(宮若町清水寺の日の出)
亡くなられたタナベ経営の創業者、田辺昇一氏はないないずくしの敗戦後、生きることが精いっぱいの時代に形のない知識、情報、判断を売るという誰もやったことのない経営コンサルタントの道を切り開き、上場企業にまで育てあげたプロコンサルタントでありプロ経営者であった。
私が入社したのは創業17~8年の頃、社員も100人足らずであった。入社3年くらいの新米コンサルタントの時にある中堅食品関連企業を経営診断した。10名ほどのチームを組んで企業を診断しその結果報告会の時のこと。クライアントの役員10名を前に緊迫した雰囲気のなか報告会が始まる。途中、先方女子社員がお茶を出そうとしたとき、今、真剣勝負中です、後にしてください!と氏が喝、こちらもビクッとしてしまう。約2時間、各メンバーからの報告が終わり、師が最後のまとめ。
「こんな女に誰がした、こんな会社に誰がした・・・あなた方経営陣だ!!」と喝。こちらがびっくりしてしまった。魚は頭から腐る、企業をつぶすのはトップである。トップが変われば企業も変わる。当たり前の経営大原則である。入社時、コンサルタント指針という小冊子をもらった。その第一条が経営者を無視し軽蔑せよとあり驚いた。注文をいただいた経営者におもねていたら冷徹な判断ができないということだ。やとわれコンサルにはできない、真剣勝負をしているプロコンサルタントだからできること。新米コンサルタントだった私には衝撃の3時間であった。
報告会が終わって最寄りの駅そばの寿しやにはいり反省会。師が一番うまいものを出してくださいとばんばん注文。テーブルに料理が並び打ち上げ。冷えたビールが五臓六腑にしみる。うまい。師が各人の分析報告に点数をつける。営業部門、Aさん70点、生産部門Bさん65点・・。次なる仕事への決意がムラムラとでてくる。1時間あまりの反省会。板さん、勘定、領収書はいらないよ!驚く。師がポケットマネーで我々をねぎらってくれたのか・・・
(霧か雲海か?)
5年、10年、15年とコンサルタントとしての修業が続く。180センチをこえる上背の師がおおいかぶさるようにこちらの顔にちかづけて話しかけられる。その迫力にいつも圧倒されていた。
いつぞやクラブに連れていってもらったことがある。アフターファイブ、気分転換が大事だよ。臍から下は人格がない、本能の世界だよ。しかしここで人間としての器もでるよ。一流の店で遊び一流のママさんから学ばないとだめだよ。本来サービスすべきホステス嬢が師の話のおもしろさに聞き入ってしまいホステスの仕事を忘れてしまっている。遊び方の迫力にも圧倒された。
(朝霧におおわれる田園)
一流ではない、超一流をめざせと叱咤激励された。今はなき人かと思うと感慨ひとしお、無常観ひとしおである。
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