今年の6月、東北地方にある緑のきれいな山間の町を旅したときに、一軒のひなびたラーメン屋に入った。
老女が一人でやっていた。一杯400円。
野菜がたくさん入っていた素朴な味だった。人に歳を聞く趣味は無いが、あまりに皺が深いので思わず聞いていた。
95歳だと顔をくずして笑った。
常連客10人くらいを相手に毎日ラーメンを出しているという。 新しい客は来ない。
夫は10年前に亡くなり、息子も65歳で死んだという。
毎日、顔見知りのお客が来てくれて、話ができることだけが一人暮らしの楽しみだと言う。
ラーメンを食べて、お元気でと別れたが、もう会えることは無いだろう。
そのとき、女の一生という言葉が頭をよぎった。