去年1年間に自殺した人は全体で2万268人と過去最少の水準となった一方で、児童・生徒は527人にのぼり、これまでで最も多くなりました。
悩みを抱える子どもたちをどう支えていくか、今、さまざまな取り組みが進められています。
記事後半には不安や悩みを抱える人の相談窓口を紹介しています。
子どもが匿名で書き込めるインターネット掲示板
家族との関係などに悩む子どもを支援するNPO法人が開設したインターネットの掲示板には、親に言われたことばに傷ついたり周囲に理解してもらえないことを悩んだりする声が連日、書き込まれています。
インターネットを中心に、主に家族関係に悩む子どもたちの支援に取り組んでいるNPO法人「第3の家族」です。子どもたちが匿名で悩みやつらい気持ちを書き込めるインターネットの掲示板を運営しています。
「誰も私のことを心配しなくなり 唯一の味方だったお母さんにも突き放された」
「生きていたいけど、この家族と生きていける気がしない」
「お母さんから抜け出したい」
掲示板には月平均で5000人程度が投稿しているということです。
投稿しているのは中高生が中心で
▽親の価値観の押しつけや行動制限などの過干渉
▽親の不仲
▽ジェンダーの問題や精神疾患を親に理解してもらえない、
などの悩みが多いということです。
また最近は、リストカットや、薬を過剰摂取するオーバードーズをしていることへの悩みの投稿が見られるということです。
去年の自殺者数 児童・生徒は過去最多に
厚生労働省が発表した去年1年間に自殺した人は暫定値で2万268人で、前の年から1569人減少し、昭和53年の統計開始以降、2番目に少なくなりました。
性別でみると男性が1万3763人、女性が6505人となっています。
一方で、児童・生徒は527人にのぼり、これまでで最も多かった令和4年の514人を上回って過去最多となりました。
児童・生徒を年代別に見ると
▽高校生が349人で7割近くを占めたほか
▽中学生が163人
▽小学生が15人となっています。
特に、中学生と高校生の女子の増加が目立ち
▽中学生の女子は前の年より19人増えて99人
▽高校生の女子は前の年より17人増えて183人となりました。
また、原因や動機を年代別に見ると19歳以下は複数回答で
▽学業不振や進路に関する悩みなどの学校問題が349件
▽うつ病などの健康問題が284件
▽親子関係の不和など家庭問題が148件、
などとなっています。
橘官房副長官は29日午前の記者会見で「小学生や中学生、高校生の自殺者数については大変重く受け止めている。子どもの自殺対策は関係省庁が連携して進めており、今年度の補正予算でもSNSを活用した相談体制の強化への支援などに必要な予算を計上し、対応の強化を図っている。今後も子どもの命を守るための取り組みに全力を尽くし、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指していきたい」と述べました。
“寄り添う”支援だけでなく “寄り添わない”支援も
記事冒頭で紹介した主に家族関係に悩む子どもたちの支援に取り組んでいるNPO法人「第3の家族」。
支援者の大人に寄り添われることを好まない子どもたちもいるとして、基本的には投稿を見守り、内容などから虐待の可能性や自殺のリスクが高いと判断された投稿には支援機関や相談先などの情報を表示しています。
掲示板の利用をきっかけに、みずから児童相談所に電話して支援を求める子どもも毎月、数人程度いるということです。
「積極的に相談できない子どもが一定数いて、そうした子どもがどこにも相談できずにいると支援の対象から一気にこぼれ落ちてしまう。寄り添う支援はもちろん大事だが、相談できない子たちのための“寄り添わない”支援も増やしていくことが必要だ」
専門家“社会全体で周囲を考える余裕 なくなっている”
自殺の問題に詳しい南山大学社会倫理研究所の森山花鈴 准教授は「1998年に自殺者が急増した頃は中高年の男性の自殺が多く、失業率や経済の問題と強く相関するというふうに言われてきたが、ここにきて若者の自殺が増えていて、かなり心配されている」としています。
児童・生徒の自殺の増加については、コロナ禍以降、通常の生活を取り戻すことや物価高などの影響で自分の生活に精一杯となり周囲のことまで考える余裕が社会全体でなくなっているとした上で「子どもだけではなく、大人たちもコロナ禍を経て厳しい状況におかれてかなり余裕がない状況になっている。いじめの問題だけではなく親子関係とか進学の悩みなど複合的な要因が増えているのではないか」としています。
その上で「自殺対策は適度な距離感が大切だとされている。子どもにとっては学校や家庭以外に自分の存在を保つ居場所があるということが大切で、弱いつながりであっても、たくさんのつながりがあることがセーフティーネットになりうる」と話していました。
《不安や悩みを抱える人の相談窓口》
◇SNSなどの相談窓口
厚生労働省のホームページ「まもろうよこころ」では電話相談窓口やLINEなどのSNSやチャットで相談できる団体を紹介しています。
URLは以下です。
https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
◇24時間対応している主な相談窓口
▽「よりそいホットライン」
電話:0120-279-338
▽「24時間 子供SOSダイヤル」
電話:0120-0-78310
▽チャット相談窓口「あなたのいばしょチャット相談」URLは以下です。
https://talkme.jp/
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