新宿酒場ロン 9・14
深夜12時、取材が長引いて島と絵美がようやく現れた。
「安倍さん辞任ねェ、訳が分かるようでわからない」
「パニックになった」
「官邸筋から聞いたけど、最近、安倍さん深夜に公邸の庭を歩きまわっていたそうよ」
「SPが驚いて報告した。異様な雰囲気だったとか」
「どうしてパニくったか」
「一大スキャンダルが出るらしい」
「週刊現代の記者が言っていたが、明日の、いや、もう今日か。安倍の脱税問題がスクープされることになっている」
「それ何?」
「父・晋太郎の相続税3億円を脱税したのではないかと」
「それが暴露されると、政治的にアウトだ。 国民には税金を払え、自分は脱税だということになると日本は先進国じゃなくて未開の国だ」
「なるほど、そういうことか。急に辞める理由がつくわね」
「何か腑に落ちなかった。職を賭してテロ法を通すと言っていたのに」
「スキャンダルになって、安倍内閣崩壊」
「じゅうめいさんもそのニューズは早かった。どこから入ったの」
「業界の人間なら皆知っている」
「それに福田総理をずばり当てた。安倍さんが辞めた直後にそれを予想したのは凄い」
「それだけ、自民に人材がいなくなっているから、総理候補を絞るのは簡単だ」
「福田は自民にとって最後の総理になるかもしれない。もう自民党は幕末の徳川と同じだ。幕閣重臣の無能と官僚腐敗は今の構図と似ている。そうすると安倍は徳川慶喜、民主は薩長、そして福田は勝海舟か」
「すると新撰組は?」
「麻生派、コワモテだからピッタシだ」
「民主の強みは中堅層が厚くなっている。対して自民の有望株は中川昭一、間が開いて河野、後藤田くらいだ。 恐ろしいくらい人がいない」
「小選挙区制が一番大きな原因だけどね」
「安倍さん、慶応病院に入院したけど」
「慶応の先生も困ったんじゃないか。胃カメラで診て異常なしとはっきり言ったわけだから、安倍さんどうする」
「それに、麻生は党内で人気がない。ある幹部は、あいつが総理になるんだったら、俺は共産党へ入ると言ってた」(笑)
「福田は、結構やると思うけど、今の自民は大火事になっているから、消火できるかどうか。 カネにきれいな自民代議士は皆無と言っていい。いくらでもボロは出てくる」
「小沢・西郷隆盛の餌食になる」
新宿の朝、電信柱の間から白々と夜が明けてくる。
外に出ると、夏の暑さがまだ残っている。黒いカラスが一声大きく鳴いた。
存在を誇示し、威嚇するように鳴く。その遠くには新宿の高層ビル群が睥睨するように立ち並ぶ。
魔都・東京。人間の欲望が熱い炎を上げて燃え盛る街だ。
(ムラマサ、静かだ)
深夜12時、取材が長引いて島と絵美がようやく現れた。
「安倍さん辞任ねェ、訳が分かるようでわからない」
「パニックになった」
「官邸筋から聞いたけど、最近、安倍さん深夜に公邸の庭を歩きまわっていたそうよ」
「SPが驚いて報告した。異様な雰囲気だったとか」
「どうしてパニくったか」
「一大スキャンダルが出るらしい」
「週刊現代の記者が言っていたが、明日の、いや、もう今日か。安倍の脱税問題がスクープされることになっている」
「それ何?」
「父・晋太郎の相続税3億円を脱税したのではないかと」
「それが暴露されると、政治的にアウトだ。 国民には税金を払え、自分は脱税だということになると日本は先進国じゃなくて未開の国だ」
「なるほど、そういうことか。急に辞める理由がつくわね」
「何か腑に落ちなかった。職を賭してテロ法を通すと言っていたのに」
「スキャンダルになって、安倍内閣崩壊」
「じゅうめいさんもそのニューズは早かった。どこから入ったの」
「業界の人間なら皆知っている」
「それに福田総理をずばり当てた。安倍さんが辞めた直後にそれを予想したのは凄い」
「それだけ、自民に人材がいなくなっているから、総理候補を絞るのは簡単だ」
「福田は自民にとって最後の総理になるかもしれない。もう自民党は幕末の徳川と同じだ。幕閣重臣の無能と官僚腐敗は今の構図と似ている。そうすると安倍は徳川慶喜、民主は薩長、そして福田は勝海舟か」
「すると新撰組は?」
「麻生派、コワモテだからピッタシだ」
「民主の強みは中堅層が厚くなっている。対して自民の有望株は中川昭一、間が開いて河野、後藤田くらいだ。 恐ろしいくらい人がいない」
「小選挙区制が一番大きな原因だけどね」
「安倍さん、慶応病院に入院したけど」
「慶応の先生も困ったんじゃないか。胃カメラで診て異常なしとはっきり言ったわけだから、安倍さんどうする」
「それに、麻生は党内で人気がない。ある幹部は、あいつが総理になるんだったら、俺は共産党へ入ると言ってた」(笑)
「福田は、結構やると思うけど、今の自民は大火事になっているから、消火できるかどうか。 カネにきれいな自民代議士は皆無と言っていい。いくらでもボロは出てくる」
「小沢・西郷隆盛の餌食になる」
新宿の朝、電信柱の間から白々と夜が明けてくる。
外に出ると、夏の暑さがまだ残っている。黒いカラスが一声大きく鳴いた。
存在を誇示し、威嚇するように鳴く。その遠くには新宿の高層ビル群が睥睨するように立ち並ぶ。
魔都・東京。人間の欲望が熱い炎を上げて燃え盛る街だ。
(ムラマサ、静かだ)