高田馬場。
駅を降りて早稲田に向かって少し歩けば、道路の両側に古本屋が立ち並ぶワセダ通りがあり、学生で賑わったものだったが、ブックオフという強敵が出現してからは店仕舞いをする古本屋も多くなったようだ。
昔はここで半値くらいに落ちた教科書や参考書、思想書、そして少しの照れを感じながら五木寛之を買ったものだが、今は何が売れるのだろうか。そして早稲田の古本屋は持ち込んだ古本を高値で買ってくれた。貧乏学生にとって、仕送りやバイト代が入る前の一時の凌ぎになったのだ。
しかし、今の時代、貧乏学生という言葉を聞かなくなった。親からの潤沢な仕送りがそういう言葉を風化させたのか、あるいは手軽なバイトが増えたのか。
南こうせつの神田川を聴きながら我が青春を振り返ると、
「怖いものは何もなかったあの頃。怖かったのは、あなたの優しさだけだった」
(じゅうめい)