八重山に大津波が押し寄せてきたのは、前回の拙ブログで書かせていただいたが、兄妹で始祖となったという伝説があって、神話的に非常に興味深いものがある。なんらかの原因で二人きりになった一組の男女が、島にたどり着いて、その島の始祖となったという話である。
私的に非常に興味がある。なぜか。バイブルの話と一緒だからである。創世神話である。それと大津波がかかわっているのである。
鳩間島の事例が物語る。大津波が襲ってきて、鳩間中森に登った兄妹のみが助かったという創世神話がある。大津波は天災であり、神話のモチーフとして多くの事例が残されている。特に、宮古島や八重山諸島に多い。
神話学者のヴァルクが、非常に貴重な研究をしていて類型化しているのだが、下に紹介しておく。今後の課題探求のためにも。
① 一面の大海に小島ができて、始祖が降臨するもの
② 雷神と地神との間で争いが起きて、小舟に乗った兄妹が始祖となるもの
③ 洪水の原因は不明だが、やはり小舟に乗った兄妹が始祖となるもの
④ 神による懲罰として洪水が起こるというもの
(ヴァルクの『兄弟始祖洪水神話の四類型』)
この観点から考えていくと、八重山諸島の神話にはどれもと言っては言い過ぎであることは承知の上で、「大津波」の意図が隠されている。世界のどの神話にもその傾向は見られるのであるが、八重山では小浜島と石垣島の宮良に明和の大津波があって、それによる強制移住があったという史実との関わりである。
八重山のフォークロアを考える上で見逃せないことである。