マンション住民の方にも関係のあることですが 少々 専門的なことも含む記事です
不動産登記法にも 保存 という用語が 登場します
『マンション法に登場の 保存行為 と 同じということではないですよね ?』
(登記することができる権利等)
第三条 登記は、不動産の表示又は不動産についての次に掲げる権利の保存等(保存、設定、移転、変更、処分の制限又は消滅をいう。次条第二項及び第百五条第一号において同じ。)についてする。
一 所有権
二 地上権
三 永小作権
四 地役権
五 先取特権
六 質権
七 抵当権
八 賃借権
九 配偶者居住権
十 採石権(採石法(昭和二十五年法律第二百九十一号)に規定する採石権をいう。第五十条及び第八十二条において同じ。)
というようなことで ここでの 保存とは [登場させる] というようなこと といえるでしょう
〔専門的な説明は省かせていただきます〕
昨日も [不動産登記法]関係の問題について 記したのでしたが
質問が多い点を ウッカリして 載せていませんでした
『 建物の表題登記をした場合に 敷地権の登記をしたときは 登記官が職権で 敷地権
の目的である土地の登記記録中の相当する区に[敷地権である旨の登記]というもの
をする ということですけれど どんなことが示されるのですか ? 』
という質問
例えば
甲区 2番 所有権移転 所有者 Y建設
3番 所有権敷地権 建物の表示 ○○区西町二丁目2番地3
一棟の建物の名称 西町マンション
平成30年11月15日登記
というような登記記録 で 土地の登記記録の権利の部になされます
この例では 所有権敷地権なので 甲区 ですが 地上権・賃借権ならば 乙区
です
この[敷地権である旨の登記]がなされると その後 その土地の登記記録には
原則として 一切の記入が禁止されます
念のためですが
[敷地権の目的である土地の表示] は (一棟の建物の表示) の下に
[敷地権の表示] は (専有部分の建物の表示) の下に
建物の 表題部 にされます
ですが
[敷地権である旨の登記] は
土地の登記記録の 権利の部(甲区 か 乙区) にされます
不動産登記規則(敷地権である旨の登記)
第百十九条 登記官は、法第四十六条の敷地権である旨の登記をするときは、次に掲げる事項を敷地権の目的である土地の登記記録の権利部の相当区に記録しなければならない。
一 敷地権である旨
二 当該敷地権の登記をした区分建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、
字及び土地の地番
三 当該敷地権の登記をした区分建物が属する一棟の建物の構造及び床面積又は当該一棟
の建物の名称
四 当該敷地権が一棟の建物に属する一部の建物についての敷地権であるときは、当該一
部の建物の家屋番号
五 登記の年月日
『 不動産登記法の73条3項についてですが
質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記となっていますが ナゼ 先取特権は登場
していないのでしょう ? 』
という質問
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(敷地権付き区分建物に関する登記等)
第七十三条
3 敷地権付き区分建物には、当該建物のみの所有権の移転を登記原因とする所有権の登
記又は当該建物のみを目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない。
ただし、当該建物の敷地権が生じた後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合
を除く。)又は当該建物のみの所有権についての仮登記若しくは当該建物のみを目的とする
質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって当該建物の敷地権が生ずる前にその登
記原因が生じたものは、この限りでない。
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まず (分離処分禁止の場合を除く。)という 条文の中でワカリニクイ?ことの意味です
が 自身の基本書によると 【建物と敷地権とが分離して処分される結果となっても、区分
所有法上の分離処分禁止に当たらない場合をいう。】と あります
さて
先取特権といっても 特別の先取特権(不動産保存および不動産工事の先取特権←保存や
工事をした者の債権についてその不動産から優先弁済を受ける)についてはどうでしょう ?
結論を言えば 特別の先取特権は 性質上 法定担保物権として建物のみについて発生して
いるものなのだから その発生が敷地権の登記の前であっても後であっても 建物のみにつ
いて登記ができるもの
(ソモソモ 建物だけに関してのことなので)
この条文に登場していません
それなので 質権若しくは抵当権 とは 当然 権利の性質上 扱いが異なっています
『「一般の先取特権」は どうでしょう ?なぜ ただし に登場しないのでしょう?』
という質問
〔ちなみに 73条1項 には登場していますね ← 敷地権付き区分建物に登記すれ
ば 敷地権である旨の登記をした土地の敷地権についてされた登記でもあるとの効力
が 有ることになるのか否か
についての条文〕
(敷地権付き区分建物に関する登記等)
第七十三条
敷地権付き区分建物についての所有権又は担保権(一般の先取特権、質権又は抵当権をいう。
以下この条において同じ。)に係る権利に関する登記は、第四十六条の規定により敷地権で
ある旨の登記をした土地の敷地権についてされた登記としての効力を有する。ただし、次に
掲げる登記は、この限りでない。
もう お気づきの方も多いでしょうが 一般の先取特権は 法律上債務者の[総財産(一般
財産すべて)]に生じるのであって建物のみに設定されるということはあり得ないので その
発生の原因が 敷地権の登記がされる前 であったとしても建物と敷地権を目的にして登記
をすればよいことになります(建物だけに か 土地も か などという判断を要しない
というようなこと)
〔敷地権の登記がなされた後に 建物のみ とか 土地のみ に一般の先取特権保存の登記
をする実益があるわけではないので〕
ということで 繰り返しにもなりますが
ポイントだけをいうと
[特別の先取特権保存(不動産保存および不動産工事先取特権)の登記]は そもそもその
原因が建物についてのみ発生してのこと(例えば 建物を修繕した場合の不動産保存の先取
特権<民法326>は建物のみに存在する) なので [のみ付記]がされなくても登記の
効力は建物にしか及ばないのだから
ということ
それと
[一般の先取特権の登記]は ソモソモ 全財産 が目的の担保物権なので 建物のみを目的
とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない のかどうか のことなど問題に
しなくてよい
ということ
なので この条文に登場していません
『 抵当権に係る権利に関する登記であって当該建物の敷地権が生ずる前にその登記原因が生
じたものは、この限りでない というと 登記できたその後 その抵当権は ソノママ ?
なのですか
どのような流れになるのですか ?』
という質問
73条3項の条文[ 抵当権に係る権利に関する登記であって当該建物の敷地権が生ずる前に
その登記原因が生じたものは、この限りでない。]から 建物のみを目的とする抵当権の登記
は受理され 敷地権の表示がされてもそれまでにされた権利の登記に何ら影響を及ぼすことは
ない
その後に 抵当権の実行をする場合 抵当権の目的となる不動産は建物のみで建物のみの差押
えの登記をすることになる(差押えの登記までは許される)
そうして 敷地権の登記がある限り 土地・建物の分離しての所有権移転はできないのだから
敷地権の表示の登記の抹消をしない限り 買受人への所有権移転登記はできない
『 敷地権が無くなるというようなことは あるのですか ? 』
という質問
敷地権が消滅するのは 敷地権である地上権・賃借権の契約を解除した場合など
敷地権が敷地権でない権利となった場合としては 分離処分を可能とする規約が設定された
ときや
規約敷地についてその規約が廃止されたとき
敷地権付き区分建物が合体や合併(工事をして物理的な変更をするか しないで登記上で一
つの建物にするかにより区別される)によって非区分所有建物になった場合
など です
あくまで 参考に
ということで 法律的な用語で統一の説明 ということに あまりコダワラナイで 少しでも
わかりやすいようになれば という趣旨で記したつもりですが・・・
みなさんも 調べてみてください( 特に受験生の方は スケジュールを考え 必要があると思
う方は です <そもそも 出題数も一問で この範囲が問われるとは限らないので> )
土地のみの所有権移転(仮登記ではなく本登記)建物のみの所有権移転(仮登記ではなく本登記)
は 敷地権の表示の登記がある限り 原則としてすることができない
(ということは 本登記をするには 敷地権の表示の登記の抹消をしてからとなる)
(というようなことだけで 答えをだせる問題もあります)
何度か申し上げていますが 73条関連のマンション管理士試験問題対応は まず 条文の文言
を徹底解釈し なお ナゼ が続く場合は 学習スケジュールを崩さないレベルでその追究へ進
んでみる というレベルが好いのでは と 思われます(要するに 基本をさらに波及させての
学習となると ナカナカ 手ごわいところが多いので そのように考えます)
もっとも 一度追究して理解の域にたどりついておけば 後々の不安感は そうとうに減少する
と思われますが(費やすエネルギー と 得点効率 とのバランスのことの決断を要しますね)
モチロン このあたりの理解は バッチリ という方も 多いのかもしれませんが
ということで このあたりで 止めます
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不動産登記法
(敷地権付き区分建物に関する登記等)
第七十三条 敷地権付き区分建物についての所有権又は担保権(一般の先取特権、質権又は抵当権をいう。以下この条において同じ。)に係る権利に関する登記は、第四十六条の規定により敷地権である旨の登記をした土地の敷地権についてされた登記としての効力を有する。ただし、次に掲げる登記は、この限りでない。
一 敷地権付き区分建物についての所有権又は担保権に係る権利に関する登記であって、区分建物に関する敷地権の登記をする前に登記されたもの(担保権に係る権利に関する登記にあっては、当該登記の目的等(登記の目的、申請の受付の年月日及び受付番号並びに登記原因及びその日付をいう。以下この号において同じ。)が当該敷地権となった土地の権利についてされた担保権に係る権利に関する登記の目的等と同一であるものを除く。)
二 敷地権付き区分建物についての所有権に係る仮登記であって、区分建物に関する敷地権の登記をした後に登記されたものであり、かつ、その登記原因が当該建物の当該敷地権が生ずる前に生じたもの
三 敷地権付き区分建物についての質権又は抵当権に係る権利に関する登記であって、区分建物に関する敷地権の登記をした後に登記されたものであり、かつ、その登記原因が当該建物の当該敷地権が生ずる前に生じたもの
四 敷地権付き区分建物についての所有権又は質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって、区分建物に関する敷地権の登記をした後に登記されたものであり、かつ、その登記原因が当該建物の当該敷地権が生じた後に生じたもの(区分所有法第二十二条第一項本文(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定により区分所有者の有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない場合(以下この条において「分離処分禁止の場合」という。)を除く。)
2 第四十六条の規定により敷地権である旨の登記をした土地には、敷地権の移転の登記又は敷地権を目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない。ただし、当該土地が敷地権の目的となった後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)又は敷地権についての仮登記若しくは質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって当該土地が敷地権の目的となる前にその登記原因が生じたものは、この限りでない。
3 敷地権付き区分建物には、当該建物のみの所有権の移転を登記原因とする所有権の登記又は当該建物のみを目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない。ただし、当該建物の敷地権が生じた後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)又は当該建物のみの所有権についての仮登記若しくは当該建物のみを目的とする質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって当該建物の敷地権が生ずる前にその登記原因が生じたものは、この限りでない。
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