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「夕霧は打ち明けられたことの意味あれやこれやと思いをはせる()」
「それとなく三宮の姫と督の君何かあったが結果がまずいと
(死んだり尼になったり)」
「そのうちに柏木のこと院にいい御気色などをうかがいたいと()」
「父母は涙の乾く暇もなく左大弁の君万事をなさる()」
「一条の宮ではましてご臨終別れもせずに恨みを残す()」
「火が消えたように屋敷は静かなり主人失い行き場失う()」
「いつも弾く琵琶や和琴の弦などもみじめに外されあるのが侘びし()」
「鈍色の衣にやつれて所在ない昼の頃なり夕霧が来る()」
「はややかに先追う声で邸の前停まる人あり殿だ!思う()」
「ただの客ように女房お相手をするのはどうかと御息所が()」
「夕霧と御息所はお互いに鼻声になり悲しみ嘆く()」
「深草の野辺の桜し心あらば今年ばかりは黒染めに咲け(古今集)」
「春ごとに花のさかりはありなめど逢ひ見んことは命なりけり(古今集)」
「時しあれば変わらぬ色に匂いけり片枝かれにしやどのさくらも(#5)」
「この春は柳のめにぞ玉はぬく咲きちる花のゆくへ知らねば(#6)」
「そのままに致仕の大臣の御元へ参上すれば身内集まる()」
「木の下の雫に濡れてさかさまに霞のころも着たる春かな(#7)」
「亡き人も思はざりけん打ち捨てて夕べのかすみ君着たれとは(#8)」
「うらめしや霞の衣たれ着よと春よりさきに花のちりけん(#9)」