企業の成長過程は、ラリー・グレーナーが分析、モデル化したように、紆余曲折を経ながら成長していくとされています。
まずは、リーダーシップの危機・・・起業家・オーナーであるワンマン社長の限界にぶちあたります。
そして、限りある経営資源の奪い合い・・・
全体最適を取ることが難しくなり部分最適に陥る・・・
組織の官僚化、大企業病が始まる・・・
単独成長の限界・・・
企業アイデンティティ喪失の危機・・・。
この様々な障害や壁を克服していくため、成長の各段階で様々な処方箋があることをグレーナーは指摘します。
1. 創造力の発揮
2. マネジャーの登用 組織としてのマネジメント体制の確立
3. 部門と職能 それぞれの仕事の専門化
4. 報告、調整 社内外の変化への対応
5. 信頼と協調 シナジー効果を生み出す
6. 提携やM&A
今回取り上げる本は、小さな会社を、企業化するための戦略を解説した一冊。
中小企業診断士業界を代表する小林さん、波方さんが編著者となり、お弟子さんの中小企業診断士19名により書かれたものです。
同書のコアとなるのは、第3章。店舗の企業化戦略のセッションだと思います。
生業として比較的順調に業績を積み重ねてきた小売店が次、どうするか?・・・そのポイントが解説されています。
小さな企業を「企業化」する戦略 生業小売・サービス業からの成長プロセス
小林勇治・波方克彦編著 同文館 1850円+税
目次
序章 小規模企業を企業化するためのビジョンの策定
第1章 営業の企業化戦略
・個性ある業態を明確に打ち出す
・多店舗化経営を志向する
・顧客の経験価値を高めて優良顧客化する
第2章 商品・サービスの企業化戦略
・品揃えミックスで差別化を図る
・二店目の出店計画
・三店目からの仕組みづくりと業種、業態変更
・オムニチャネル、リテーラ化を推進する
第3章 店舗の企業化戦略
第4章 労務の企業化戦略
・給与等の待遇は平均より少しよくする
・業務は担当を決めて責任をもたせる
・早い時期に将来の幹部を育てる
第5章 財務の企業化戦略
第6章 ITの企業化戦略
同書のコアとなる第3章。
店舗の企業化戦略のキーワードは、次のようなものです。
・2店目で失敗する会社が多い
・路面店での成功の条件…立地、人材育成、資金調達
・百貨店やショッピングセンターへの出店
・ECモールへの出店のメリット、欠点
・3店舗目からの仕組みづくりと業種、業態変更・・・ドミナント戦略、在庫管理や物流体制の整備、オペレーションの標準化、業種業態変更による売上拡大
さらに、最新情報としてのオムニチャネル化、リテーラ化、ショールーミング対応、O2O対応についても、具体的な助言がまとめられています。
2店目、3店目への事業拡大は、決してギャンブルであってはなりません。
顧客に向かった独自の経営理念、ビジョンを掲げるとともに、「マザー」店舗を確立し、オペレーション機能、ロジスティクス機能などにも創意工夫をほどこし、ICTをフル活用していく・・・そのマネジメントが企業の生死を決定づけると言えると思います。
経営の原理原則を、今一度見直したい小売業やサービス業に携わっている方々に一読いただきたい一冊です。