「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2013・07・01

2013-07-01 09:00:00 | Weblog
今日の「お気に入り」は、中野孝次さん(1925-2004)の著書「ローマの哲人 セネカの言葉」より。

 「 何はさておき君にして欲しいのは、ルキリウス君、喜ぶことを学べ!です。
                                   『手紙』23-3」

 「 信じてほしい、真の喜びとはまじめなものなのです。          『手紙』23-4

  まじめなというのは、真に心の内から湧く喜びは、何にも奪われず妨げられず、貧困や死さえもそれを奪

 うことができぬほどのものだということだ。それに反し、肉体の喜びや、他から与えられた笑いなどは、死

 だとか貧困の影がさしたとたんに消えうせるほどはかない、根なし草の喜びにすぎない。それは鉱山にたと

 えれば、地表の浅いところにあるもので、真の喜びは地層深くに埋蔵されているとして、こう言う。」

 「 だから、ルキリウス君、それだけが人を幸福に為しうることだけを為せ。表面が輝いているもの、他人に

 よって与えられたもの、自分の権能外で約束されたものは、たたき壊し、踏み潰せ。真の善を見つめ、君だ

 けのものを喜べ。『君だけのもの』とは何かと聞くのですか? それは君自身、君の最良の部分です。

                                   『手紙』23-6」

 「 なぜと言って、不幸を先に呼びよせる必要がありますか。やって来たらすぐにも苦しまねばならぬものを

 先取りする必要が。未来に対する不安によって現在を台無しにする必要が。君がいつか不幸になるかもしれ

 ぬという理由で今から不幸になるのは、疑いもなくバカげたことです。

  しかし僕は別の道をとって君を心の平安に導こうと思う。君があらゆる心配事を取り除(の)けたいのなら、

 君がいま怖れていることはみな、いつかは起りうることだと思うのです。またその禍が何であれ、あらゆる

 側からよく観察して、君の恐怖を査定してみるのです。そうすれば君の恐怖の対象は、大したものでないか、

 長続きはしないものだということがわかるでしょう。
                                   『手紙』24-2」


  (中野孝次著「ローマの哲人 セネカの言葉」岩波書店刊 所収)


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