放置していた北海道旅行記。※以前の記事
交通資料館のほかにも、以前から行きたかった札幌市内の施設があった。「北海道大学北方生物圏フィールド科学センター植物園」、いわゆる北大植物園。
1886(明治19)年にできた国内で2番目に古い植物園(最古は小石川植物園)。
札幌駅北側にある北海道大学の本体は、大学のキャンパスとしては珍しくそれ自体が観光地になっているが、植物園は別の場所。観光地としてもさほど著名ではない(中学校の修学旅行の自由行動でも、ごく一部の班だけが訪れただけだった)。
植物が好きな僕は興味はあったけれど、前回札幌を訪れたのは冬で、温室だけの縮小開園のため見なかったのだった。
※今回の訪問は8月下旬です。11月からは冬期の温室のみの開園です。また、2014年度夏期は建物の耐震補強工事のため一部で公開が休止されるとのことなので、訪問の際は公式ホームページで確認してください。
所在地は札幌駅の南西側。大通公園や時計台からもそう遠くなく、アクセスはいい。(JRや地下鉄の駅からは離れていて、わりと歩くけど)
札幌の格子状の町割りで表せば、南北方向は北2条から北4条、東西方向は西8丁目から西10丁目に渡って、計9ブロックほぼ全域が植物園の敷地。13.3ヘクタールに4000種の植物がある。
出入口は1つだけで、西7丁目と8丁目の境の道路に面する。北海道庁の1ブロック西側。
道庁側を背に。道路の向こうが植物園で、白い建物が受付のある管理棟
入園料は大人400円。入口に無料(100円玉リターン式)のコインロッカーあり。
長い名だけど要は植物園
順路は2つ示されていて、所要1時間30分で時計回りの外回りルートと45分で反時計回りの内回りルート。僕はもちろん外回りにしたが、雨が降りそうで次の予定もあった。そこで、ロックガーデンとかバラ園とかどこでも見られるようなものはざっと飛ばして、1時間ちょっとで回った。
温室。
実ったバナナとかアロエとかサボテンとか、定番のものが多い。初めて見られたのは、熱帯スイレンの花。
温帯のスイレンは水面で花が咲くが、熱帯のはハスのように水の上の空中まで花茎が伸びて咲く。花弁の形や、青系統の色も特徴的。
北海道と関わりの深い植物が植えられた「北方民族植物標本園」。
水色の花が咲いているのは、「エゾトリカブト」!
他のトリカブトやそれらの交雑種もあったけれど、花の色や形が微妙に違った。
こういう青系の色って、(オリンパスの?)デジカメでは正確には記録できない。
びろーんと伸びてアザミのような玉状の花が付くのは、根っこ以外はなかなか見る機会がない、
「ゴボウ」
どこかで見たことがあるような、ないような?
これは「ヤマゴボウ」。上のキク科で根が野菜になる「ゴボウ」ではなく、ヤマゴボウ科の有毒植物。
そう、あの「ヨウシュヤマゴボウ」の「ヨウシュ(洋種)」でない在来種、いわば「和種ヤマゴボウ」。
ヨウシュヤマゴボウとの違いは、茎に赤系統の色が出ないこと、花・果実が垂れ下がらず上に向かって出ること。そのためか、ヨウシュヤマゴボウほど気持ち悪く見えない。
1つ1つの果実には、カボチャのように筋が入る点も違う(ヨウシュはツルツル)
北海道だけでなく九州まで日本各地に分布し、実は昔、秋田市の町中で1株だけ見たことがあった。
厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル(http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/higher_det_21.html)」には「在来種のヤマゴボウなど2種は身近に少なく誤食の可能性は少ないと思われる。」とあるが、身近にまったくないわけではないから、やはり注意すべきでしょう。
園内の多くは、植物園になる前の原生林がほぼそのまま残っているそうだ。通路を歩いていると、北海道の林の中に迷い込んだかのように錯覚してしまう。
明治時代あたりは、こんな中に時計台などがぽつぽつと建っていたのだろうか。
ヒグマが出たらどうしようと思ってしまいそうだけど、四方は道路とビルに囲まれているから、それはないでしょう。
柵の向こうは車が行き交う大都会
そんな林の中で、カリカリカリと音が聞こえてきた。何かの工事とは違うし、人の気配がない。林の中をよーく見ると、
リス?!
種としてはエゾリスってことでしょうか
これだけのうっそうとした林なら、いてもおかしくないけれど、見られてうれしかった。
秋田市の千秋公園にはニホンリスがいるそうだが、僕は今まで1度も見られなくて、特に子ども頃に悔しい思いをしたのだが、それが少し晴れた。
エゾリスは僕がいることには気づいているはずだが、クルミのようなものを食べるのに夢中。距離は10メートルほど離れていて、人間はこれ以上近寄れないことを知っているのだろうか。
粘ってもう少し撮影しようかと思ったけれど、臨時列車「ヌプリ」のガイドで「アイヌの人はエゾリスを『腑抜けになる』などと忌み嫌い、猟の途中で出会うと、中止して帰ってしまった」と聞いたのを思い出し、切り上げることにした。
北海道を代表する木の1つが「ハルニレ」。
「ハルニレの林」
植物園内には、開園前から生えている樹齢150~200年のハルニレの大木がたくさんある。
園内の樹木は約8000本。うち直径10センチ以上のものが3000本で、その1割300本がハルニレ。
ニレといえば、秋田市立保戸野小学校のシンボルツリー「ニレの木」。以前の記事ではハルニレだろうと推測した。ところが、
植物園のハルニレ。これはあまり大きくない
写真では分かりづらいかもしれませんが、幹の縦方向に凹凸があってゴツゴツした感じは、保戸野小のとそっくり。
でも、葉っぱが違う。植物園のハルニレのほうが明らかに大きい。ケヤキよりも大きく、まるでサクラの葉並み。
保戸野小のはケヤキより小さく、離れて見ると全体に繊細な印象を受けるのだが。植物園のハルニレとは違うような…
そして、
これ!
保戸野小のニレの木に似ている木を発見!
「マンシュウニレ」または「ノニレ」と呼ばれる、ハルニレとは別の種だった。
植物園内には、温室の前などに数えるほどしかない。調べてみると、葉のほかにはハルニレとの違いは小さく、花の時期も近いそうだ。日本には自生せず、大陸から移入されたようで、保戸野小のも人が植えたのだろう。
※秋田市にあるハルニレについてはこの記事中ほど
園内では、観光客や地元の人のほか、学生など大学関係者も見かける。公園ではないので、スポーツや飲酒は禁止。(飲食は可)
その分、ゆったりと北海道の植物や自然に親しむことができる。
園内には、いくつか建物もある。各種展示施設として使われるほか、建物自体が重要文化財に指定されているものも多い。
「宮部金吾記念館」
植物園の初代園長の資料を集めた建物だが、その前にある木は「札幌最古のライラック」。
1890年頃、スミス女史が故郷のニューイングランドから持ってきたそうだ。もっと古いのが、スミス女史が創立した北星学園にあったそうだが、それは現存しないので、これが最古ということらしい。
この木から札幌のあちこちにライラックが分けられたそうだ。(函館にはもっと前の1879年にイギリスから持ち込まれている)
博物館
手前が1882(明治15)年築の「博物館本館」で内部は現役の(日本最古の建物の)博物館として公開。その後方の建物は「重要文化財建築群」と呼ばれる、明治・大正期の建物。
博物館本館では、動物の剥製を中心に展示。南極に行った「タロ」や世界で唯一残る「エゾオオカミ」があった。どちらも思ったより小さく、エゾオオカミはシンリンオオカミとは全然違って、どことなくキツネっぽい。
撮影禁止だと思って写真は撮らなかったが、フラッシュや三脚を使わなければ撮影できるそうだ。
以下も、すべて重要文化財かつ現役の建物。
「倉庫」1885(明治18)年
「便所」1903(明治36)年建築、1918年移築
重要文化財のトイレとは珍しいが、おそれ多くも一般入園者も使用できる。昔の公衆トイレ風の造りだが、水洗化されてきれいだった。
出入口へ戻って、
「門衛所」
1911(明治44)年の一般公開開始に伴って造られたそうで、今も時間外の守衛詰所になっている。
門衛所と出口。奥に道庁の赤れんがが少しだけ見える
雨にも当たらなかったし、いろいろとためになった。
大学としての教育研究が第一という考えなのか、昨今の他の多くの博物館のように積極的に人に来てもらおうとする取り組みはあまりされていない、飾り気のない施設だと感じた。だから、興味のない人にはつまらないかもしれないが、これはこれでいいだろう。
今度は、花がいろいろ咲く時期とか、新緑の頃なんかに訪れてみたい。
交通資料館のほかにも、以前から行きたかった札幌市内の施設があった。「北海道大学北方生物圏フィールド科学センター植物園」、いわゆる北大植物園。
1886(明治19)年にできた国内で2番目に古い植物園(最古は小石川植物園)。
札幌駅北側にある北海道大学の本体は、大学のキャンパスとしては珍しくそれ自体が観光地になっているが、植物園は別の場所。観光地としてもさほど著名ではない(中学校の修学旅行の自由行動でも、ごく一部の班だけが訪れただけだった)。
植物が好きな僕は興味はあったけれど、前回札幌を訪れたのは冬で、温室だけの縮小開園のため見なかったのだった。
※今回の訪問は8月下旬です。11月からは冬期の温室のみの開園です。また、2014年度夏期は建物の耐震補強工事のため一部で公開が休止されるとのことなので、訪問の際は公式ホームページで確認してください。
所在地は札幌駅の南西側。大通公園や時計台からもそう遠くなく、アクセスはいい。(JRや地下鉄の駅からは離れていて、わりと歩くけど)
札幌の格子状の町割りで表せば、南北方向は北2条から北4条、東西方向は西8丁目から西10丁目に渡って、計9ブロックほぼ全域が植物園の敷地。13.3ヘクタールに4000種の植物がある。
出入口は1つだけで、西7丁目と8丁目の境の道路に面する。北海道庁の1ブロック西側。
道庁側を背に。道路の向こうが植物園で、白い建物が受付のある管理棟
入園料は大人400円。入口に無料(100円玉リターン式)のコインロッカーあり。
長い名だけど要は植物園
順路は2つ示されていて、所要1時間30分で時計回りの外回りルートと45分で反時計回りの内回りルート。僕はもちろん外回りにしたが、雨が降りそうで次の予定もあった。そこで、ロックガーデンとかバラ園とかどこでも見られるようなものはざっと飛ばして、1時間ちょっとで回った。
温室。
実ったバナナとかアロエとかサボテンとか、定番のものが多い。初めて見られたのは、熱帯スイレンの花。
温帯のスイレンは水面で花が咲くが、熱帯のはハスのように水の上の空中まで花茎が伸びて咲く。花弁の形や、青系統の色も特徴的。
北海道と関わりの深い植物が植えられた「北方民族植物標本園」。
水色の花が咲いているのは、「エゾトリカブト」!
他のトリカブトやそれらの交雑種もあったけれど、花の色や形が微妙に違った。
こういう青系の色って、(オリンパスの?)デジカメでは正確には記録できない。
びろーんと伸びてアザミのような玉状の花が付くのは、根っこ以外はなかなか見る機会がない、
「ゴボウ」
どこかで見たことがあるような、ないような?
これは「ヤマゴボウ」。上のキク科で根が野菜になる「ゴボウ」ではなく、ヤマゴボウ科の有毒植物。
そう、あの「ヨウシュヤマゴボウ」の「ヨウシュ(洋種)」でない在来種、いわば「和種ヤマゴボウ」。
ヨウシュヤマゴボウとの違いは、茎に赤系統の色が出ないこと、花・果実が垂れ下がらず上に向かって出ること。そのためか、ヨウシュヤマゴボウほど気持ち悪く見えない。
1つ1つの果実には、カボチャのように筋が入る点も違う(ヨウシュはツルツル)
北海道だけでなく九州まで日本各地に分布し、実は昔、秋田市の町中で1株だけ見たことがあった。
厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル(http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/higher_det_21.html)」には「在来種のヤマゴボウなど2種は身近に少なく誤食の可能性は少ないと思われる。」とあるが、身近にまったくないわけではないから、やはり注意すべきでしょう。
園内の多くは、植物園になる前の原生林がほぼそのまま残っているそうだ。通路を歩いていると、北海道の林の中に迷い込んだかのように錯覚してしまう。
明治時代あたりは、こんな中に時計台などがぽつぽつと建っていたのだろうか。
ヒグマが出たらどうしようと思ってしまいそうだけど、四方は道路とビルに囲まれているから、それはないでしょう。
柵の向こうは車が行き交う大都会
そんな林の中で、カリカリカリと音が聞こえてきた。何かの工事とは違うし、人の気配がない。林の中をよーく見ると、
リス?!
種としてはエゾリスってことでしょうか
これだけのうっそうとした林なら、いてもおかしくないけれど、見られてうれしかった。
秋田市の千秋公園にはニホンリスがいるそうだが、僕は今まで1度も見られなくて、特に子ども頃に悔しい思いをしたのだが、それが少し晴れた。
エゾリスは僕がいることには気づいているはずだが、クルミのようなものを食べるのに夢中。距離は10メートルほど離れていて、人間はこれ以上近寄れないことを知っているのだろうか。
粘ってもう少し撮影しようかと思ったけれど、臨時列車「ヌプリ」のガイドで「アイヌの人はエゾリスを『腑抜けになる』などと忌み嫌い、猟の途中で出会うと、中止して帰ってしまった」と聞いたのを思い出し、切り上げることにした。
北海道を代表する木の1つが「ハルニレ」。
「ハルニレの林」
植物園内には、開園前から生えている樹齢150~200年のハルニレの大木がたくさんある。
園内の樹木は約8000本。うち直径10センチ以上のものが3000本で、その1割300本がハルニレ。
ニレといえば、秋田市立保戸野小学校のシンボルツリー「ニレの木」。以前の記事ではハルニレだろうと推測した。ところが、
植物園のハルニレ。これはあまり大きくない
写真では分かりづらいかもしれませんが、幹の縦方向に凹凸があってゴツゴツした感じは、保戸野小のとそっくり。
でも、葉っぱが違う。植物園のハルニレのほうが明らかに大きい。ケヤキよりも大きく、まるでサクラの葉並み。
保戸野小のはケヤキより小さく、離れて見ると全体に繊細な印象を受けるのだが。植物園のハルニレとは違うような…
そして、
これ!
保戸野小のニレの木に似ている木を発見!
「マンシュウニレ」または「ノニレ」と呼ばれる、ハルニレとは別の種だった。
植物園内には、温室の前などに数えるほどしかない。調べてみると、葉のほかにはハルニレとの違いは小さく、花の時期も近いそうだ。日本には自生せず、大陸から移入されたようで、保戸野小のも人が植えたのだろう。
※秋田市にあるハルニレについてはこの記事中ほど
園内では、観光客や地元の人のほか、学生など大学関係者も見かける。公園ではないので、スポーツや飲酒は禁止。(飲食は可)
その分、ゆったりと北海道の植物や自然に親しむことができる。
園内には、いくつか建物もある。各種展示施設として使われるほか、建物自体が重要文化財に指定されているものも多い。
「宮部金吾記念館」
植物園の初代園長の資料を集めた建物だが、その前にある木は「札幌最古のライラック」。
1890年頃、スミス女史が故郷のニューイングランドから持ってきたそうだ。もっと古いのが、スミス女史が創立した北星学園にあったそうだが、それは現存しないので、これが最古ということらしい。
この木から札幌のあちこちにライラックが分けられたそうだ。(函館にはもっと前の1879年にイギリスから持ち込まれている)
博物館
手前が1882(明治15)年築の「博物館本館」で内部は現役の(日本最古の建物の)博物館として公開。その後方の建物は「重要文化財建築群」と呼ばれる、明治・大正期の建物。
博物館本館では、動物の剥製を中心に展示。南極に行った「タロ」や世界で唯一残る「エゾオオカミ」があった。どちらも思ったより小さく、エゾオオカミはシンリンオオカミとは全然違って、どことなくキツネっぽい。
撮影禁止だと思って写真は撮らなかったが、フラッシュや三脚を使わなければ撮影できるそうだ。
以下も、すべて重要文化財かつ現役の建物。
「倉庫」1885(明治18)年
「便所」1903(明治36)年建築、1918年移築
重要文化財のトイレとは珍しいが、おそれ多くも一般入園者も使用できる。昔の公衆トイレ風の造りだが、水洗化されてきれいだった。
出入口へ戻って、
「門衛所」
1911(明治44)年の一般公開開始に伴って造られたそうで、今も時間外の守衛詰所になっている。
門衛所と出口。奥に道庁の赤れんがが少しだけ見える
雨にも当たらなかったし、いろいろとためになった。
大学としての教育研究が第一という考えなのか、昨今の他の多くの博物館のように積極的に人に来てもらおうとする取り組みはあまりされていない、飾り気のない施設だと感じた。だから、興味のない人にはつまらないかもしれないが、これはこれでいいだろう。
今度は、花がいろいろ咲く時期とか、新緑の頃なんかに訪れてみたい。