未来企業 レジリエンスの経営とリーダーシップ
リンダ・グラットン著
吉田晋治訳
プレジデント社 2000円+税
目次
第1部 変化を糧に成長する企業とは
第2部 内なるレジリアンスを高める
第3部 社内と社外の垣根を取り払う
第4部 グローバルな問題に立ち向かう
第5部 リーダーシップを再定義する
リンダ・グラットンさんは、一昨年ブレークした「ワーク・シフト」の著者。
ロンドン・ビジネススクール教授。
前著は、スピードを上げながら進むグローバル化、IT化の中で我々の仕事は、どう変化していくのかを具体的な事例を交えて解説した一冊でした。
今回出版された「未来企業」は、その企業版。
大きな変化の中で、企業は、どう変わっていかなければならないかを「レジリエンス」「リーダーシップ」というキーワードとしてあるべき姿を提言していきます。
原書のタイトルは、「The KEY」。
未来をこじ開ける「鍵」・・・こっちのタイトルの方が売れたかもしれません(笑)。
著者は、世界の大きな変化、潮流を次の7つのキーワードで説明します。
1. 商品と労働のグローバル市場のバランス変化
2. 人間と仕事が高度につながった社会
3. 有能な人材の偏在
4. 労働の空洞化
5. スキルギャップの拡大
6. 貧困と格差
7. 超異常気象
経済学者ピケティも指摘する格差問題、そして、世界的に何が起こってもおかしくない超異常気象が入っているところも、とてもリアリスティックです。
この中を生き延びていく企業に求められるものは、3つのレジリエンス。
レジリエンスとは、復元力、回復力、リカバリー力といった意味になるのでしょうか。
1. 内なるレジリエンスを高める・・・知性と知恵の増幅・精神的活力を高める・社会的なつながりをつくる
2. 社内と社外の垣根を取り払う・・・よき隣人としての行動規範・サプライチェーン
3. グローバルな問題に立ち向かう・・・研究開発とイノベーション・展開力と動員力・ステークホルダーとの協力
そして、未来企業をけん引していくのは、文字通り、その組織のリーダー。
旧来のリーダーシップとは異なるパワーが必要と説きます。
そのリーダー育成の視座、方法論について、ロイヤルダッチシェル社、LG社の事例を交えて解説。
20歳代の若い方には、ぜひ「第13章 世界を見据える視座を持つ」を一読いただきたいと思います。
268ページから数十ページ・・・立ち読み、速読で大丈夫だと思います(笑)。
企業は、環境適応業と言われていますが、これからはレジリエンスが重要と説く同書。
これはある意味、オプティミズム(楽観主義)や「まっ、いいか」の鈍感力が必要であるような気もします。
ただ、最近の食品異物混入で売上が激減しているファーストフード店やインスタント食品メーカーで、レジリエンスといっても、それはかなり厳しい道のりになるのは確かです。
「別になくても、いいじゃん」というカスタマーの一言で存在意義を失ってしまうのですから・・・。
未来企業、ゴーイングコンサーン・・・それは、限りなく人間に近い組織になるのではないかと思います。