なんとも衝撃的なタイトルの一冊。各章のタイトルにも「!」マークが頻出しています(笑)。
部下なし管理職が生き残る51の方法
麻野進著 東洋経済新報社 1400円+税
著者の麻野さんは、中高年管理職問題を専門とする人事コンサルタント、特定社会保険労務士。
自ら部下をリストラした経験とともに、自身が会社からリストラされた経験を持たれているとのこと。
生々しい事例も、麻野さんの経験、体験から導き出されたものだと思います。
第2章の「時間の問題!こんな正管理職は外される」のセッションでは、
「ナニナニ課長」というネーミングがなかなか秀逸・・・胸が痛みます(笑)。
・丸投げ課長
・抱え込み課長
・評価修正課長
・ナメられ課長
・ナメてる課長
・コピペ課長
・残業放置課長
・悪評課長
・囲い込み課長・・・
確かに、組織にとって、こんな課長は、不要ですよね。
そもそも、部下なし管理職が存在し始めたのは、複線型人事制度、職能資格制度が日本企業に普及し始めてからのこと。
ライン管理職のポストが不足し始め、管理職以外の第2の処遇のため、専任職、エキスパート職、主査、担当課長などのポストを作ったことに始まります。
専門職、スペシャリスト職も、その運用が難しく、ある意味、部下無管理職の一種ということが出来ます。
ライン管理職より少ないながらも管理職手当も付き、賞与評価も一般社員とは異なるスケールで査定されます。
ただ、急速な社員の平均年齢の高齢化により、部下無管理職が蔓延しているのも事実。
給料、基本給が上昇が見込めなくなった若手社員にとっては、まさに「敵」・・・です。
昔あげた成果、実績の反対給付として、役割<給与ながらも職場に君臨しているのです。
目次
第1章 部下なし、責任なし、権限なし・・・なのに、なぜ管理職なのか
第2章 時間の問題!こんな正管理職は外される
第3章 ヤバイぞ!こんな部下なし管理職
第4章 この17の知恵で生き残れ!
第5章 これが部下なしメリット。この17を頭に叩き込め!
第6章 部下無限定 17のセルフマネジメント
終章 ぶらさがるな!しがみつけ!
あれっと思ったのが、「17」という数字。
17の知恵、17のセルフマネジメント・・・。
これは、聖徳太子の17条の憲法に見られるよう、日本におけるパーフェクトな数字の一つと言われています。
著者のこだわりがあるのでしょう。
著者は、部下なし管理職の働き方として、3つを提示します。
当たり前の話なのですが、それが本人のプライドや加齢によるモチベーション低下、体力低下でなかなかうまく発揮されていないのが実情だと思います。
1. いち担当者として、自身に与えられた業務に専念すること 最低限課長を上回る成績が必要・・・
2. これまで培ってきた経験、専門性を持って、会社から与えられた特任業務を遂行すること
3. 正管理職のサポート役になること・・・新任課長の後見人、課長のミスをカバー・・・
そして、最終章では、「ぶらさがるな!しがみつけ!」と助言。
ぶらさがり・・・支給されている給料に比べて会社業績に対する貢献意欲が低く、法律や会社の労務管理ルールに守られて辞めないで済んでいる社員。現実逃避の人。
しがみつき・・・給料に比べて会社業績に対する貢献意欲が低いというところまでは同じだが、会社に対する執着度合が違う社員。忠誠心がなく恨みを持つブラック社員と、高い忠誠心と滅私奉公で組織貢献するホワイト社員に分類される。
なかなか鋭い分類・・・です。
滅私奉公、忠誠心、真面目な勤務態度、一所懸命・・・ニッポンのサラリーパースンの歴史と伝統。
結果がでなくとも、その努力が全否定されないという会社の風土は、まだまだ残っているような気もします。
ただ、その努力の方向が全く違うというパターンをよく見ますが、それはラインのマネジャーが修正指示を出し、それを素直に聞けるかどうかということ。
万年係長でも万年課長でも、この「しがみつき」のスタンスは有効であるように思います。
最後に、中高年のサバイバル活動として、次の3点を取り上げています。
1. 豊富な社内、社外人脈
2. これまで培ってきた知識、スキル、経験の更新
3. 自身の強みの発見と強化
中高年社員、雇用延長で働くシニア社員は、もう一度、組織への貢献、後進へのバトンタッチという観点から仕事への姿勢、進め方、成果のとらえ方等を再定義し、行動に移していくことが必要であると考えた次第です。
ニッポン株式会社の管理監督者として組織貢献してきた方々に、ぜひ一読いただきたい一冊。
日本の企業組織ならではの「高齢化」という大きな課題。
麻野さんの次に出される続編にも期待です。