ちょっと紛らわしい食品の話を2つ。
●サンダーとなんダー
「ブラックサンダー」って、知っていますか?
「有楽製菓(ユーラク)」が販売しているチョコレート菓子。砕いたクッキー(ココアクッキークランチ)をチョコレートで固めたもので、1個ずつ小袋に入って30円(税抜き)で売られている。
「おいしさイナズマ級!」「若い女性にヒット中!」という、よく分からないキャッチフレーズ。
1994年に一部地域で発売が始まったもののなかなか売れず、何年かかけて大学生協やセブンイレブンに販路を拡大するにつれて知名度が上がり、現在はほとんどのコンビニやスーパーなどで売られている。
2008年には、オリンピック体操選手内村航平の好物として取り上げられ、さらに広く知られるようになった。僕もこのあたりで知った。
大袋入りのファミリーパック的なものもあり、「ミニバー」という名称。キットカットミニに相当する商品。
写真中央が通常品。下がミニバー
おいしいし、手頃な価格で手頃な量。チロルチョコやキットカットと並ぶ、ちょっと甘いものを食べたい時に買いたくなるお菓子だと思う。
さて、とあるスーパーで、ブラックサンダーの隣に、よく似たサイズ・デザインの製品が並んでいた。
上がブラックサンダー、下は?
「ブラックなんダー」という商品。
ブラックなんダーのほうが、少し価格が高く(税込35円で売っていた【3日追加】同じ店でサンダーは税込30円)、「コラーゲン 130mg 配合」「???クッキークランチ」と包装にある。なんか怪しい?
ブラックサンダーには、いろいろな派生商品がある(地域限定などでほとんど見かけない)ので、その1つがブラックなんダーかと思った。
ところが、包装の裏面を見ると、ブラックなんダーの販売者は「マーケットプレイス株式会社」。
なんと、違う企業の製品だった!
ちなみに、どちらも1本は標準22g。サンダーが115kcal、ナトリウム71mgに対し、なんダーは118kcal、50mg。
中身(すみません。撮影から時間が経ちどっちがどっちか忘れました)
肝心の商品は、外見も味も、似ているけれど同一ではないことは分かる。
どっちがおいしいかと聞かれれば、それぞれの良さがある気もするが、サンダーのほうがおいしいような気もしなくもない。
こんなに紛らわしい2つのお菓子。サンダーを買おうとして、なんダーを買ってしまいそう。
ブラックなんダーはブラックサンダーをパクったバッタモンかと思ってしまうが、ネットで調べてみると、そうではなかった。
ブラックなんダーは、マーケットプレイス株式会社が企画して販売する商品ではあるが、製造は有楽製菓が行なっているという。つまりOEMだったようだ。
製造元が同じなら、目くじらを立てたり、間違って買っても悔やんだりするほどでもないのだろうが、それにしても紛らわしい。
●調整と無調整
いわゆる「牛乳」といっても、店頭に並ぶ商品には「種類別」の違いがある。本当の「牛乳(種類別牛乳)」や低脂肪牛乳とか加工乳とか。
ここ数年、「成分調整牛乳」という分類の牛乳(厳密には牛乳じゃないことになるが)が出回っているのをご存知だろうか。
「成分調整牛乳」は、2003年(2002年?)に新設された種類。生乳の乳脂肪分などを除去して、成分を調整した牛乳。モノによって、種類別牛乳より濃かったり(=水分を除去)、薄かったり(=脂肪を除去)する。(何かを“加えて”成分調整することはできない)
成分調整牛乳の中でも、乳脂肪分を「牛乳」より若干少ない、2~3%にしたものが、2008年頃からよく出回っている。例えば、青いパックの「森永 まきばの空」、秋田ではイオン各店で売っている「サツラク 北海道まきばの恵み」など。スーパーでは1000mlパック157円くらいが相場か。
こうした成分調整牛乳の台頭は、原乳価格が上昇した時期と重なる。除去した脂肪分は、バターなどの原料に回せるそうで、その分安くできるという理屈らしい。
脂肪分が少ないので軽くて飲みやすいと感じる人もいるし、価格は安いのに味は牛乳と違わないと感じる人もいて、要は牛乳とそんなに違わない味ということだろう。(このへんは個人の味覚の差です。僕は後者)
成分調整牛乳の存在自体も、紛らわしいといえばそうだが、ここで言いたいのはそうではない。
セブンアンドアイホールディングスのプライベートブランド(PB)「セブンプレミアム」での両者の扱い。
セブンプレミアムでは、だいぶ前から、「軽やか仕立て」という商品名の成分調整牛乳を出している。1000ml168円で成分調整牛乳にしてはやや高価。
一度パッケージが変わったはずで、現在は牛乳系にしては珍しい、黄緑色のパック。ザ・ガーデン自由が丘西武秋田店で売られているものは、高梨乳業横浜工場製。
ほかに、秋田のザ・ガーデンではいつもあるわけではないようだが、色違いの青いパックの「北海道牛乳」というのもある。これは種類別牛乳で198円。よつ葉乳業製。
セブンプレミアムで、「軽やか仕立て」と「北海道牛乳」が存在する意義は、分かる。種類も違うし、価格も違うから、消費者に選択させようというのだろう。
だが、昨年末に、第3のセブンプレミアムの牛乳類が発売された。
赤いパックのその名も「成分無調整牛乳」。種類別牛乳で、東北森永乳業仙台工場製。
価格は168円で、成分調整牛乳である「軽やか仕立て」と同じ。
軽やか仕立てと成分無調整牛乳
200ml当たりのエネルギーとカルシウムは、軽やか仕立てが108kcalと207mg、成分無調整牛乳が133kcalと227mg。
まず、個人的な憶測だけど、この度「成分無調整牛乳」を発売した理由。
おそらく、イオンへの対抗ではないだろうか。イオンでは、昨年の秋頃から「トップバリュベストプライス 牛乳」というのを168円で売っている。(従来のイオンのPBの牛乳は198円だった)【2月13日訂正】トップバリュベストプライス牛乳は、イオンリテールの店舗では167円で売っていた。マックスバリュ東北だと、それより若干高いような気もする。
イオンとセブンのPBでは、互いを意識して価格設定しているように感じることがあるから、セブン側が「うちも168円で種類別牛乳を出してやろう」と、赤い「成分無調整牛乳」の発売に踏み切ったのではないだろうか。
そして、168円で牛乳が売られると、成分調整牛乳との関係が問題になってくる。
イオン系スーパー各社では、PBでない(=ナショナルブランド。森永とかサツラクの)成分調整牛乳を、常時158円とか157円で売っているから、牛乳が168円になってもまだ安さでの優位は、10円だけどある。
ところが、セブンでは、「軽やか仕立て」が168円なので、牛乳と成分調整牛乳の価格差がなくなってしまう。これでは、成分調整牛乳の大きなアドバンテージが失われてしまう。
ザ・ガーデンのレシート。どちらも168円
牛乳と成分調整牛乳が同価格で売られていたら、よほど成分調整牛乳へのこだわりとか高梨乳業への愛着がある人でない限り、牛乳の方を買ってしまうのではないだろうか。
どういう事情か知らないが、同じシリーズの商品で、品質が違う商品を同じ価格で販売するのは、おかしいと思う。
「成分無調整牛乳」を168円で発売した時に、「軽やか仕立て」を値下げするのが筋ではないだろうか(あるいは、そもそも無調整牛乳を168円で売ること自体、無理があるか)。
「成分“無”調整牛乳」という、愛想がなく、成分調整牛乳と紛らわしい商品名もあまり好きになれない。
パックのデザインはよく似ているが、なぜかバーコードの向きが違う
セブンプレミアムは、PBなのに製造元を明記しているのが、今までになかった特徴で、たしかに安心感・信頼感みたいなのは受ける。
だけど、それはPBとしての統一感が(細かな部分で)取れていないことの裏返しなのかもしれない。
【2014年4月19日追記】この後、2013年後半辺りから、「軽やか仕立て」を見かけなくなった。イトーヨーカドーのネットスーパーを見ても、扱っていない店舗が多い。一方で扱っている店舗もあるようなので、「軽やか仕立て」は縮小傾向のようだ。(ザ・ガーデン秋田店や一部のヨーカドーでは、代わりとして、ナショナルブランドの成分無調整牛乳をほぼ同じ価格で扱っている。※「タカナシ 北海道さわやか酪農」で、実際には、セブン向け限定のナショナルブランド商品のようだこの記事中ほど参照。)
セブンプレミアムの種類別牛乳のほうも、商品名や価格の変化(消費税増税とは別に値上がり)がある。上記のような価格のおかしさは解消された格好ではある。
【2016年4月11日追記】牛乳パック上部の圧着部分に、牛乳であることを触って識別できるように半円形の切り欠きがあるが、それは種類別牛乳だけ。成分調整牛乳にはないのだそうだ。東北産牛乳の共同キャンペーンの募集要項に書かれていて知った。(存在は知っていて、成分調整牛乳にもあると思い込んでいたが、たしかになかった)
●サンダーとなんダー
「ブラックサンダー」って、知っていますか?
「有楽製菓(ユーラク)」が販売しているチョコレート菓子。砕いたクッキー(ココアクッキークランチ)をチョコレートで固めたもので、1個ずつ小袋に入って30円(税抜き)で売られている。
「おいしさイナズマ級!」「若い女性にヒット中!」という、よく分からないキャッチフレーズ。
1994年に一部地域で発売が始まったもののなかなか売れず、何年かかけて大学生協やセブンイレブンに販路を拡大するにつれて知名度が上がり、現在はほとんどのコンビニやスーパーなどで売られている。
2008年には、オリンピック体操選手内村航平の好物として取り上げられ、さらに広く知られるようになった。僕もこのあたりで知った。
大袋入りのファミリーパック的なものもあり、「ミニバー」という名称。キットカットミニに相当する商品。
写真中央が通常品。下がミニバー
おいしいし、手頃な価格で手頃な量。チロルチョコやキットカットと並ぶ、ちょっと甘いものを食べたい時に買いたくなるお菓子だと思う。
さて、とあるスーパーで、ブラックサンダーの隣に、よく似たサイズ・デザインの製品が並んでいた。
上がブラックサンダー、下は?
「ブラックなんダー」という商品。
ブラックなんダーのほうが、少し価格が高く(税込35円で売っていた【3日追加】同じ店でサンダーは税込30円)、「コラーゲン 130mg 配合」「???クッキークランチ」と包装にある。なんか怪しい?
ブラックサンダーには、いろいろな派生商品がある(地域限定などでほとんど見かけない)ので、その1つがブラックなんダーかと思った。
ところが、包装の裏面を見ると、ブラックなんダーの販売者は「マーケットプレイス株式会社」。
なんと、違う企業の製品だった!
ちなみに、どちらも1本は標準22g。サンダーが115kcal、ナトリウム71mgに対し、なんダーは118kcal、50mg。
中身(すみません。撮影から時間が経ちどっちがどっちか忘れました)
肝心の商品は、外見も味も、似ているけれど同一ではないことは分かる。
どっちがおいしいかと聞かれれば、それぞれの良さがある気もするが、サンダーのほうがおいしいような気もしなくもない。
こんなに紛らわしい2つのお菓子。サンダーを買おうとして、なんダーを買ってしまいそう。
ブラックなんダーはブラックサンダーをパクったバッタモンかと思ってしまうが、ネットで調べてみると、そうではなかった。
ブラックなんダーは、マーケットプレイス株式会社が企画して販売する商品ではあるが、製造は有楽製菓が行なっているという。つまりOEMだったようだ。
製造元が同じなら、目くじらを立てたり、間違って買っても悔やんだりするほどでもないのだろうが、それにしても紛らわしい。
●調整と無調整
いわゆる「牛乳」といっても、店頭に並ぶ商品には「種類別」の違いがある。本当の「牛乳(種類別牛乳)」や低脂肪牛乳とか加工乳とか。
ここ数年、「成分調整牛乳」という分類の牛乳(厳密には牛乳じゃないことになるが)が出回っているのをご存知だろうか。
「成分調整牛乳」は、2003年(2002年?)に新設された種類。生乳の乳脂肪分などを除去して、成分を調整した牛乳。モノによって、種類別牛乳より濃かったり(=水分を除去)、薄かったり(=脂肪を除去)する。(何かを“加えて”成分調整することはできない)
成分調整牛乳の中でも、乳脂肪分を「牛乳」より若干少ない、2~3%にしたものが、2008年頃からよく出回っている。例えば、青いパックの「森永 まきばの空」、秋田ではイオン各店で売っている「サツラク 北海道まきばの恵み」など。スーパーでは1000mlパック157円くらいが相場か。
こうした成分調整牛乳の台頭は、原乳価格が上昇した時期と重なる。除去した脂肪分は、バターなどの原料に回せるそうで、その分安くできるという理屈らしい。
脂肪分が少ないので軽くて飲みやすいと感じる人もいるし、価格は安いのに味は牛乳と違わないと感じる人もいて、要は牛乳とそんなに違わない味ということだろう。(このへんは個人の味覚の差です。僕は後者)
成分調整牛乳の存在自体も、紛らわしいといえばそうだが、ここで言いたいのはそうではない。
セブンアンドアイホールディングスのプライベートブランド(PB)「セブンプレミアム」での両者の扱い。
セブンプレミアムでは、だいぶ前から、「軽やか仕立て」という商品名の成分調整牛乳を出している。1000ml168円で成分調整牛乳にしてはやや高価。
一度パッケージが変わったはずで、現在は牛乳系にしては珍しい、黄緑色のパック。ザ・ガーデン自由が丘西武秋田店で売られているものは、高梨乳業横浜工場製。
ほかに、秋田のザ・ガーデンではいつもあるわけではないようだが、色違いの青いパックの「北海道牛乳」というのもある。これは種類別牛乳で198円。よつ葉乳業製。
セブンプレミアムで、「軽やか仕立て」と「北海道牛乳」が存在する意義は、分かる。種類も違うし、価格も違うから、消費者に選択させようというのだろう。
だが、昨年末に、第3のセブンプレミアムの牛乳類が発売された。
赤いパックのその名も「成分無調整牛乳」。種類別牛乳で、東北森永乳業仙台工場製。
価格は168円で、成分調整牛乳である「軽やか仕立て」と同じ。
軽やか仕立てと成分無調整牛乳
200ml当たりのエネルギーとカルシウムは、軽やか仕立てが108kcalと207mg、成分無調整牛乳が133kcalと227mg。
まず、個人的な憶測だけど、この度「成分無調整牛乳」を発売した理由。
おそらく、イオンへの対抗ではないだろうか。イオンでは、昨年の秋頃から「トップバリュベストプライス 牛乳」というのを
イオンとセブンのPBでは、互いを意識して価格設定しているように感じることがあるから、セブン側が「うちも168円で種類別牛乳を出してやろう」と、赤い「成分無調整牛乳」の発売に踏み切ったのではないだろうか。
そして、168円で牛乳が売られると、成分調整牛乳との関係が問題になってくる。
イオン系スーパー各社では、PBでない(=ナショナルブランド。森永とかサツラクの)成分調整牛乳を、常時158円とか157円で売っているから、牛乳が168円になってもまだ安さでの優位は、10円だけどある。
ところが、セブンでは、「軽やか仕立て」が168円なので、牛乳と成分調整牛乳の価格差がなくなってしまう。これでは、成分調整牛乳の大きなアドバンテージが失われてしまう。
ザ・ガーデンのレシート。どちらも168円
牛乳と成分調整牛乳が同価格で売られていたら、よほど成分調整牛乳へのこだわりとか高梨乳業への愛着がある人でない限り、牛乳の方を買ってしまうのではないだろうか。
どういう事情か知らないが、同じシリーズの商品で、品質が違う商品を同じ価格で販売するのは、おかしいと思う。
「成分無調整牛乳」を168円で発売した時に、「軽やか仕立て」を値下げするのが筋ではないだろうか(あるいは、そもそも無調整牛乳を168円で売ること自体、無理があるか)。
「成分“無”調整牛乳」という、愛想がなく、成分調整牛乳と紛らわしい商品名もあまり好きになれない。
パックのデザインはよく似ているが、なぜかバーコードの向きが違う
セブンプレミアムは、PBなのに製造元を明記しているのが、今までになかった特徴で、たしかに安心感・信頼感みたいなのは受ける。
だけど、それはPBとしての統一感が(細かな部分で)取れていないことの裏返しなのかもしれない。
【2014年4月19日追記】この後、2013年後半辺りから、「軽やか仕立て」を見かけなくなった。イトーヨーカドーのネットスーパーを見ても、扱っていない店舗が多い。一方で扱っている店舗もあるようなので、「軽やか仕立て」は縮小傾向のようだ。(ザ・ガーデン秋田店や一部のヨーカドーでは、代わりとして、ナショナルブランドの成分無調整牛乳をほぼ同じ価格で扱っている。※「タカナシ 北海道さわやか酪農」で、実際には、セブン向け限定のナショナルブランド商品のようだこの記事中ほど参照。)
セブンプレミアムの種類別牛乳のほうも、商品名や価格の変化(消費税増税とは別に値上がり)がある。上記のような価格のおかしさは解消された格好ではある。
【2016年4月11日追記】牛乳パック上部の圧着部分に、牛乳であることを触って識別できるように半円形の切り欠きがあるが、それは種類別牛乳だけ。成分調整牛乳にはないのだそうだ。東北産牛乳の共同キャンペーンの募集要項に書かれていて知った。(存在は知っていて、成分調整牛乳にもあると思い込んでいたが、たしかになかった)