交通信号機の周りには、その信号についての情報を知らせる看板が付いていることがある。「時差式」、「押ボタン式」、「歩車分離式」などがあるが、各都道府県によって形式や文言が微妙に違う。(地点名表示は道路管理者管轄、その他は信号機と同じく警察管轄)
秋田県内には、こんなものがある。左の表示板、何を意味するかお分かりでしょうか?
「
視覚障害者付加装置付」
長い! 文字の高さと間隔を詰めてビチビチで読みにくい。それ以前に「視覚障害者付加装置」とは何ぞや?
運転中にこんなものが出現しても、その意味を理解できるだろうか?
ちなみにこの交差点の場合、全方向の歩行者用信号が一斉に青になる「歩車分離式信号」でもあるが、歩車分離が未設置の県もあるようなので、そこから来たドライバーなどは漢字ばかりで見慣れない内容の2枚の看板にチンプンカンプンになりそう。
本題の「視覚障害者付加装置」とは、歩行者用信号機が青になると音が出る信号機のこと。「盲人用信号」「視覚障害者用信号」「音響式信号」といえば多くの方がお分かりだと思う。つまりメロディや鳥の鳴き声が出る信号機のこと。
秋田県では長らく「
盲人用信号付」という表記を採用していて、現在もまだ残っている所もあるが、少しずつ「
視覚障害者用信号付」に変わっていた。と思っていたら最近、「
視覚障害者付加装置付」にさらに変化しているのを発見した次第。まだ秋田市内の2か所の交差点でしか確認していない。
実はこの信号に付属する音の出るシステムの正式名称が「視覚障害者付加装置」らしい(もっと正しくは「音響式視覚障害者用交通信号付加装置」)。
「盲人」が「視覚障害者」に変わったのは全国的・社会的な変化だから別として、「~用信号」と「~付加装置」という、意味の違いとしては些細なものを、なぜわざわざ文字数が多くつぶれた文字で読みにくく、素人には分かりにくい表記にしたのだろう。「付加装置付」と「付」の字が2度も出てきてまわりくどい。東京都などは「音響式」という、簡潔明瞭な表示にしているのに。
警察内部でならともかく、一般人も専門用語を強要させられている。運転免許更新講習なんかで教えてるのだろうか?
というかそもそも車用信号機に歩行者用信号機が音響式であることを明示する意味はあるのだろうか。
音響式装置のない交差点を視覚障害の歩行者が横断することは当然ある。昔と違って音響装置の設置箇所は増えているし、一般人ドライバーの意識も昔よりは向上しているはず。何よりも、障害があろうとなかろうと、車両は歩行者を妨げてはならないはずだから。
各都道府県でなく警察庁のレベルだろうが、見直しをしてもいい時期なのかもしれない。
ところで、
秋田駅そばの「久保田町」交差点
5つも標識があり、一方通行の規制標識・地点名・歩車分離式・時差式・視覚障害者付加装置、を示している。やはり「視覚障害者付加装置付」は際だって文字が小さく読みづらい。
情報が多すぎる。見落としそうだし、真面目に読もうとすれば事故にもなりかねないのでは?
一方、
1つ東隣の秋田駅の真ん前の無名交差点(名前がないのもなんとかならんのか)
1つ看板があるが、
「 」?
こちらは情報がなさすぎる。実は光線状況などでわずかに痕跡が判読でき、「盲人用信号付」と書かれている(いた)ようだ。上記の通り、なくても大問題にはならない表示だが、ドライバーの混乱を招くし、場所柄、駅に降り立った観光客が真っ先に目にする信号であり、テレビの街頭風景の映像でもたまに映るから見栄えが悪い。数年前に信号機をLED化した際など、表示板を更新する機会はあったはず。節約するのもいいけど、本来の機能を発揮できないモノをそのままにしておくのはいいことだとは思えない。
最後に、音響式信号機の音について。
信号機の規格は、警察庁の方針のようなものはあるが、実際に詳細を決定するのは各県警なので、県により微妙に異なる。またいくつかのメーカーがあるので、多少違う。音も同じ。
昔は「通りゃんせ」か「故郷の空」のメロディが流れていたが、現在は全国的に「ピヨ」か「カッコー」という鳥の声に変わりつつある。秋田市内ではすべてが鳥の声に変わっている。青森県弘前市では、一部でメロディが残っている(青森県の更新が遅いのかもしれないし、県庁所在地でないから後回しなのかもしれない)。
なぜ、鳥の声に変わったのかと言えば、ユーザーである視覚障害者の声を聞いたからなのだろうが、最近、秋田市内の一部交差点(南大通りの一部、ニューシティ前など)では、鳥の声ならではの鳴らし方をしている。
それは「
異種鳴き交わし」方式という鳴らし方。 ※gif画像のアニメでご説明します。見にくい点はご了承ください。
昔のメロディ式では、当然ながら横断歩道両側の信号機のスピーカーから同じ音が同時に鳴っていた。初期の鳥の声も同様で「ピヨ ピヨ」という具合。
両側から同じ音
しかし、異種鳴き交わし式では、向かい合ったスピーカーが交互に音を出し、しかもそれぞれが別の音。
ちょっと聞いただけでは同じ音に思えてしまうが、よく耳を澄ますと、
「ピヨ ピヨ」ではなく「
ピヨ/ピピヨ」、「カッコー」の方は「
カッコー/カッカコー」というように。人によって聞こえ方は違うかもしれないが、音源の位置と鳴き方が異なるのは分かると思う。
交互に別の音(これはイメージ画像であり、写真の交差点の実際とは異なります)
異種鳴き交わし式の歩車分離式交差点(ニューシティ前など)では「
ピヨ/ピピヨ/カッコー/カッカコー」と4方向のスピーカーが順番に音を出している。
視覚障害を持つ方々は、聴覚が研ぎ澄まされていることもあって、この方式なら従来よりも確実に方向や位置の感覚をつかむことができ、安全な歩行につながるようだ。また、信号機が赤に変わる時(点滅時)に「ピーポーピーポー」と鳴るのも分かりやすい。より一層の普及を期待したい。
ただ、ピヨとカッコーは、同じ町の中で南北と東西方向で統一されているはずだが、秋田市内ではそうでない交差点があるようだ。ユーザーの皆さんが分かっていれば問題はないかもしれないが、直感的でないから統一した方がよさそうな気もする。
ほかにも秋田市の元祖スクランブル交差点である木内前の交差点では、カッコーの側が無音だったり、竿燈大通りなどでは赤信号に変わる30秒くらいも前に鳴くのをやめてしまったりする。つまり、青信号なのに、音だけを頼りにしている人にとっては渡れない(赤信号だと思ってしまう)状況になっているのも気になる。
警察庁が異種鳴き交わしにするように各県警に通達を出しているようなので、時が経てば更新されるのだろうが、頼りにしている人たちが困らないようにしてほしい。
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【2014年5月13日追記】
秋田市内でメロディから鳥の声に変わった(変わり始めた)時期が分かった。
1994年10月10日付「広報あきた」1330号「市内7か所の信号機のメロディーが「ピヨピヨ」「カッコー」に変わりました 」によれば、
1994年10月5日から。
「「故郷の空」が「ピヨピヨ」に、「とおりゃんせ」が「カッコー」の鳴き声に変わりました。より聞き取りやすく、また近隣への騒音などにも配慮して変更したものです。」
「東西方向に横断する場合が「ピヨピヨ」に、南北方向に横断する場合が「カッコー」」
当時は「市内には全部で三十五か所に視覚障害者用信号機があり」、この時は「自衛隊入口、かね久前、秋田駅前、JR秋田支社前、北都銀行保戸野支店前、県庁西、県庁前の七か所」が変わった。
「北都銀行保戸野支店前」とは、菊谷小路と千秋トンネル通りの交差点。現在は警察では「たばこ会館前」と呼んでいるよう(入札資料等において)だが、一般人には普及していない。銀行は現在は駐車場になっている。「かね久前」ってのはどこ?
【2023年9月7日追記】秋田魁新報より
2023年時点の秋田県内の設置数について。
県内の信号機
約1900台のうち142台に(音響式装置が)設置されている。※ここでの「台」とは「箇所」を指すと考えられる。
この時(2023年9月6日)には、スマートフォンアプリで信号の色を知らせる「信GO!」が、社会福祉会館前交差点に初めて導入された。導入費用は信GOが(交差点1か所ごとの発信システムの費用だと思われる)約200万円で、音響式より50万円ほど高いとのこと。