能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

小さな企業を「企業化」する戦略 2店舗目で失敗する企業が多い・・・中小企業診断士の実戦実務ノウハウ集

2015年01月06日 | 本と雑誌

企業の成長過程は、ラリー・グレーナーが分析、モデル化したように、紆余曲折を経ながら成長していくとされています。

まずは、リーダーシップの危機・・・起業家・オーナーであるワンマン社長の限界にぶちあたります。

そして、限りある経営資源の奪い合い・・・

全体最適を取ることが難しくなり部分最適に陥る・・・

組織の官僚化、大企業病が始まる・・・

単独成長の限界・・・

企業アイデンティティ喪失の危機・・・。

 

この様々な障害や壁を克服していくため、成長の各段階で様々な処方箋があることをグレーナーは指摘します。


1.  創造力の発揮

2.  マネジャーの登用 組織としてのマネジメント体制の確立

3.  部門と職能 それぞれの仕事の専門化

4.  報告、調整 社内外の変化への対応

5.  信頼と協調 シナジー効果を生み出す

6.  提携やM&A

 

今回取り上げる本は、小さな会社を、企業化するための戦略を解説した一冊。

中小企業診断士業界を代表する小林さん、波方さんが編著者となり、お弟子さんの中小企業診断士19名により書かれたものです。

同書のコアとなるのは、第3章。店舗の企業化戦略のセッションだと思います。

生業として比較的順調に業績を積み重ねてきた小売店が次、どうするか?・・・そのポイントが解説されています。

 

小さな企業を「企業化」する戦略 生業小売・サービス業からの成長プロセス

小林勇治・波方克彦編著   同文館   1850円+税

 

目次

序章 小規模企業を企業化するためのビジョンの策定

第1章 営業の企業化戦略

 ・個性ある業態を明確に打ち出す

 ・多店舗化経営を志向する

 ・顧客の経験価値を高めて優良顧客化する

第2章 商品・サービスの企業化戦略

 ・品揃えミックスで差別化を図る

 ・二店目の出店計画

 ・三店目からの仕組みづくりと業種、業態変更

 ・オムニチャネル、リテーラ化を推進する

第3章 店舗の企業化戦略

第4章 労務の企業化戦略

 ・給与等の待遇は平均より少しよくする

 ・業務は担当を決めて責任をもたせる

 ・早い時期に将来の幹部を育てる

第5章 財務の企業化戦略

第6章 ITの企業化戦略

 

同書のコアとなる第3章。

店舗の企業化戦略のキーワードは、次のようなものです。


・2店目で失敗する会社が多い

・路面店での成功の条件…立地、人材育成、資金調達

・百貨店やショッピングセンターへの出店

・ECモールへの出店のメリット、欠点

・3店舗目からの仕組みづくりと業種、業態変更・・・ドミナント戦略、在庫管理や物流体制の整備、オペレーションの標準化、業種業態変更による売上拡大


さらに、最新情報としてのオムニチャネル化、リテーラ化、ショールーミング対応、O2O対応についても、具体的な助言がまとめられています。

 

2店目、3店目への事業拡大は、決してギャンブルであってはなりません。

顧客に向かった独自の経営理念、ビジョンを掲げるとともに、「マザー」店舗を確立し、オペレーション機能、ロジスティクス機能などにも創意工夫をほどこし、ICTをフル活用していく・・・そのマネジメントが企業の生死を決定づけると言えると思います。

経営の原理原則を、今一度見直したい小売業やサービス業に携わっている方々に一読いただきたい一冊です。


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