「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2013・07・05

2013-07-05 08:00:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、中野孝次さん(1925-2004)の著書「ローマの哲人 セネカの言葉」より。

 「 決して、自分の幸運に依存しているような人間を、幸福だなどと思ってはならない。外から来た

  物事を喜んでいる人は、壊れやすい基礎に家を建てているようなものです。外からやって来た喜び

  は、来た時と同じくすぐに去ってしまう。これに反して、自分の内から湧いてきた喜びは、信頼で

  き、確かです。それは成長し、人生の終りまで我々に同行する。
                                   『手紙』98-1」

 「 運命が我々に善いものと悪いものを分ち与えるのだ、と考えるような人は、ルキリウス君、間違

  っているのだ。与えられたのは、善いもの悪いものの材料だけです。我々の責任において悪にも善

  にも転じてゆく物の、前提があるだけだ。だが、あらゆる運命のはからいより強いのは、人間の精

  神です。精神が物事を善悪いずれの方向へも導くのであって、精神こそ幸福な人生の、あるいは惨

  めな人生の原因なのです。
                                   『手紙』98-2」

   ( 中野孝次著「ローマの哲人 セネカの言葉」岩波書店刊 所収 )


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