「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

子に楽をさせるな 2013・07・14

2013-07-14 08:00:00 | Weblog

 今日の「お気に入り」は、中野孝次さん(1925-2004)の著書「ローマの哲人 セネカの言葉」より。

  「 美食は避けよ、人間をだらけさせてしまうような軟弱な幸福を避けよ。人間の運命を思い起させる

   ようなことが何一つ起らないなら、人はいつも酔生夢死の状態でぼうっとしたままです。つねに窓

   ガラスで隙間風から守られている人、両脚を何度でも取り替える温クッションで温められている人、

   食堂は、床も壁も循環式熱風で温められている人――こんな人はほんの軽い風の一吹きでも危険に

   陥ってしまうでしょう。

    限度を越えたものはすべて害がありますが、わけても特に危険なのは幸福の過剰です。それは脳を

   刺戟し、心を埒もない空想に誘い、正邪の境に濃い霧をひろげる。それならばいっそ、心の抵抗力

   の助けによって絶え間のない不幸に堪えた方が、限度を知らぬ幸福で張り裂けてしまうより、どん

   なにいいかしれないではありませんか? 満腹して腹がはじけて死ぬより、飢餓による死の方が楽

   です。
                                『神意について』4-9・10 」

   ( 中野孝次著「ローマの哲人 セネカの言葉」岩波書店刊 所収 )

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