子供はかまってくれない

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映画「ワールド・ウォーZ」:これがブラッド・ピット最高のヒット作というのも,ある意味驚き

2013年09月16日 21時15分23秒 | 映画(新作レヴュー)
タイトルと,予告編から想像する限り,ここまで「ふつうのゾンビ映画」なのだとは思わなかった。
にも拘わらず,ブラッド・ピット主演映画としての興行収入は,過去最高を記録する見込みだという。
確かに,エルサレムに築かれた巨大な壁をゾンビたちが「棒倒し」の要領によって乗り越えてくるショットは実に迫力があるが,それにしてもこの内容で「世界大戦」は,いくら何でも言い過ぎだ,と突っ込む人はそれ程多くはなかったようだ。

「従来のゾンビ映画」との相違点は,「マラソンの高速化」を遥かに超えるスピードで進んでいると思しき「高速化したゾンビ」であるという点だ。獲物を見つけた瞬間のダッシュ力と集中力は,高速化の端緒となったルーベン・フライシャーの「ゾンビランド」に出てくるゾンビとは明らかに次元を異にする。
スピード感が増した分,得体の知れないもの,という恐怖が後退してしまった感は否めないが,これだけゾンビが市民権を得て,社会学的な暗喩としての意味まで議論される時代にあっては,従来型のゾンビとの差別化が重要なのだろう。この分で行けばまもなく「ゾンビになってしまった主役の苦悩」がメイン・プロットに据えられる日もそう遠くないかもしれない。

世界中でゾンビが急速に増殖し,それをブラッド・ピットがひとりで食い止める,という本作の展開を絵空事にしないため,役柄を「ジェームズ・ボンド」や「ジェイソン・ボーン」的なヒーローではなく「元国連の調査員」としたことは,物語のリアリティの面でも正解だった。ソダバーグの佳作「コンテイジョン」同様に,「国連お仕事もの」の範疇で世界の危機を救う,という描き方こそ,集団的自衛権の是非が議論される今にフィットしている,というのは言い過ぎか。
★★★
(★★★★★が最高)


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