光山鉄道管理局・アーカイブス

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鉄道ミステリとNゲージ番外編「少女七竈と七人の可愛そうな大人」

2021-11-02 05:06:00 | 小説
 前回に引き続き「鉄道ミステリとNゲージ」の番外編
 なお、今回のはミステリですらありません。

 今回取り上げるのは現在角川文庫(あるいは電子書籍)で買える桜庭一樹作「少女七竈と七人の可愛そうな大人」

 いんらんな母から生まれ「大変遺憾ながら美しく生まれてしまった」と自他ともに認め、その美しさ故に常に孤高の存在を運命付けられた17歳の少女、川村七竈が本作の主人公。
 それゆえに自らの美しさを呪い、異性を呪う彼女の友は幼馴染の美少年雪風と自宅の部屋いっぱいに線路を引き廻した鉄道模型のみ。
 旭川を舞台に、そんな七竈と彼女を取り巻き、或いは通りすぎてゆく「大人たち」の群像を連作風に描いてゆく一編です。

 作中、ストーリーの要所要所でレイアウトで列車を走らせ、車両を愛でる七竈と雪風の描写が時に七竈をめぐる周りの「可哀想な大人たち」の騒ぎを断ち切る静謐として、或いは成長と変化を拒否し続ける事を望む七竈の内面の象徴として描かれています。

 まあ、本作に限っていえば鉄道や鉄道模型に考証的なツッコミを入れるのは無粋極まりないと感じるのですが、当ブログの性質上そう言うわけにもいきません(汗)

 七竈の自宅(祖父とシェパードの三人暮らし)のレイアウトは作品初期には「規模が6M×5M、本線8系統、400両収容可能なヤードを装備。地下線、複々線、高架線を擁する、すばらしき川村七竈の鉄道模型(ワールド)」として登場し、後半では本線13系統まで拡張されていますが、個人の家でこれくらいのスペースというと最低でも8畳ふた間ぶち抜きくらい。或いは元料亭の大座敷を潰すくらいのサイズということになりますか。

 このスペースで8列車同時運転でもやろうものなら1人2人では全列車の補足は極めて困難。ポイント操作まで入れると運転に精一杯で列車を愛でる余裕は少ない気がします(最も、裏技はいくらでもありますが)
 作中、ストラクチャーや人形を買う描写があるところから最低限のシーナリィはある様ですが、基本巨大お座敷運転と見て間違い無いでしょう(でも地下線は?)


 そこを走る列車類のネーミングは本作特有。
 キハ8兆M、ホキ2億形、キハ500億M、81カシオペアα、など実車をモチーフにしてはいるものの限りなくオリジナルに近いネーミングの編成や車両が登場します。
 (前からキハ82系、ホキ2200、キハ58、カシオペアがモデルかと)
 上記の設定と模型店での価格描写から見てNゲージなのは間違い無いでしょう。

 幼少時の七竈はディーゼル機関車を抱いて寝るほどの鉄道模型好きで模型で顔に傷をつけてしまった過去まで持っているそうですが、Nゲージを抱いて眠るのは相当に無理がありますからそっちはHO以上、おそらくブラスモデルと思われますw

 鉄道模型のでてくる小説としては異色作と思いますしそもそも事件なんか登場しないのですが、鉄道模型をモチーフに使った普通の小説は探せばもっと出てくるかもしれません。



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