今日の「お気に入り」は、中野孝次さん(1925-2004)の著書「ローマの哲人 セネカの言葉」より。
「 何はさておき君にして欲しいのは、ルキリウス君、喜ぶことを学べ!です。
『手紙』23-3」
「 信じてほしい、真の喜びとはまじめなものなのです。 『手紙』23-4
まじめなというのは、真に心の内から湧く喜びは、何にも奪われず妨げられず、貧困や死さえもそれを奪
うことができぬほどのものだということだ。それに反し、肉体の喜びや、他から与えられた笑いなどは、死
だとか貧困の影がさしたとたんに消えうせるほどはかない、根なし草の喜びにすぎない。それは鉱山にたと
えれば、地表の浅いところにあるもので、真の喜びは地層深くに埋蔵されているとして、こう言う。」
「 だから、ルキリウス君、それだけが人を幸福に為しうることだけを為せ。表面が輝いているもの、他人に
よって与えられたもの、自分の権能外で約束されたものは、たたき壊し、踏み潰せ。真の善を見つめ、君だ
けのものを喜べ。『君だけのもの』とは何かと聞くのですか? それは君自身、君の最良の部分です。
『手紙』23-6」
「 なぜと言って、不幸を先に呼びよせる必要がありますか。やって来たらすぐにも苦しまねばならぬものを
先取りする必要が。未来に対する不安によって現在を台無しにする必要が。君がいつか不幸になるかもしれ
ぬという理由で今から不幸になるのは、疑いもなくバカげたことです。
しかし僕は別の道をとって君を心の平安に導こうと思う。君があらゆる心配事を取り除(の)けたいのなら、
君がいま怖れていることはみな、いつかは起りうることだと思うのです。またその禍が何であれ、あらゆる
側からよく観察して、君の恐怖を査定してみるのです。そうすれば君の恐怖の対象は、大したものでないか、
長続きはしないものだということがわかるでしょう。
『手紙』24-2」
(中野孝次著「ローマの哲人 セネカの言葉」岩波書店刊 所収)
「 何はさておき君にして欲しいのは、ルキリウス君、喜ぶことを学べ!です。
『手紙』23-3」
「 信じてほしい、真の喜びとはまじめなものなのです。 『手紙』23-4
まじめなというのは、真に心の内から湧く喜びは、何にも奪われず妨げられず、貧困や死さえもそれを奪
うことができぬほどのものだということだ。それに反し、肉体の喜びや、他から与えられた笑いなどは、死
だとか貧困の影がさしたとたんに消えうせるほどはかない、根なし草の喜びにすぎない。それは鉱山にたと
えれば、地表の浅いところにあるもので、真の喜びは地層深くに埋蔵されているとして、こう言う。」
「 だから、ルキリウス君、それだけが人を幸福に為しうることだけを為せ。表面が輝いているもの、他人に
よって与えられたもの、自分の権能外で約束されたものは、たたき壊し、踏み潰せ。真の善を見つめ、君だ
けのものを喜べ。『君だけのもの』とは何かと聞くのですか? それは君自身、君の最良の部分です。
『手紙』23-6」
「 なぜと言って、不幸を先に呼びよせる必要がありますか。やって来たらすぐにも苦しまねばならぬものを
先取りする必要が。未来に対する不安によって現在を台無しにする必要が。君がいつか不幸になるかもしれ
ぬという理由で今から不幸になるのは、疑いもなくバカげたことです。
しかし僕は別の道をとって君を心の平安に導こうと思う。君があらゆる心配事を取り除(の)けたいのなら、
君がいま怖れていることはみな、いつかは起りうることだと思うのです。またその禍が何であれ、あらゆる
側からよく観察して、君の恐怖を査定してみるのです。そうすれば君の恐怖の対象は、大したものでないか、
長続きはしないものだということがわかるでしょう。
『手紙』24-2」
(中野孝次著「ローマの哲人 セネカの言葉」岩波書店刊 所収)