不甲斐ない成績のために、理科系の選択を遮断された西野哲人は、完全に勉強嫌いなっていた。
だが、国語教師であり、文芸評論家であった竹中啓介との出会いから彼は文学に目覚める。
「こんな世界があったのか?」彼は新たに目を見開けた。
国語教科書にはない「チェーホフ文学」の解説講座であった。
西野は、それまで科学雑誌を図書館であさってきた。
彼はチェーホフを読んでみた「子犬を連れた貴婦人」が最初の小説であった。
休暇にきていた妻子持ちの男と子犬を連れた既婚者の貴婦人が旅先でいい雰囲気になり関係を持つという不倫ものではあるんだけど、ただの不倫ものではない。美しくもなく儚くもなく尊くもなく羨ましくもなんともない。
本当の恋を知らぬ16歳の少年西野は、このような文学の表現があるのかと感動する。
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