など手直しされている文字もある。

テレビやCRTモニター向けに視認性を高めた書体といえば、平成書体シリーズ、あとあのナールも本来の目的はそこらしい【コメント欄参照】。これらは枠をいっぱいに使って、パーツを際立たせる方向性のデザインだと素人は認識している。その点では、最近の各社ユニバーサルデザインフォントも同じ。
テレビ太ゴシック体BT1は、目指すところは同じでも方向性が違うようだ。


そして漢字。これが分からない。組み合わせて使うのだからモリサワ製ではあるはず。【5月4日追記】漢字も同じくテレビ太ゴシック体BT1で、仮名同様に細部が調整されているとのこと。
現存のモリサワのデジタルフォントとは、どれも似ていてどれも違う。例えば「小」の縦棒のはね方が一致しない。

この漢字の中に、子どもの頃から引っかかる文字があった。これでみんなのうたの字幕に興味を持ったのかもしれない。
「白い道」「こだぬきポンポ」「タニシちゃん」「ポケットの中で」、そして「北風小僧の寒太郎」などに出てくる…
「冬でござんす」

「北風小僧の寒太郎」は、1974年の堺正章・モノラル版と1981年の北島三郎・ステレオ版がある。音源は両方残っていて、同じアニメーション映像で再放送されているが、1974年の初回放送時は、実写とアニメの合成だったそうで見てみたい。
そして、再放送されるのはモノラルのマチャアキ版が圧倒的に多い。1980年代後半はほぼ毎冬流れていた。2021年2月の60周年記念再放送でもマチャアキ版。
NHKのみんなのうたを紹介する番組では「あの北島三郎さんが歌っていたんですよ!」と知ったふうに説明されることが多いが、そんなわけで個人的には寒太郎といえばマチャアキさん。【追記】2023年12月・2024年1月の再放送も堺版。

で「冬」。
下の2つの点は、一般的には右下がり2本なのに、これは短い右下がりと右上がりが1本ずつで「ン」のよう。
手書きの行書だと、これに近い形になりそうだけど、活字でこんな冬は珍しいはず。
例によって、現行のモリサワフォントには該当なし。
下が「ン」の意味が分かった。「ポケットの中で」と合わせてこの記事にて


ここで話が飛ぶが、1998年度の弘前大学総合情報処理センター(2019年から情報基盤センターに改称)の、パソコン教室のプリンターで出力されたフォント。
以前触れたように、1998年度後半にWindows98機(PC98-NXのはず)に更新されたが、それまではWindows3.1機。どちらもNECのモノクロレーザープリンターに出力された。

3.1時代は、マイクロソフトオフィスあるいはプリンターのバンドルだったのか、モリサワフォントがインストールされていた。【5月9日補足・MSオフィスではなく、単体のワードとエクセルだったかもしれない。そんなソフトには、フォントがバンドルされてはいなかったかも。】
当時はMacintoshに標準搭載され、日本初のデジタルフォントでもあった、リュウミンと中ゴシックBBB(どちらも現在も発売)。
中学校美術レベルの書体の知識しかなかった僕は、明朝体、ゴシック体なのに、そうでないおかしな名前やアルファベットが付いていることが不思議【30日補足・明朝、ゴシックというのは分類名であること、その中で個々に商品名があるという仕組みを知らなかった。】であり、一方で、印刷屋さんに匹敵するような(というか同じだったわけですが)とても上品で美しい活字で、それを個人が印刷できることに感動した。今も好きなフォントであり(でも、当時のワープロ専用機のモトヤのフォントも嫌いではないです)、モリサワ書体が好きになったきっかけでもあった。ワープロからパソコンに乗り換えようと決意できた大きな理由の1つだったと言ってもいい。

物持ちがいいことに、同期が、おそらく情報処理センターで印刷して配ってくれた、研究室の名簿がある。角ゴシック体で出力されているから、中ゴシックBBBだろう。
現行の中ゴシックBBBと変わらないはず
↑「が」の3画目の終わりが左へ戻っている。BT1ではここが削られている。モリサワ書体どうし、それ以外のカーブや位置はよく似ている。
その中にこんな文字があった。↓
「柊」の下が「ン」!
木偏に冬で「ひいらぎ」を名乗るアパートが存在する。現在は「ハウスひいらぎ」となり、ひらがな表記される場合もあるようだけど。
ちなみに弘前市内には別の場所に、柊を名乗る高齢者施設もある。1995年に「外科医柊又三郎」というドラマ(萩原健一主演)が放送され、その影響かもしれないが(アパートは1996年築、高齢者用は2002年開設)。

デジタルフォントでも「ン」の冬が存在していた。
ただ、現行の中ゴシックBBBでは平行な普通の配置。名簿は実は微妙に違う別書体(NECプリンター用の独自フォントとか)なのかもしれないし、BBBでも後年にデザインが修正されたのかもしれない。
このフォントで名簿を作ってくれた同期、柊の付くアパートに住んでくれた後輩に、【30日追記・それに柊と命名してくれた大家さんに】今さらながら感謝。欲を言えば「冬」そのものが見たかった。

でも、これがみんなのうたの書体と同一ではない。
「子」が違う。
風のオルガン」のタイトル静止画(※)。「1987年2~3月放送」は後年の追加
今、市販される角ゴシック体では、オールドスタイルでも「子」2画目が縦一直線なのが主流。名簿も、現行のBBBもそれ。
しかし、昔のみんなのうたでは、手書きのように右に膨らんでカーブした形。石井角ゴシック体もそう【↑これこそが石井ゴシック体だった】だから、オールドスタイルゴシック体では、もともとはそれだったのだろう。

※1980年代のみんなのうたでは、上の写真のような、歌が始まる前に出る静止画の曲名、作者名にも、歌詞と同じ角ゴシック体が使われていた【今回は石井ゴシック体=違う書体でした。時期によっては歌詞と同じモリサワ書体のこともあったはず】。現在の再放送では新しいCGに差し替えられる場合が多い。
また、映像の冒頭に出る、歌手と映像作者の名前も、同じ角ゴシック。最後に右下に出るスーラは、後年の追加。


最後に文字の配置。出版物業界も含めて、写植では文字間隔を詰めて打つことが多かったようだ。DTP化以降はゆとりを持たせることが多くなったようで、視認性の点でも優位なのかもしれない。
ビチビチの「ヒューン・ヒューン/ヒュルルンルンルンルン」
子どもの頃、「ルル」が「ノレノレ」のように見えてしまった。一種のゲシュタルト崩壊?

で結局、昔のみんなのうたの漢字の書体は何だったのだろう? いつか分かれば…【分かりました】
みんなのうたの平成以降などの字幕については、また。※カテゴリーが違いますが、まずはこちらで続き+簡単に
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協働大町ビルの文字

2021-04-28 23:29:26 | 文字・書体
秋田市大町、川反の1本西の大町通り(赤れんが館通り)に「協働大町ビル」がある。かつての「協働社大町ビル」。
1972年にできたビルだそうで【2022年4月25日補足・定礎板に「昭和47年」とあるのを確認】、飲食、雀荘、宿泊、宴会などができるフロア・店が入る。かつてはみちのく銀行秋田支店が1階に入っていたが、2015年始に閉店。空いた部分は耐震補強工事がされた後は、特に何も入ってはいなさそう。一時期、総理就任おめでとうございますとか、飲食クーポン使えますといった告知が張られていた。ひさし上の「みちのく銀行」がはがされた緑色横長の看板が残っている。
車がいる付近がみちのく銀行跡、その上に見づらいが緑の看板がある
みちのく銀行跡と逆の北寄りには、地下駐車場の出入口がある。

入ると下り坂になっていて、駐車スペースが広がるようだ。下り口右側に詰め所があって、以前は係の人がいたが、今はいなそう。坂の下に遮断器が見えるので、今は自動精算に変わったのかもしれない。

全国的には最近、古い屋内駐車場内での作業中に、消火装置が誤作動して二酸化炭素を噴出し、犠牲者が出る事故が続いている。ガス放出の消火設備がある建物は、秋田県内に74、うち秋田市内に34あるそうだが、おそらくここもその1つ。それらしき表示がある。


ここから本題。道路から見て奥まった位置にあるものが、以前から気になっている。
坂を下って駐車場に入る地点の上の表示。

「一時停止/駐車券を受け取つてからお入り下さい」
小さい「っ」が大きいのが、時代を感じさせる。その横の三角形の指す場所は、詰め所方向。

それよりも気になるのが、大きい文字「直進」「右折禁止」。

これが、番付表などで見られる相撲文字に見えてしょうがない。ただの楷書にしては、直線的。
ビル開業時からあるのかと思うが、当時の看板屋さんの筆だろうか。地下だし、向かいのビルのおかげで直射日光が入らないため、状態は良い。ぜひこのままで。


ちなみに、大相撲の番付や場内の電光掲示板の文字は、行司が書いている。
NHKの中継の字幕や取り組み結果一覧の四股名は、デジタルフォント。相撲文字のフォントは多くないが、おそらくダイナコムウェア「DF相撲体」ではないだろうか。
秋田放送局でも使っていて、相撲関係のニュースでは全部の字幕が相撲文字になる。
【29日DF相撲体と推測した理由を補足・中継で使う他のフォントはDFフォントが多そうなこと、秋田局で表示された「下」の3画目が左へ戻っている字形であることから。】
【29日補足・相撲中継の取り組み表の一覧画面での四股名は、十両以上が相撲文字、幕下以下は明朝体(今風のゴシック体的要素を含むフォント。名称不明)で表示される。秋田放送局では、序ノ口から全員相撲文字(というか画面が全部相撲文字)で扱いが違う。】

相撲文字に似たものに、芝居文字(勘亭流)、寄席文字(橘流)、ひげ文字などがあって、まとめて「江戸文字」と呼ぶそうだ。
中学生だった平成初期に、学級目標の横断幕などに勘亭流を使うのが、ちょっと流行った。全国的なのか、母校だけだったのか知らないけど。
「江戸文字勘亭流」という字典(書体見本)を元に作っていた。当時は写研から写植書体が出ていたそうで、江戸文字がある程度一般化はしていたようだ。(むしろ楷書体のような、普通の毛筆書体は、今ほど普及していなかった。ワープロ専用機にぼちぼち搭載され始めた頃だったと思う。)
当時の僕としては、江戸の伝統芸能で見るような手書き文字が、素人がこういう形で使えることに少し興味を持つとともに、その文字を学級目標の表示に選ぶセンス(クラスメイト【29日訂正・ほかのクラスだった】生徒なのか学級担任なのか)が理解できなかった。
今、HG創英角ポップ体が、太くて目立つ文字だからという理由で、適切ではなさそうな場面で多用されるのと同じことがあったのかもしれない。協働大町ビルの駐車場も、そうなのかも。

【29日追記】コメントをいただいて思い出した。大相撲中継で映る、国技館内の力士が入退場する花道~バックヤード(?)の壁などに「テッポウ禁止」といった大きな注意書きが掲示されていて、それが相撲文字。もし、大町ビルの表示が国技館の駐車場にあったら、何の違和感もないことでしょう。

続き・協働大町ビルのほかの手書き看板
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写研書体ついにデジタル化

2021-01-18 23:59:21 | 文字・書体
素人の知ったかぶり記事ですので、ご承知おきを。
今日、当ブログのアクセス解析を見たら、アニメ「クレヨンしんちゃん」のサブタイトルの書体「ファニー」と、「石井丸ゴシック体」の記事へのアクセスが、急に増えていた。
写真植字機(写植)メーカー「写研」の書体の記事である。
それらで触れたように、パソコンを使ったDTPが普及し、他社がパソコンで使えるデジタルフォントを発売していく中、写研はそれを拒んできた。1990年代までは写植が印刷の主流であり、写研の写植機・書体が印刷物やテレビの字幕などで、とてもよく使われていた。そんなトップメーカーであった写研も、今はごく一部でしか使われない。

そんな中、2011年には、写研が自社書体をパソコン用書体、つまりデジタルフォントとしての発売に向けて、準備中であることを公表。だけど、いつまで経っても続報なし。
2018年には、創業者の娘で(かつワンマンで?)あった社長が、92歳で逝去。
2020年には、埼玉県にあった写研の工場が解体。
写研の写植機は、ISDN回線がつながっていて、使った文字数分の料金を取られる仕組みなのだそうだが、そのISDNサービスは2024年で終了予定(「INSネットディジタル通信モード」2018年にNTT東西が発表)。
今も企業としては存続しているものの、この分ではデジタル書体発売はおろか、会社自体が…と思っていた。

アクセス解析を見た後、ネットをさまよっていると、情報を見つけた。驚いた。
「モリサワ OpenTypeフォントの共同開発で株式会社写研と合意」
元は写植の2番手メーカーであり、今はデジタルフォントのトップメーカーである「モリサワ」のプレスリリース。
写研の書体を、モリサワと共同開発という形で、デジタルフォント化することに合意したという。2024年から順次リリース予定。
※2社での「共同開発」であって、会社合併とか提携とか、譲渡とかでない。

モリサワは、写研から独立してできた企業。
1990年代にはモリサワ「新ゴシック(現・新ゴ)」が写研「ゴナ」に似ている(ゴナのほうが先)と、写研が訴えたこともあって、ただのライバルではない関係と思っていた。
それが手を組むというのもすごい。
※2024年は、独立前に写植機の特許を申請して100周年とのこと。

実現しないかもと思っていたことが、あり得ないと思っていた組み合わせで実現しそうという、二重の驚き。
まだ3年以上あることになるが、大手モリサワが関わるのなら、よほどのことがない限り、実現しそう。
でも、写研でも電算写植というのがあって、書体のデジタル化自体はしているようだ。それをパソコン用にするのに、3年もかかるもんだろうか。ISDN終了まで引っ張って、写植業界の“既得権”を守るとかかも。そしてその後、写植はすっかり過去のものになるのだろうか。


このニュース、一般的にはそう話題にはならないだろう。
ツイッターでは、写植、写研、書体の愛好家を中心に多くの声があり、総じて歓迎する声。
ただし手放しで喜んで使いたいというものよりも、実現は「今さら/やっと/遅かった」とした上で「写研の『書体が消滅せずに残ること』」を歓迎するというのも多かった。

以前の繰り返しで、多くの方々もおっしゃっているが、デザイナーや印刷業界人でも、写植を知らない、写研書体を使ったことがない人は増えている。玉石混淆ではあるが、高品質なデジタルフォントも増えた。鉄道の駅名標や案内、テレビの字幕、高速道路の案内標識、写研書体でなくても成り立っている。一般人の多くは写研書体を求めているわけでもない。
写研書体は美しいけれど、ユニバーサルデザイン・視認性も求められる今では、どうだろう。
およそ20年のブランクの後、写研フォントが使えるようになっても、かつてのようにあちこちで写研書体を目にする世の中になるとは思えない。選択肢は増えることになるが、選ばれるとは限らない。
モリサワが、現行の各フォントとは違う売り方を工夫するとかなら、また違うかもしれないが。

昔の官製はがきの「郵便はがき」は、おそらく写研の教科書体(石井中教科書体?)。
写研の教科書体は、昭和末時点では実際に文部科学省検定済教科書にも使われ、秋田市で採択されていた教育芸術社の小学校音楽などがそうだった。光村図書の教科書体(イワタ教科書体と同一?)と比べて「き」の3角目がスッと長く、全体には柔らかい雰囲気。
写真の切手部分がトキの世代が最後。次のスズメ世代からは平成角ゴシック体になった。2007年10月の日本郵政発足時が切り替えらしく、郵政民営化を機に書体を変えた=写研をやめたことになる。
※厳密には官製はがきは郵政省時代の呼称。郵政公社時代は公社はがき、今は郵政はがきなどと呼ぶ。

モリサワ以外の各フォントメーカーとしては、どう見ているだろう。戦々恐々か余裕か。
モリサワとしては、どう転んでも損はしないのかな。仮にゴナがデジタル化されれば、モリサワの新ゴと併売されることになるのだろうか。ややこしくなりそう。
例えば、いすゞ自動車と日野自動車のバスの製造部門が経営統合した時(これも驚いた)は、両社で競合していた車種は実質統合(片方の車種を製造しなくなり、相手方の車種の名前だけ変えて販売)されたことがあった。フォントではそれはないかな。


現在、モリサワ公式サイトでフォントを購入すると、1書体買い切りだと約2万円(他の方法もあり)。
写研フォントもその値段だとすれば、高くはないかな。でも、自分だったら、うーん。
僕はモリサワフォントでフォントの美しさを知ったので、買うなら元々のモリサワ製品で充分。「ナール」なら、欲しくなくはない。

今なお写研書体を使い続けている、シンエイ動画(クレヨンしんちゃん)と一般道の管理者(ナール案内標識)には、使いやすく、そしておそらく安くなるだろうから、朗報でしょう。

再掲)あと3年ずれていれば「大学入学共通テスト」がデジタルナールにできていたかも

今年いちばんびっくりしたニュースでした。まだ1月18日だから18日間でだけど。

【19日追記】関係ないけれど、フォント業界の話。
以前、羽後交通のバス停の表示板の書体を調べた。そのうち一時期は「織田特太楷書」もしくは「楷書体マール」だと思われる書体が使われていた。どちら作者が同じで類似しており、前者は写研の写植書体、後者はデジタル書体でキヤノンから発売されていたものの撤退。どちらも今は、使うにはハードルが高い書体。
先日、コメントで、羽後交通バス停は楷書体マールをベースにしたものではないかとの指摘をいただいた。その際、同書体が2020年12月からダウンロード販売されているとの情報もいただいた。元々の発売元である出版社「マール社」のサイトで、1万2千円。
再発売っていうこともあるのかと少し驚いた後、それ以上の今回の話。
織田特太楷書もデジタル化される可能性があるわけで、一時はレアだった2書体が別の形ながらそろって、よみがえることになるかも。
そして、このように写研以外でも、フォント業界に新たな動きが出てきているということになるのだろうか。

【3月10日追記】3月8日には、写研の公式ホームページが公開!!
ドメインは以前から取得してあったとのことだが、中身がついにできた。いくつかの書体の見本も掲載され、パソコン画面でクリアな写研書体を見られる。そのほか、写植機の保守などに関する情報があるが、今後の充実に期待。

【2022年11月26日追記】2022年11月24日付で、モリサワホームページに「モリサワ 写研書体を字游工房と共同開発 2024年に「石井明朝」「石井ゴシック」の改刻フォントをリリース」が掲載。
2024年に発売される写研フォントは、石井明朝2書体と石井ゴシックとなることが発表された。モリサワ傘下で、写研出身者が創業した字游工房も関わる。
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Jチャンの字幕

2020-12-06 23:28:00 | 文字・書体
テレビの字幕の話。昔の写植でなく、今の。【以下、本文は2020年10月~年末時点の内容です。その1年ほど後には、末尾の追記の通り、変化しています。
テレビ朝日の夕方のニュース「スーパーJチャンネル」。1997年10月放送開始なので、この時間帯では最古参の番組。
ちなみに開始時点の他局は、日テレが「ニュースプラス1(2006年終了)」、TBSが「ニュースの森(2005年終了)」、フジが1年で終わった「ニュース555 ザ・ヒューマン(前はスーパータイム、後はスーパーニュース)」。NHKはその春までは全国共通の「イブニングネットワーク」だったのが終わって、今に続く各地域まちまちの番組名。

スーパーJチャンネルは、当初のメインキャスターが斬新で、月~木曜は石田純一、金曜は田代まさしという顔ぶれ。それぞれ半年、1年の起用ではあったが。

そして当時も思ったが、他局と比べると「スーパーJチャンネル」は斬新なネーミング。
当時はJリーグ発足4年目で浸透していたので、それを意識したのか。石田純一のJとの説もあったが…
開始時から2010年まで出演した、坪井直樹アナウンサーが、テレビ朝日ホームページ内の2002年頃と思われるコラムで、由来を紹介していた。
「我々も意味はよくわからない」ながら、「「ジャーナリスト」のJ、「ジャパン」のJが有力です。(前キャスターの石田純一さんのJという説もありますが)あとは「ジャンプ」のJで躍動感のある番組を目指しています。」だそう。

2010年春からは渡辺宜嗣アナウンサーがメインになり、局アナ定年退職後も継続。
2020年秋には、メインを小松靖アナウンサーに譲って、コメンテーター的に出演しているようだ。
その今年秋、スーパーJチャンネルとは知らずに、たまたまスーパーJチャンネルの画面を目にした。



画面の雰囲気が変わっていた。土日版も同様。
第一印象は「これフジテレビ?」これは色使いのせいか?
第二印象、第三印象が今回の本題で、「字幕が読みづらい」「画面デザインが素人っぽい」。

画面の中でもテロップが大きく変わった。
文字の大きさは違っても、原則としてすべてが同じフォント。線(ウエイト)が細い丸ゴシック体を、縦方向に圧縮して縦長にしている。そして文字どうしの間隔が広い。なお、まれに部分的に違うフォントを使うことはある。

縦長文字と文字間隔拡大により、間延びしてしまったと思う。そして線はもう少し太いほうがいいと感じた。上のドコモのロゴの画面の下では、背景色なしで文字を出しているので、埋没してしまっている。また、背景色が無透過の白に黒い文字なのは、安直なようにも感じるし、そこにピンク色の文字を入れるのは見づらい。
こうした結果、他局も含めて見慣れたニュースの画面とは、印象が異なった。
テレ朝としては考えてこうしたのだろうが、フォントに制限があったり、書体使い分けや配色、見やすさへの配慮を理解していなかったりといった、素人の映像作品のように見えてしまう。

YAHOO!ニュース経由のデイリー新潮に10月7日付で「新生「スーパーJチャン」から考える 元番組Dが語る「テレ朝躍進の理由はここにある」」というのがあった。
元ディレクターが、番組リニューアルを基本的には褒めているようだが、「ただ、一点、テロップは各局に比べて少し読みづらい印象です。」「少し「文字の細さ」が気になりました。」と述べている。
ツイッターでも、見にくいという声が散見されるが、2か月経っても変えないということは、これでいいと思っているのだろう。


9月以前のスーパーJチャンネルでは、テレビ朝日の他のニュースと同じ画面だった。10月以降も他番組は変わらないので、共存している。
ANNニュース

スーパーJチャンネル(上のQの部分を独立させて表示)

ANNニュース

スーパーJチャンネル。微妙に訳が違う

スーパーJチャンネル以外で使われる書体は、角ゴシック体のフォントワークス製「ニューセザンヌ」が基本。
会見など写っている人物の発言をそのまま字幕にする時は、丸ゴシック体の「スーラ」。上の画面で「途上国並み」うんぬんは、その時点の映像に連動してしゃべっていないので、スーラではないという理屈のようだ。あまり意味がある使い分けでもない気もするが、目障りではない。
NHKの全国ニュースもニューセザンヌなので、見慣れてしまっているせいもあるかもしれないが違和感はない。配置、サイズ、色使いも含めて総合的に、テレ朝のニュース画面として完成されていると思う。
新しいスーパーJチャンネルの字幕・画面に対して、そのような感情を抱ける時が来るだろうか。


スーパーJチャンネルの画面が見づらいのは、フォント自体に問題があるわけではない。フォントの使い方、選び方のせい。だからここまでフォント名を示さなかった。最後に紹介する。
一見、細いスーラかと思うが、ひらがなの線がだいぶ違う。「ん」「す」の線の終わりの位置、「や」の2画目の向きなど【7日追記・「も」1画目の終わりが異様なほど上まで伸びていること、「さ」「き」の最後の画がつながっていないことも違う。】。でも全体の雰囲気は似ている。

フォントワークスの「UD丸ゴ【9日一部削除】_ラージ」というフォントだった。フォントワークスにしては珍しく、芸術家の名前じゃないので分かりやすい。【9日訂正】UD丸ゴには、ウエイト違いとは別にラージとスモールの2種があった。両者は、文字の大きさが微妙に大小違うのだが、素人が一見しただけでは識別できないので、どちらなのかは不明です。
スーラをベースに、よりモダンなスタイルの丸ゴシック体にするため、字面を大きくし、さらに視認性・判別性向上の調整をした書体。
もちろんウエイト違いもあるから、Jチャンさんには、もう1~2段階太いのに変えてもらえば、見やすくなると思うのだけど。

【2021年6月4日追記】2021年5月31日から、上記、ニューセザンヌが使われていた定時ニュースのフォントと画面デザインが変更された。
新しいフォントは、フォントワークス「UD角ゴ」らしく、系列局も多くが同様に変更したようだ。
画面デザインはそっけない感じもするが、Jチャンほどの違和感はなく、すっきりして悪くないようにも感じる。

【2021年11月12日追記】2011年11月に久しぶりにJチャンを見たら、上記2020年10月当初とは少し変わっていた。
まず、画面下に表示されるニュースの流れや容疑者の名前は、UD角ゴに変更された。丸ゴなのは発言内容などに限定。再びフォントを使い分けるようになった。
そして、以前は文字を横方向に強く圧縮して縦長にしていたのが、圧縮率が小さくなった。
これらにより、おおまかには以前(もしくは他局)と同じ程度の文字の見た目(形や間隔)になり、違和感は大幅に軽減された。まあ、これでよしとしましょう。
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羽後交通バス停の書体

2020-10-07 00:07:29 | 文字・書体
ダルマ型バス停の表示板の、バス停名を記した書体・フォントについて、これまで秋田市交通局(秋田市営バス)と秋田中央交通のものを特定してきた。
※昔の手書き時代は、手書きだから除く。またローマ字は割愛。
市営バス時代は写研「ナール」。
中央交通移管直後はニィス「JTCウインR」、近年はフォントワークス「スーラ」。秋北バスでも、少なくとも近年はスーラの表示板が多いようだ。

残すは羽後交通。
昔は手書きか活字か分からないが、味のある隷書体だった。21世紀に入った頃からだろうか、活字と思われる楷書系の毛筆書体に変わっていた。
羽後交通のバス停は、文字を縦方向に圧縮したものが多いこと、毛筆書体は各社各種いろいろ発売されていること、秋田市内では羽後交通のバス停が少なく、かつ特定しやすいひらがなバス停が少ないこと、あとは個人的に毛筆体にあまり興味がなかったこともあって、なかなか特定できないでいた。


前提として、市営バスや中央交通などでは、文字の形を切り抜いてシール貼りする、カッティングシール文字なのに対し、羽後交通の現行は表示板全面を(地と文字をいっしょに)印刷しているようだ。
それと、隷書でなくなった21世紀以降でも、時期によって異なる複数のフォントが使われている。秋田市内と由利本荘市本荘地区のバス停では3種類を確認。どれも微妙に似ていて、微妙に異なる。このことも特定を難しくさせた。以下3種類。
1.いちばん古いタイプ
おそらく隷書から変わった直後のもので、ローマ字なし。
(再掲)新屋駅入口

(再掲)新屋支所前

(再掲)美術工芸短大入口

(再掲)むつみ町
ローマ字がないせいもあるが、黒々と力強く、肉太で存在感がある。
分類としては「楷書」なのだろうが、偏の縦棒がはねていたり、「新」の左下が「木」でなく「ホ」であったりと、若干崩しているというか手書きっぽい雰囲気も漂わせている。「むつみ町」の「む」はかなり個性的。

秋田市内にはそこそこ残っているが、羽後交通本拠地の内陸南部各地や本荘の特に市街地では、交換されたのか少なそう。


2.英字なし末期~英字入り初期タイプ
秋田市では新屋支所前が日吉神社前に改称された、2009年秋に初確認。
(再掲)日吉神社前
秋田市内での設置は少ない。

秋田市外では英字なしバージョンも存在した。
由利本荘市、本荘市街地から国道105号を走ってきて、羽後岩谷駅方向へ右折してすぐにあるバス停、
「大谷」上下兼用のポールらしい
↑背景が銀色なのは劣化なのか、裏面は普通に白地で同じ内容だった。
「~方面行」の中に、廃止された路線もあり、隠していたテープが取れてしまっている。2013年に閉館した「天下の名湯」のうたい文句の「滝温泉」行きの路線もあった。市による道の駅発着のコミュニティーバスで存続していて、「(旧)滝温泉」として今も行くことはできるらしい(大谷は通らない)。

前の書体と比べると、カキッとしている。線は太めだが抑揚がなく、いかにも活字の楷書体。他の場面でもよく見かける気がする。
書体とは関係ないが、この世代(の一部?)は印刷の耐久性(耐候性)が低いようで、短期間で色あせする場合があった。


3.現行タイプ
2013年開学の美術大学前で、この書体を初確認。バス停名称だけでなく、行き先(○○方面行)も英字入り。
山王三丁目がこの書体だったから、2020年秋時点で現役。
(再掲)美術大学前

(再掲)ローマ字がないけど大野口も?

秋田市内では、山王三丁目改称前の「山王十字路」本荘行き側(前回参照)や、「茨島」からいつの間にか改称(2019年12月確認)された「ハローワーク秋田前」など、散発的に交換されている。
ハローワーク秋田前

羽後交通本拠地エリアでは、だいぶ増えているようだ。由利本荘市の場合。
道の駅おおうち
余談だが、道の駅おおうちー羽後岩谷駅前-大谷-組合病院-本荘と運行する路線バスがあるが、道の駅~本荘方面を乗る時は、道の駅では乗降せず、線路を渡った反対側の羽後岩谷駅前で乗降したほうが、乗車時間が短く、運賃が安くなるのでおすすめ。

本荘駅前(=羽後本荘駅)
方面の部分を使って「降車専用」と記しており、英訳は「an arrival platform」か。

線が一直線でなく、生き生きとした感じのする文字。最初の書体に似ているが、そこまでは強くなくクセも弱いか。基本的には標準的な楷書だが、営業所の「業」の下の「木」が「ホ」になっている。
以上の3種。


結果。
1.「織田特太楷書」もしくは「楷書体マール」【追記参照】
これの同定が難しかった。2書体の作者は同じ人だそうで酷似していて、資料が少なく、ともに現在入手困難な書体なので、どちらかは不明。
【2021年1月3日追記】詳しい方からコメントをいただいた。「楷書体マールを元に細部を整理・アレンジしたもの」ではないかとのこと。

織田特太楷書は、写研製品。ということで、写真植字機専用でパソコン版は出ていない。
楷書体マールは、キヤノンが発売していたパソコン用フォント。
「Canon FontGallery」という、日本語85書体などセットで1万5千円弱の製品を売っていたそうだ。楷書体マールのほか、イワタ教科書体(国語の教科書の光村教科書体とほぼ同一?。今はこれ単品で8千円)やサザエさんのキャスト・スタッフ表示や次回予告に2013年まで使われていた「キヤノンCaゴシック体」なども含まれていたから、かなりお買い得。
2007年初めにキヤノンがフォントから撤退したため、自社開発だったのかライセンスの関係か、いくつかのフォントは、どこからも発売されなくなってしまった。パソコンフォントでも、消滅してしまうケースもあるのだ。
【2021年1月3日追記】ところが、2020年12月に、楷書体マールがインターネットでダウンロード販売されるようになったとのコメントをいただいた。マールというのは出版社の社名だったそうで、同社から直接販売。単体で1万2千円。キヤノン時代よりはだいぶ高くなる(フォントとしては妥当だが)が、発売再開・復活である。

しかし、楷書体マールは今もたまに目にする。
テレビのバラエティー番組の字幕として。
「1億人の大質問!?笑ってコラえて!」や「ナニコレ珍百景」が好むようだ。太いし、独特の迫力があって、バラエティーに向いているかも。

サザエさんでも7年前まで使われていたわけだし、テレビ局のテロップ用パソコンには、大切にインストールされ続けているのだろうか。
【2021年1月3日追記】発売再開されたので、今後は使用頻度・分野が増えるかもしれない。羽後交通でも再起用されるかも?!


2.「DF超極太楷書体」(方面表示は「DF太楷書体」)
ダイナコムウェア製フォント。
台湾のメーカーであるせいか、日本語書体としては言わせてもらえば玉石混交で、イマイチなフォント(文字単体の形、文章にした時のそろい具合など)もあるが、楷書系は悪くないと思う。印刷物やテレビでもよく使われている。
他メーカーの楷書体は、どれもどこかクセがあるのに対し、機械的ではあるが素直な文字だからだと思う。
DF○○楷書体のバリエーションはとても多く、バス停名と行き先(○○方面行)では違う書体で、上記2書体(単なるウエイト違いではなく、線どうしが付く/離れるといった違いがある)だと思う。


3.「白舟(はくしゅう)極太楷書」
毛筆体に興味が薄いこともあって、聞いたこともなかった。現役のパソコン用フォント。
メーカーは兵庫県の「株式会社白舟書体」。元々印章店で、社内用として作っていた毛筆系フォントを、市販するようになったとか。
ハンコ屋さんだけに、異体字の外字対応はしっかりしているようだ。4ウエイトセットながら、8万円とけっこうなお値段。その一方、各書体の教育漢字限定版は、フリーでダウンロードできる(ので利用させてもらいました)。

なお、テレビ番組では、2020年春から始まった、BSテレ東「BS演歌の花道」で、曲名表示に使われていた。

今も使えるはずのDF書体をなぜやめたのか分からないし、その後継はシブい選択をしたもんだ。
伝統なのかこだわりなのか、羽後交通のバス停といえば毛筆体。昔の隷書体が懐かしく、再び見てみたい気がする。当分は白舟極太楷書で行くのだろうか。

【8日追記】羽後交通では、2018年頃にバス停のミニチュア「羽後交通ミニバス停」を3千円で発売していた(現在は不明)。
時刻表枠に名刺サイズの紙を入れることができるほか、表示板のバス停名と方面部分に好きな文字を入れることが可能。「羽後交通」は変えられないようだ。
台座や支柱(1本)の形状は実際と異なるが、表示板は比較的忠実で、羽後交通ロゴも同じ。でも、バス停名と方面は明朝体になってしまうようだ。
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今でも毎週 写研だゾ

2020-09-10 00:21:23 | 文字・書体
書体の話。石井丸ゴシック体に続き、今回も写研製品。
写真植字(写植)とそのトップ企業・写研が衰退した2020年現在でもなお、写研書体がコンスタントに出力され続けている分野と書体は、道路標識のナールで間違いないだろう。新しい道路開通やそれに伴う修正、古くなった標識の交換は、全国各地で常にそれなりの数があるだろうから。
出版や広告分野でも使われるが、どのくらい出力されているのかは、素人には想像できない。

それらと別に、ほぼ毎週、文字数は多くはないが、写研書体が新たに出力されている場面があるんだゾ。
その文字は、日本にいる多くの人が、見ようと思えば容易に見ることができるんだゾ。
その書体は、ナールや石井丸ゴシックとはまた違って独特だゾ。

その場面とは、
「クレヨンしんちゃんだゾ」(2020年5月16日放送)
テレビ朝日・シンエイ動画のアニメ「クレヨンしんちゃん」の、各話のサブタイトルコール「~ゾ」が、実は写研の書体。
僕はクレしんはよく見ているが、最近まで意識していなかった。言われてみれば、たしかに見覚えがあって、最近は見なくなっていた書体(≒写研書体)だ。
上の「クレヨンしんちゃんだゾ」は、キャラクターたちがクレヨンに扮するというか、擬人化した話。この書体で「クレヨンしんちゃん」と表示されたのは初めてではないだろうか。

ちなみに、「クレヨンしんちゃん」のタイトルそのもの(原作本は手書き文字?)も、別の写研書体。
アニメのタイトル
1985年発表の「ゴカール」という仮名のみの書体。漢字は「ゴナ」を組み合わせて使うことを前提にしていたようだ。※その後、ゴカールには漢字も追加された。この記事中ほど参照。


子どもの頃、前回の通り、テレビアニメ主題歌の字幕で、石井太丸ゴシック体とナールの存在を知り、その移り変わりをおぼろげながら認識していた。
それと同じ頃、一部でこのサブタイトルと同じ書体が使われていることも認識していた。
1985年のテレビ朝日「オバケのQ太郎(アニメ化3作目)」の歌詞の字幕がそう。
紙媒体でも、小学館の学年別雑誌の漫画の中で、吹き出しのセリフでない、例えば主人公の心象・独白みたいな所で使われていたと思う。
明朝体やゴシック体(という名前は知らなかったが)とは違い、手書きっぽい雰囲気があり、と言っても教科書体(という名前は知らなかったが)とは違って“上手な手書き文字”とも違うなと、思った。あっさりしているけれど、個性的な書体。

最近まで知らなかったが、「ファニー」という書体。

改めてクレヨンしんちゃんのサブタイトルで、ファニーを見てみる。
文字は同じであっても、時期によってその背景は16対9画面以降だけでも何度か変遷している。最近は、新型コロナウイルスで製作が滞った影響か、再放送作品も混ざっており、タイトル画面も複数が混在している。

「ちんあなごを見たいゾ」
上手くはないが丁寧に手書きした文字みたいな感じ?
1文字ごとの枠いっぱいにパーツを配した、大ぶりなデザイン。この点はナールと通じるかも。
「見」の下が長めのバランスが独特。
「ゾ」の濁点が下にあるのも珍しい。グヅブ、ひらがなの「ぞ」も同じ位置だそう。他のフォントでは「で」が下なのは普通、「ブ」で下にあるのはたまにあるが、それ以外では珍しいのでは。ただ、石井丸ゴでは「ど」の濁点が下だったが、この書体では上。

漢字は直線的で、ややぎこちなくも見える。漢字を習ったばかりの小学生が、一生懸命書いたみたい。
文字の細かいパーツのバランスが、他の書体や上手な手書き文字と違う所も多い。
漢字よりもひらがな・カタカナのほうが大きいようにも感じる。
「そ」は昔風の2画、「流」の「ム」は活字風

「夜」はちょっとヘン? 「観」の「見」はやはり下が長い、「測」の「貝」の下は「人」

「口(くち)」がカタカナより小さい

でもやはり手書きがモチーフなのかと思いきや…
「子」の2画目がまっすぐな縦棒=活字の形

「逆」このしんにょうは明らかに活字。「裁」の「衣」も
僕は小学生の頃から、しんにょうが上手く書けない。この形なら書きやすいが、漢字テストでこの形を書いたら、バツでしょう。
「遊」もだけど、この「子」は手書きっぽい?

ほかには、
「母」の右下が突き出ない平行四辺形
この「母」は活字でも珍しいが、ナール(梅や海なども)と同じ。【ファニーの「海」も同じ。末尾の追加画像参照】
あと、「ゃ」も大きめで、2画目と3画目の角度が揃っていない

「冷」の「令」が!
新元号「令和」発表の書で気になった(個人的には気に入らなかった)、「令」の下が「マ」じゃない「卩」に似た形。【10日補足・ファニーの場合、厳密には「マ」でなく「フ」と縦棒のような形。】
実際にファニーの「令」も同じ形だそう。
【10日追記】大きい「や」も小さい「ゃ」と同じ傾向。それにしてもとてもデカく見える。

「万年筆」はとても直線的
「様」どうでしょう?
右下
「様」の右下が「水」になっている。水の左側を「フ」と1画で書いているような。【末尾追加画像も参照】
この部分の部首名は「したみず」だそうだが、小学校3年生で、ここは2画に分けるもので、つなげて「フ」は誤りと習う。明朝体やゴシック体の活字であっても「水」にはなっていない。
かなり特徴的、というか間違いでは???
※ただし旧字体(環境によって表示できないかもしれませんが「樣」)では、「羊」と「永」を上下に並べるそうで、それならば「フ」だけど。

ほか、ひらがなでは「さ」「き」は最後2画がつながって活字的。なお、「そ」のように一般的に許容される手書き文字で2通りの形がある「ゆ」は2画(教科書体と同じ)、「ふ」は3画(教科書体では4画)。
クレしんサブタイトルでは分かりにくいが、長い文章にすると、文字全体が右に少し傾いている。


ということで、ファニー書体は、ペン字風フォントとか、線の太さを一定にしたユニバーサルデザインの教科書体などとは違う。手書き文字に似せることを追求するとか、教科書体的位置付けの書体ではない。
どちらかと言えば、今で言うポップ体に近い感じもするが、線は細い(ウエイト=太さ違いはなく、この1種類のみ)。

ファニーは1972年発表。作者は違うが、ナールと同年。
写研のファニーはあまり表立った存在ではなかったようだ。ネット上のごく一部の情報によれば、写研の書体を一覧にした「書体見本帳」が、定期的に印刷屋に配られるそうだが、1972年の発表後、早い段階で載らなくなったという。1973年に、別会社が別デザインの「ファニー」書体を発表したらしく、そういう絡みがあるのではないかとかなんとか。

ということは、1970年代に存在していた手動の写植機のみで扱えた書体で、後の電算写植機ではファニーは使えなかったのかもしれない。
一方で、写植機にセットするファニーの文字盤の画像は今もネット上に少なくないし、上記の通り1980~1990年代でもよく使われていた。商品としては目立たなくても、息は長かったことになる。

テレビアニメでは、上記オバQのほか、1988年の日本テレビ「美味しんぼ」でも歌詞に使われていた。作品のイメージと合わないような気もするけど…
1992年のクレしんでも、当初は歌詞に使われていた。桜っ子クラブさくら組などの。
そう言えば、この3作は、いずれもシンエイ動画製作。シンエイ動画が好んだ書体なのか?


クレしんのサブタイトルでは、背景は変わっても、1992年からファニーを使い続けていた、ような気がしたのだが…
コロナによる停滞と、ひろし役だった藤原啓治さんが亡くなったことを受け、4対3画面だった頃の作品が放送され、見ることができた。(CSのテレ朝チャンネルでは、恒常的に昔のものを放送中)
「父ちゃんは日曜も大変だゾ」2000年6月16日
また違う背景でファニー。さらにさかのぼると、
「父ちゃんの会社へ行くゾ」1993年3月29日
そう言えば最初期は手書き文字だった。でも、ふりがなはファニーだ。
昔はアニメのサブタイトルは手書きが普通だった。ふりがなだけ写植文字を入れるのは、かえって大変そう。
【2023年5月20日追記・1999年11月12日放送だと思われる「嵐を呼ぶ園児 酢乙女あい登場だゾ」は、上の画像の1993年、2000年と同じピンク系の背景に、赤い文字のファニー。】

なお、シンエイ動画では大山のぶ代版「ドラえもん」は、初回から2005年の最後まで手書きだったと思う。今の水田わさび版ではスーラ。

クレしんが、手書きをやめてファニーに代わった時期は不明。
ネット上の情報には、2010年代前半頃の一時期の短期間スーラだったとか、他のデジタルフォントを使っていた時期があったとの情報があるが、詳細不明。
また、放送作をDVDなどソフト化する時は、サブタイトル画面を新たなもの(青いDF特太ゴシック体のものを見たことがある)に差し替えることもある感じもする。

上のほうの画像の通り、現在はタイトルの下に製作スタッフが表示されるようになり、それはスーラ。そこまでファニーにこだわるなら、ナールにでもすれば…

「クレヨンしんちゃんのサブタイトルといえばファニー」なのは、事実上間違いないとは思うが、クレヨンしんちゃんのイメージと一致する書体なのかと考えると、どうなんだろう。
初期の手書きは、クレヨンで書いたような太い文字で、いかにもクレヨンしんちゃん。それと比べると、ファニーは少し大人びて(小学生くらい?)見え、幼稚園児が主人公のアニメっぽくはないかも。あるいはファニーにしても、仮にもっと太いウエイトの書体があれば、ふさわしかったかも(上記の通りPOP書体としても使えそう)。
今の各社のデジタルフォントを探せば、もっとクレヨンしんちゃんらしい文字がありそうだけど…

写研書体は、使用文字数に応じて使用料金を取られる従量制なのだそう。毎回必ず使う「ゾ」も毎回課金だろうか。
デジタル製作の今のアニメで使うには、それをIllustratorか何かでアウトライン化とかするのだろう(知ったかぶり)。そんな費用と手間をかけてまで、ファニーを使い続ける意味はあるのか。

番外編的なお話では、
これはモリサワ「新ゴ」【12日コメントで指摘いただき訂正】フォントワークス「ニューロダンUB」を斜めにしたもののはず
写研にこだわるなら、↑これも「ゴナ」にしたら…
製作側としては、写研や写植の文字にこだわっているわけではなく、ファニーという書体にこだわっているのだろう。

地味な存在ながら個性的なファニー。いつまでクレヨンしんちゃんで見られるだろう。
【2021年5月8日追記】2021年春から、サブタイトル画面の背景がまた変わって、背景や動画にバリエーションがあり、スタッフ名が出ないものになったが、書体は引き続きファニー。
※ファニーに罪はないが、2023年にはサブタイトルに誤植があった

【2023年8月12日放送分より画像追加】
子 様 海
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書道展の課題と書体

2020-08-28 00:13:11 | 文字・書体
3年ほど前に気付き、以降毎年今頃に気になる新聞広告がある。
秋田魁新報より
秋田魁新報社主催の「秋田書道展覧会」というイベントの作品募集。2020年で第83回だそうで、歴史があるようだ。
秋田県在住または出身者の、小学生から大人までが出品(有料)できる。毛筆の作品展だが、小学校1・2年には硬筆部門もある。
課題(書く文字)や書体は、「小学生の部」は指定が多いが、中、高、一般と上がるにつれ自由度が上がる。

書を習ったこともなければ、応募するつもりもないけれど、その応募規定(要項)を見ていたら、いくつかの点が気になってしまった。書道をやっていて出品する方々には常識なんだろうけど。
なお、応募規定は、新聞掲載とホームページ掲載のPDFファイルでは、書式が大きく異なり、やや戸惑う。
新聞より抜粋
「課題」は、小学生の部では、小学校「書写」教科の各学年の教科書からお題を指定。
ただし、小学校低学年の書写は硬筆のみで毛筆を扱わないので、その半紙部門に限り、1年「うた」、2年「こうま」を指定。

書写の教科書は、教科書出版社2社分を示している。「光村図書」と「教育出版」。
書写の出版社はほかにもある(例えば東京書籍)のに、なぜこの2社だけ?
光村は全国的にシェアが高く、秋田市も長らく光村を採択。昔は秋田大学教育文化学部附属小学校は東京書籍だったかな。
ということは、県内どこかの地域では教育出版を採択しているのかと思って調べた。

ところが、少なくとも今年度は、秋大附小を含む秋田県内すべての地域が光村図書を採択していた。
どうして、採択されていない出版社、しかも1社だけを課題とするのだろう。

【2021年8月6日追記】初回アップ時に何を見たのか忘れたが、追記日時点で秋田県のサイトに掲載されている、「令和2年度使用小学校教科用図書及び中学校教科用図書(「特別の教科 道徳」を除く)県内採択地区等採択結果(コンテンツ番号44384)」を見たところ、「湯沢・雄勝」1地域だけで教育出版を採択していました。以下は変更前のままの文章です。
なお、湯沢・雄勝以外の各地域(秋大附小を含む)は光村。また、書写でない国語の教科書は、湯沢・雄勝を含めて全地域が光村。国語と書写が違う出版社だと、硬筆の例文などで若干、統一感がないことになりそうだけど、いいのか。(以上追記)


規定には、自分が通う学校の教科書会社を課題にしろとは書いていない。
また、PDF版要項には「※書写教科書の入手方法は秋田協同書籍(電話番号)へお問い合わせ下さい。」との案内も。
つまり、「あえて教育出版の教科書を買って、課題に使ってもいい」ようだ。
【28日追記】教科書販売は、各県1つ程度の「特約供給所」と、複数ある書店や文具店である「取次供給所」が行う。
秋田市内の取次供給所は、秋田協同書籍と加賀屋書店。昨年度までは店を閉めた「のてや」も。
秋田県の特約供給所は「秋田県教育図書株式会社」とする情報もあるが、現在は秋田協同書籍が行っているらしい。教育図書と協同書籍は、所在地が1番地違いだったようで、関係がありそう。
採択されている教科書であれば、紛失や転入に備えて供給所に在庫があるはずだが、採択されていない教育出版の書写は、取り寄せになりそう。そんなこともあって、特約供給所である秋田協同書籍を掲載しているのだろう。各取次供給所でも取り寄せてもらえそうだけど。(以上追記)

2社で共通のお題なのは、4年の「左右」だけ。6年は同じかと思いきや、光村「旅立ちの朝」、教育出版「旅立ちの時」で1文字違い。
5年は光村「近づく春」、教育出版「考える子」。例えばしんにょうが書きづらいから、教育出版で…とかいう人がいるのかな。
あえて教育出版の課題で出品する人は、どのくらいいるだろうか。


低学年の硬筆は、40文字前後の課題。
ホームページ掲載の様式(マス目)を、各自A4に印刷したものに書いて提出。「紙質は指定しません。」。

筆記具が指定されていないのが気になった。。
小学校の硬筆では鉛筆を多用するが、低学年でもフェルトペンも使ったかと思う。硬筆=鉛筆ではない。
出品はボールペンや万年筆でもいいのだろうか。


いちばん気になるのは、小学生の部で指定されている「書体」。
新聞より
中学生の部では「楷書」や「行書」の指定で、毛筆でいう書体とはそういうことだから、何の疑問もない。
一方、小学生は、新聞広告では硬筆は「教科書より」、毛筆は「教科書体」とされている。
PDFでは、硬筆は言及がなく、毛筆は「書体は教科書体によります(書写による許容字体は認めます)。」。
PDFより

前提として、小学校で書くのは硬筆毛筆とも楷書だけだから、それで書けということなのは分かる。小学校では「楷書」という言葉も概念も習わないと思うから、その表現方法が難しいのだろう。(条幅部門だけは小学生でも自由書体だから、行書などでもいいのか)
なお、「書写による許容字体は認めます」とは、木偏の縦棒の下が左上にはねるとか、「保」の「木」が「ホ」になるといったものか。

だからといって、毛筆を「教科書体」で書けというのが、引っかかる。
教科書体というのは、楷書の手書き文字がベースで、手書き文字によく似ているが、あくまでも活字の書体。
教科書体と同じくくりに含まれるのは、行書や楷書ではなく、明朝体やゴシック体のほうだ。書道で、あるいは筆で明朝体やゴシック体を書くことはありえない。
「活字体の文字を手書きする」というのは、「書道」ではなくレタリングとか(西洋の)カリグラフィーになってしまうのでは?
また、昔の教科書体は毛筆っぽかったが、近年は硬筆寄りのデザインの教科書体が一般的で、それを毛筆で書くのは、特に無理があるだろう。

さらに最近は、弱視などの体質やデジタル教科書対応として、線の太さの変化を均一にして、サインペンで書いたような、ユニバーサルデザインの教科書体もできて、Windows10には標準搭載されるようになった。
「UD デジタル 教科書体」シリーズ。モリサワ製だそう
これで出品してもいいのだろうか。筆でやろうと思ったら、けっこう難しいかも。


硬筆のほうは、新聞では「教科書より」と微妙な言い回し。
書写の教科書の硬筆のお手本は、教科書体にかなり似ているが、比べると違う文字(光村図書では我々の昭和末期も現在も、変わっていないようだ)。実際に手書きしているのだろうか。それにならえと言いたいのだろう。
「教科書体」よりは理屈が通りそうで、毛筆部門もこの表記でいいような気もするけれど、伝わりづらいかな。

なお、この点は、光村図書ホームページ「書写の疑問,すべて解決!」>「書き文字と活字は,なぜ違うのか(https://www.mitsumura-tosho.co.jp/kyokasho/s_shosha/gimon/gimon_02.html)」に説明があった。
「教科書体活字は,小学校学習指導要領の別表で標準とされている文字をもとに作られた書体」「明朝体やゴシック体と違って,より書き文字に近い形」。
一方、「書写教科書での書き文字は,(注・教科書体活字のように)正方形の枠の中に文字を収めるということよりも,筆使いや点画・部分の組み立て方,文字の中心や外形を整えることに重点を置いています。」。
とあった。やはり、活字の教科書体は手書き文字と同一ではない。


教科書体のお手本をそっくりまねるのでなく、小学校で習う文字の形を踏まえながら、自分の文字として書きなさい、ということなのかもしれない。よりふさわしい言い回しがないものか。
書を専門とする人たちから見れば、どんなもんなんでしょう。


ちなみに、出展作品は別として、活字の教科書体をお手本に文字を書くのは、悪いことではないと思う。
僕は、光村教科書体(=イワタ教科書体?)やモリサワの(従来の)教科書体を意識するようにしたら、ちょっとだけ上手く・きれいに文字を書けるようになった【28日追記・上手いきれいよりも、読み(読まれ)やすく、正しい文字、か。それは指導要領通りの、おもしろみがない字かもしれないが】と思っている。小学生の頃は、手本のどこを見て字を書いていたのかと、今さらながら恥ずかしい。
ユニバーサルデザインの教科書体を手本にしても大丈夫でしょう。

【翌2021年の第84回】7月23日付紙面で、初確認。新聞告知では、書体指定や手本の変更はほぼなし。半紙の課題のうち、手本が示される小学校低学年と中学生だけが、別の文字に差し替わっている。順に「うし」「げんき」「未来都市」「平和活動」「将来展望」。
【2022年も、変化はなさそう。課題は確認忘れ。】
【2023年の第86回】目立った変更なし。課題は「しろ」「まつり」「美術文化」「自然科学」「千峰紅葉村」。



【2021年12月15日追記・正月の書き初めについて】この書道展と別に、正月に書き初め大会も行われている。2022年正月に「第13回 秋田県新春書初め大会」が開催されることが、魁紙面に広告扱いで出ていた。
新型コロナウイルス対策として、各自書いたものを提出する展覧会方式で行われるが、本来(2019年以前)は、県立武道館に集まって一斉に書いていた(雑煮かお汁粉が出たそうだ)。
たしか昭和から、冬休みの最後のほうに、子どもたちがそのようにするイベントがあったはずだが、回数が一致しないし、当時は武道館もなく、別物だったのだろうか。→そういう催しを「席書会/席書大会」と呼ぶのだった

13回 書初め大会は、秋田魁新報社・秋田県書道連盟・秋田県総合公社が主催。総合公社は武道館の指定管理者。問い合わせ先は秋田魁新報社事業部。
「幼児および小学生」から「大学生・一般」まで、世代で4部門に分かれており、いずれも課題は自由(と言いながら、幼児および小学生と中学生では学年ごとに2つずつ例示している)。
高校生以上は書体も自由。中学生は「書体:漢字は楷書または行書、仮名はそれに調和する平仮名」、幼児および小学生は「字体等:字体は書写教科書の字体による」。
「書体」「字体」の違いは不明だが、こちらは、おかしさを感じない言い回し。ただ、幼児(未就学ということでしょう)は教科書がないだろうから、そこはあいまい。
どちらも魁が関わるのだし、秋田書道展覧会のほうもそろえればいいのに。
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ローソンATMと石井丸ゴシック

2020-07-14 00:26:58 | 文字・書体
以前からたまに出てくるように、活字の書体、フォントにも興味がある。最近、昔の写植機時代の文字をいろいろ調べていたら、さらにおもしろくなってきた。
そこで、“素人の横好き”ですが、実際の文字やネットの情報を参考にした「文字」カテゴリーを新設します。後で過去の記事も、カテゴリー変更して組み入れるかもしれません。
なお、厳密には「書体」と「(デジタル)フォント」の言葉の意味は違うようですが、当ブログではほぼ同義として扱います。誤解や間違いもあるでしょうから、ご承知おきください。


文字による印刷物を作るのに、昔は、金属製の1文字ずつのハンコみたいな活字を手で拾って原稿を作っていた。宮沢賢治「銀河鉄道の夜」の冒頭で、ジョバンニがその活字拾いのアルバイトをするシーンがあり、アニメ映画版で見たのを覚えている。

その後に現れたのが「写真植字機(写植)」。文字の元があって、それを1文字ずつ写真撮影して印刷物にするようなもの。同じ文字が何度出てきても活字が不足することはないし、レンズをズームして文字サイズも変えられる。昭和初め頃に日本で実用化され、普及した。
後にコンピューター(ワークステーション)でレイアウトなども行える「電算写植」ができて、新聞作成にも採用。昔の秋田魁新報のテレビCMで写っていた、白黒反転した新聞紙面がそれだろう。
しかし、1990年代にはパソコンを使ったDTPが登場し、2000年代以降普及して、引き換えに写植は衰退した。

写植機を開発し、最大手メーカーだったのが「写研」。そこから独立した二番手メーカーが「モリサワ」。
モリサワは、DTP化の波に上手く乗って、写植書体をパソコンフォント化するなど写研を抜き、今も印刷に欠かせない大手。パソコンで使えるから、素人でも製品を購入できるようになった。

一方、写研はパソコン対応をかたくなに拒み続けてきた。【14日補足・機械と文字を抱き合わせでセットで扱うことしか認めず、文字だけを切り離して共通規格(=デジタルフォント)化することを拒んでいるということになる。】
写研の写植文字には、今も細々ながら一定の需要はあり、会社は存続しているという。【14日補足・写植機にISDN回線がつながっていて、使用量(文字数?)に応じて料金を徴収するシステムだそうで、今もある程度の収入はあるのでしょう。】
2011年には写研が、写植書体をパソコン向けにしたフォントを発売準備中という話が出た(見本市で発表)そうだが、それっきり【ところが2021年に! すぐ下のリンク参照】。
ワンマン経営だったという話もあった、創業者の娘の社長は、2018年に92歳で亡くなった。

今なお、デザイン・印刷関係者(そして一部の素人)からは、写研書体をパソコンで使えるようにしてほしいという声も根強いが、一方で、各社の多様なフォントが流通するようになり、業界でも写植を知らない世代も増える中、今さら発売しても…ではないだろうか。※ところが2021年に

※電算写植では、デジタルフォント化した書体を扱う機種もあったそうで、「写研書体のデジタル化」は既に行われているようだ。それを「パソコンで使える製品」としては販売されていないということになる。
また、平成初期に当時の通商産業省系団体が主導して作った「平成書体」シリーズのうち、「平成丸ゴシック体」は写研が開発していて、現在、パソコンで使える唯一の写研書体ということになる。写植用書体ではないし、写研自身が発売しているわけではないが。なお、アドビにユーザー登録して「Adobe Creative Cloud」を利用(要インストール)する等、平成書体は無料~低料金で使うことが可能。


2020年現在、いちばん多く目にする写研書体は丸ゴシック体「ナール」だろう。かつては印刷物やテレビの字幕等、あらゆる場所で目にしたが、今の活躍場所は道路の案内標識。
以前触れたように、1986年の法改正でナールが採用された。ただし、法令で指定しているわけではなく、国や各自治体の指針で決まっている程度らしい。
例えば、今春開通した、国道7号のバイパス「下浜道路」内の標識もナール。今でも写植機がどこかにあって、その文字を標識にしていることになる。手間になるかもしれないし、費用(=税金)もかかり増しになっていないのだろうか。
高速道路では、パソコンフォントに変わったように、そろそろ見直してもいいのではないだろうか。


ここから本題。
ナールは1972年に作られたそうだけど、僕がナールを意識するようになったのは、1980年代中頃(道路標識採用より少し前)。テレビの字幕などでは、その頃から多用されるようになったかもしれない。
それより以前に、テレビの字幕でよく見て気になっていた書体があって、それも写研書体であることを、わりと最近知った。
改めて見回せば、今でも、多少はその文字を見ることができる。

1978年に日本アニメーションが制作し、NHKが放送した「未来少年コナン」というテレビアニメがある。宮崎駿、高畑勲らが手がけ、名作との声も多い。後にCSや民放でも放送され、僕は2000年代に初めて見た。なかなかおもしろい。
2012年にデジタルリマスターされ、現在は新型コロナウイルスで他番組製作が滞った埋め合わせとして、日曜深夜にNHKで再放送中。
エンディング。リマスターできれいだけど、画面サイズは横長にされた
未来少年コナンのオープニングとエンディングでも、キャスト・スタッフクレジットと歌詞として、その書体が使われている。
歌も名曲
なお、主題歌の曲名は、ナール(道路標識よりも太い?)。オープニング冒頭の原作の表示は、角ゴシック体。

僕がこの文字を意識したのは、このようなアニメのクレジットで。
1970年代の例えば「天才バカボン」などでは手書きだったが、その後で、この書体がよく使われ、1980年代にはナールにシフトしていった流れだと思う。
※後年の再放送やソフトでは、オープニング・エンディングを本編と違う時期のものに差し替えたり、字幕を入れ直しているものがある。
同じ日本アニメーションのフジテレビ世界名作劇場「家族ロビンソン漂流記 ふしぎな島のフローネ」でも、未来少年コナンとまったく同一の使い方(曲名、原作の使い分けも)。

テレビ朝日・シンエイ動画 「ドラえもん」も、たぶん1984年まではこの書体で、エンディングが「ぼくたち地球人」に変わった時にナールに変更された。
同じくテレ朝・シンエイで1983年から放送された「パーマン」も、少なくとも歌詞はこの書体で、そこでこの書体を意識させられた。「とおくでよんでる」の「と」。1画目が2画目に突き抜けているのに引きつけられた。
手書きや他の書体でもなくはないが多くはない、突き抜けた「と」。
あと、全体に柔らかくほわーっとしたような雰囲気も、他の書体(という概念を当時は知らなかったが)と違うと感じた。
当時を知る人はなんとなくご記憶かもしれないし、僕はとても懐かしさを覚える書体。

中学校の美術では明朝体と(角)ゴシック体だけで、こんな文字は習わず。ナールは、資料集に参考例としてちょっとだけ出ていた。
その後、ワープロ専用機の書体として、「丸ゴシック体」が搭載されるようになり、そういう書体群があることを知った。
この書体やそしてナールも、丸ゴシック体のくくりに含まれそうだなと思ったものの、当時はメーカーで書体が違うことなど知らなかったので、まだいまいちよく分からなかった。
2000年前後にパソコンフォントを知るようになっても、写研なのだからあるわけがなかった。

そして2010年前後、
(再掲)2018年の秋田県種苗交換会テレビCMより
一瞬、あの書体かと思ってしまうフォントを、広告などでちらほら見かけるようになった。似ているが複数のフォントがある。
ただ、細部はあの書体とは違い、独特の丸っこさがない。そもそも「と」が突き抜けていない。
上の画像はフォントワークス製「筑紫A丸ゴシック」。ほかに大日本印刷(モリサワ等が販売)「秀英丸ゴシック」も似た雰囲気。仮名だけだとモリサワ「丸アンチック」も。

その後、写植に詳しい方のサイトなどを拝見して、やっと、その書体名を知ることになる。
「石井太丸ゴシック体」か「石井中丸ゴシック体」。1958年と1956年に発表された書体。「石井」は写研創業者。
「石井細丸ゴシック体」も存在するが、「と」が突き抜けない。

「丸ゴシック体」という書体名は戦前から存在したがいったん途切れており、戦後に改めて広まった丸ゴシック体の源流が、この石井丸ゴシックということだそう。
でも、繰り返しだけど、後年の各種丸ゴシック体とは違う、柔らかさ。クセが強くなく、線はあっさりしている。
各文字内でパーツが中央に寄って(ふところが狭いと呼ぶそうだ)、ひらがなは「う」「く」など、カーブや折れが浅い。この点では視認性が劣るかも(ナールが勝る)。
ほかには「た」「な」の縦棒が反るようにカーブしていたり【15日追記・下画像の「れ」の縦も】、「ど」の濁点が下寄りで2画目の内側に収まっていたりが特徴的。
未来少年コナンオープニングで「ど」が出る
書体の名前は分かったが、今はもう(容易には)使えないとは寂しい。
ナールが今も出力できるのならば、「文字盤」と呼ぶらしい写植機にセットする各書体の原盤があれば、石井丸ゴも今も出力できるはず。でも、新しいものは見たことがない(書籍のポスターなど、近年の使用例もなくはないそうだ)。

ただ、昔はよく使われていただけに、再放送のテレビ番組のように、昔出力されたのが今も残るっている使用例なら、けっこう見かける。
また、大量に作り置きして、何年も使い続けるような表示板類では、写植衰退後に設置されたと思われる場所でも、たまに使われている。
押しボタン式信号機のボタン箱近くの「信号が青になってから~」表示板や「おまちください」ランプとか、古めの路線バス車内の「お降りの方はこのボタンを~」「危険ですからステップに立たないで~」プレートとか。※土地やメーカーにより違う。

1997年にできた、現・秋田駅舎。
自由通路の東口側と駅前交番付近、それに改札内通路と各ホームのエレベーターのボタンの横にある「ご注意」の金属板。
ここに石井丸ゴ
エレベーターの外にあるのに、非常ボタンの説明をしているのは、親切なんだろうか。
当時としても、このような注意書きを設置したエレベーターは少なかったと思うが、公共性の高い場所ということで、設置したのだろうか。下には点字もある。【15日補足・エレベーターメーカーが設置したのかどうか分からないが、秋田駅のエレベーターは三菱電機製だった。参考まで。】
2000年に延長された自由通路西端のエレベーターにはなく、近年、エレベーター周りがリニューアルされた改札内の一部でも撤去された。

国鉄~JRの鉄道車内の「非常用ドアコック」の説明パネル。車両によっては手書きだったり、モリサワの写植丸ゴシック体のものもあるが、
JR東日本新潟支社のキハ110-214(1993年製)は、
石井丸ゴ(太か中かは判断できません)
ちなみに、秋田支社の男鹿線用キハ40 575(1980年製だが、後年の改造時等に設置された可能性あり)は、
ナール。「係員の指示が~」の2行がない


最後に、最近知ってびっくりしたもの。
「ご利用明細」
ローソンに設置されている「ローソン銀行」のATMを、先月、考えてみれば初めて使った。
裏面「ご案内」
出てきた利用明細票をよく見て目を疑った。石井丸ゴでは?!

今は、白い用紙をセットして、発行時に項目名や罫線もまとめて印字するATMが多いが、これは昔ながらの線や項目をあらかじめ印刷する方式の明細票だった。裏面には注意事項など「ご案内」も印刷される。地方銀行では今も一般的だが、コンビニATMでは珍しいのでは?
ピンク印字の表面も、グレー印字の裏面も、すべて石井丸ゴ。タイトルが太丸、項目名や本文が中丸かな?
書体以前に、表にも裏にも「ローソン銀行」とどこにも表記されないのは、ATM明細として珍しいと思う。これじゃあ、問い合わせる時に困りそう。

ローソン銀行は2018年、準備段階でも2016年発足という新しい企業だが、銀行名表記がないということは、それ以前から存在した用紙の可能性がある。
ローソンに独自ATMが置かれたのは2001年だそうだし、あるいは同じ機種のATMを使う、他の銀行と共通の用紙なのかもしれない。写植による原稿としては相当以前に作成され、版を重ねて今も残っているのかもしれない。残る時は残るもんだ。

変える必要性は高くはないと思うが、印刷の色と相まって、この書体では少々見づらい気もする。
それ以前に、別のローソン銀行ATMでは、真っ白い紙方式(裏面案内なし)だったから、ATM自体が交換されるほうが先かも。
ネット銀行・コンビニATMという21世紀に広まったものに、写研書体・石井丸ゴという20世紀で役割をほぼ終えたものが共存しているのだった。
【15日追記】パソコン用フォントとして、他社から石井丸ゴシック体に似た製品が相次いで発売されていることは、こういう古典的な(?)丸ゴシック体も必要とされているということだ。実際、昔のような掲示・表示類ではほぼ見ないので用途は狭まっているものの、出版物や広告ではよく使われ、需要は維持されている。

秋田市内でたまに見かける石井丸ゴについて、さらに別の写研書体について、いずれまた

【19日追記】フジテレビ「ひらけ!ポンキッキ」の歌の映像(アニメ)に表示される歌詞でも、1970年代後半には石井太丸ゴシック体が、大きめのサイズで使われていた。
1975年「およげたいやきくん」、1976年「パタパタママ」と「ホネホネロック」、1978年「まる・さんかく・しかく」と「パップラドンカルメ」では使われている。
なお、「~たいやきくん」のカップリング曲(B面だが実質両A面扱い)の「いっぽんでもニンジン」の(ここ数十年で見たことがある)映像は、アニメが鮮明なので後年に作られたのか、書体も小さめのナール。
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