と~ま君の部屋

楽しい老後を送りたいとやっています。所詮人生回り道。修士(人間学、仏教学)。ぼけ防止・脳のリハビリでやってるブログです。

「魂のゆくえを見つめて~柳田国男 東北をゆく」を拝見して

2012年07月22日 23時53分51秒 | 大学院博士ごっこ2012年から2015年

 普段あまりテレビを見ないが、今日のNHKの番組には感動してしまった。

 東北は他人事ではないからである。愚生の出身地であるからだ。叔父叔母も、宮城県におる。震災の時は、非常に心配したのであるが、今日のNHKの番組は考えさせられてしまった。

 柳田国男と折口信夫という両碩学の話もメインであったから、なおのことである。民俗学と震災の話が結びつくと、これはまた深みのある展開になった。遠野物語99話に、非常に切々たる話があるのも知らなかった。

 婿に入った男性が、明治の三陸津波で亡くなった妻のことを、ある夜に浜で見かけるのである。そして、妻は、若き頃に心許し合ったある男性と一緒に津波が押し寄せてきた海岸を歩いていたのだそうである。婿の男性は、思わず亡くなった妻を追い、残された子ども達がかわいそうではないのか?と叱責する。そして、妻は、哀しそうに別の男性とその場を去っていくという話にそうとうショックを受けた。その話を語った方は、その後病に伏せることになる。その4代後の子孫が、現存しておられて、現在仮設住宅住まいなのだ。そして、先祖の物語が、遠野物語99話に書かれていることについて語るのである。

 遠野物語99話に先祖のことが出ていると教えてくださったのが、今回の津波に呑まれたその方の実母であったそうである。なんということだろうか。

 涙なくしては見ることができなかった。

 解説をされていた学習院大学教授の赤坂憲雄先生にも学ぶことがたくさんあった。ちょっとしかおっしゃらなかったが、日本人の死生観というものは、亡くなった方への追憶と、そしてむしろ生き残った我々との和解、ゆるしであったのではないかというお話であった。確かに、生き残った我々は、これからも生きていかなくてはならない。諦めて、生への意欲を喪ってもならない。真剣に受け止め、さらに生き延びていかなくてはならない。

 役場の防災センターで最後まで緊急避難を呼びかけて亡くなった町役場職員の若き女性職員と、多くの役場関係者をも呑み込んだ津波。その遺された防災センターに地元のおじさんが、自転車に乗って、いつのまにかできていた祭壇に手を合わせ、持ってきた飲み物をちょっとだけ自分でも飲んで簡便なる壇上に置いていかれた。その仕草にまた感動をした。いかなる宗教的儀礼よりもこころが籠もっていると感じたからである。

 地元の方の祈りである。なんともやるせない。

 我々日本人というのは、古来、こうした自然なる宗教観というものを所有していたのではないだろうかと無学ながらも思うのである。

 到底、愚生ごときが語ることのできない尊いものが、我々日本人には伝えられてきたのだと思う。それがなんであるかは、はっきりとこの番組は言ってくださらなかったが、そしてそれは自分で考えよということであったが、わかるような気がしたのである。

 人知も及ばぬ大災害であった。

 本当に憎い。しかし、ずっと語り継いで行かなくてはならないとも思う。

 そんなことを考えた。

 

 

 

↓ NHKオンラインHPより紹介

番組タイトル  日本人は何を考えてきたのか 第7回▽魂のゆくえを見つめて~柳田国男 東北をゆく

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チャンネル:Eテレ3
放送日: 2012年7月22日(日)
放送時間:午後10:00~午後11:30(90分)
ジャンル: ドキュメンタリー/教養 > 歴史・紀行

番組内容
民俗学の父、柳田国男は明治の三陸大津波から25年後、東北を歩いた。死後、魂はどこへゆくのか。作家の重松清さんが柳田民俗学を通して東北の復興と心の問題を見つめる。
詳細
民俗学の父・柳田国男は明治の三陸大津波から25年後、東北を歩き「雪国の春」を著した。絵馬で被災前の記憶を伝える人々、「食うが大事」と高台 ではなく浜辺に住む人々など、被災後の現実が活写されている。代表作「遠野物語」には妻を津波でなくした男の話が採録されている。死後、魂はどこへゆくの か。柳田や弟子・折口信夫は追究し続けた。番組では作家・重松清さんが柳田の目を通して東北の復興と魂のゆくえを見つめていく。
出演者ほか
【出演】学習院大学教授…赤坂憲雄,  【出演】民俗学者…谷川健一,  【リポーター】作家…重松清,  【キャスター】高橋美鈴
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