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今回は昨年古本を入手していた大昔のTMSから。
昭和20年代のTMSの古本は専門店なんかだと大概4桁価格で並んでいたものですが、最近は状態が古ぼけているようなものだと今の新刊TMSよりも安価で入手できることが多くなりました。
ですから例えば上京の折に、帰りの電車の暇つぶし代わりといった用途にも使える程度のお値段にこなれて来つつある印象です。
今回入手できたのは昭和24年の奥付のある通巻16・21号。
おそらく仙花紙かそれに近い紙質で24P前後の厚み。カラー印刷一切なし、それどころか写真の掲載されているページすらほんの数ページなのです。
このコンディションなら今の感覚ならフリーペーパーにも使えないレベルと取られても仕方ありません。
ですがその内容は16番勃興期の熱さが誌面のそこここから感じられる、一言で言えば「元気になれる」1冊と思います。
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わたし的に圧巻だったのが16号の巻頭を飾っていた「初代オメガセントラル」のグラフ。
オメガセントラルと聞いて懐かしがるのは少なくとも東京近辺在住の70代以上のファンではないでしょうか。かつての天賞堂が銀座の店内に設置していた日本初の本格的HOの大レイアウトの事です。
レイアウト自体は改修や新製を繰り返しながら少なくとも80年代までは存続していた様ですが、あいにく私は一度も目にする機会がありませんでした(イクスピアリに新設された新作オメガセントラルも移転したとか聞いていますが今はどうなっていますか)
白黒写真とはいえ当時としては最大クラスのシーナリィのついたレイアウト。あの頃のモデラーやレイアウトビルダー予備軍のイマジネーションを刺激し、時には目標の一つにすらなったであろうオメガセントラルのスケール感をまとまった形で見る事ができたのが私には最大の収穫です。
レポート記事の中で山崎主筆が
「初秋の一日写真の撮影を終えた私は、銀色に光った手すりにもたれながら、世界の模型人がみんな知っている「レイアウトが完全になる時はあっても、それは決して完成する時はこない」という言葉を思いおこして、私たちのレイアウトの夢が、どこまでもどこまでものびてゆくのを、しみじみと味わったのだった」
という一節を残していますが、日本の鉄道模型もようやくここまで来た、そしてこれから来るであろう日本のレイアウトの力強い夜明けを実感していたであろう主筆の感慨と熱意が感じられる名文と思います。
その他の記事は基本、活字と図版で占められていますが黎明期の専門誌らしく、製作記よりも製作法の記事が多くまた当時鉄道趣味誌がこれしかなかった時代を反映してか実車の記事の比率も高くなっています(最も車両記事では「模型化のためのイマジネーション増幅」という意味合いが大きい印象ですが)
その意味ではこの間紹介した「鉄道模型の友」にごく近い構成と言えます。
なかでも16号の鉄道記念日特集の随筆「鋼製電車を語る」「国鉄電車の生い立ち」「国鉄蒸機の回想・機関車物語」はそれぞれのジャンルを俯瞰した内容ながらもページの少なさのハンデを感じさせない筆致でなかなか読み応えのある記事でした。
当時のファン(それも地方の)はそれこそむさぼるようにしてTMSを読んだと思います(この当時ですらTMS読者の平均年齢は18歳だそうです)が、内容的にもそれに十分こたえてくれる内容ではなかったかと思います。
その当時の読者も今では90代が中心になっていると思いますが。