経営学は「お金儲けのための学問」ではなく、「人間を幸せにするための学問」である・・・
忙しい多用な仕事の中では、なかかな考えないことですが、それを思い起こさせてくれる一冊があります。
幸せの経営学 よい未来をつくる理論と実践
酒井穣著 日本能率協会刊 1600円+税
著者の酒井さんは、株式会社BOLBOP代表取締役。
現役の経営コンサルタントです。
人的資源管理論を専門とし、同書の最終章でも独自の人事制度論やリーダーシップ論を展開しています。
なかなか読みごたえのある文章なので、ここだけでも目を通していただけると良いと思います。
「ヒーローズ・ジャーニー」で企業理念を共有化していくというあたりは、人間が主役の企業経営という著者の想いが伝わってきます。
最近、ポジティブ心理学やハピネスアドバンテージ論が流行りはじめ、「幸福」という今まで経営の中であまり取り上げられなかったキーワードが随所で見られるようになりました。
著者は、「幸福の習慣(トム・ラス他著・ディスカバー21刊)」から、人間の幸福の5つの要素を紹介、これに基づきMBAのジャンルに紐づけていきます。
幸福の条件1 仕事のやりがいがあること
幸福の条件2 人間関係が充実していること
幸福の条件3 経済的に満たされていること
幸福の条件4 心身が健康であること
幸福の条件5 地域社会が活性化していること
仕事なんだからしょうがないじゃない・・・給料もらっているんだから・・・社会人は我慢が大事・・・そんな社会の常識と言われたものも、特に若い世代には通用しないですし、また、彼彼女たちに惚れさせる会社組織を作っていかないと、高いパフォーマンスをあげる事が難しくなってきています。
目次
第1章.幸せを生み出す イノベーション論
第2章.幸せを広める マーケティング論
第3章.幸せを支える 財務会計論
第4章.幸せをデザインする 戦略論
第5章.幸せをつくる 人的資源管理論
各章とも、人の「幸せ」を増幅するという目的、ゴールに到達するために存在しているというのは新しい切り口だと思います。
社員、その家族、職場、上司、部下、後輩、取引先や関係会社、顧客、株主、債権者、銀行などのステークホルダーを幸せにするために経営学は存在すべき・・・本当にそのとおりだと思います。
著者は、イノベーションを「1.重要な問題を、2.これまでにないやり方で解決し、3.結果として多くの雇用を生み出す」と定義していますが、この雇用創出という点には大賛同です。
「自社さえよければいい」「自分さえ儲かればいい」・・・そんな時代は過去のものになりつつあります。
わたし自身、すべてのビジネスは、ソーシャルデザイン、ソーシャルビジネスに近づいていくと考えているのですが、やはり「世のため、人のため、社会のために」存在している企業組織しか、社会で生き残ることは出来ないと思っています。
本書を読んでいただきたいのは、今、一番忙しい人。
残業続き、休日出勤、ノー家族サービス、給料が上がらない・・・そんな20歳代後半~30歳代後半の方々に一読いただきたい本です。
酒井さんは、「はじめての課長の教科書」「リーダーシップでいちばん大切なこと」という名著を出されていますが、今回の「幸せの経営学」とともに読んでいただくと良いと思います。