「事実」、言い換えれば「現実のフィードバックの洗礼で磨かれた知恵」を何よりも重視する。
学術理論、自分の信念や思い、権威の意見は、うっかり頼ると高い確率で現実無視の迷妄の世界に入ってしまう。
文系学問にも物理学くらいの精度があればいいのだが、それは原理的に望めない。
民主主義的判断はどうか。
かつて悲惨な敗戦の洗礼を受けた世代は、大なり小なり「現実に磨かれた知恵」を共有するに至った。
それゆえに戦後日本社会は、人権尊重、平和希求、国威発揚よりも民生重視、格差の少ない横並びの発展を理念に掲げ、先進国レベルへの経済成長と長寿と、治安の安定と国際的なブランドの向上を同時に達成できた。
つまり戦争経験世代の民主主義的な判断は、多くの点で正しかったわけだ。
トランプ政権の発足も、ベトナム戦争経験者が消えつつあることと連動している。
現場を知らぬ層が事実のフィードバックを無視して下す決定は、かなりの確率で間違える。
世の多数派が、現実の教訓に学んだ冷静な判断を下せるかどうかを「民度」と呼ぶのであり、これを高くするのは、文字よりも実測数字、デスクワークよりも現場経験に学ぶ姿勢都訓練を、世に広げるしかない。
常に現場に立って土俵を設定し、現実のフィードバックに学んで判断する。
民度の技術力も経済力も「国力」も、上げ方は同じだ。
毎日新聞「時代の風」
日本総合研究所主任研究員・藻谷浩介さん
学術理論、自分の信念や思い、権威の意見は、うっかり頼ると高い確率で現実無視の迷妄の世界に入ってしまう。
文系学問にも物理学くらいの精度があればいいのだが、それは原理的に望めない。
民主主義的判断はどうか。
かつて悲惨な敗戦の洗礼を受けた世代は、大なり小なり「現実に磨かれた知恵」を共有するに至った。
それゆえに戦後日本社会は、人権尊重、平和希求、国威発揚よりも民生重視、格差の少ない横並びの発展を理念に掲げ、先進国レベルへの経済成長と長寿と、治安の安定と国際的なブランドの向上を同時に達成できた。
つまり戦争経験世代の民主主義的な判断は、多くの点で正しかったわけだ。
トランプ政権の発足も、ベトナム戦争経験者が消えつつあることと連動している。
現場を知らぬ層が事実のフィードバックを無視して下す決定は、かなりの確率で間違える。
世の多数派が、現実の教訓に学んだ冷静な判断を下せるかどうかを「民度」と呼ぶのであり、これを高くするのは、文字よりも実測数字、デスクワークよりも現場経験に学ぶ姿勢都訓練を、世に広げるしかない。
常に現場に立って土俵を設定し、現実のフィードバックに学んで判断する。
民度の技術力も経済力も「国力」も、上げ方は同じだ。
毎日新聞「時代の風」
日本総合研究所主任研究員・藻谷浩介さん