子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「プリンシパル 恋する私はヒロインですか?」:ですか?と言われても…

2018年04月07日 11時15分29秒 | 映画(新作レヴュー)
東京でいじめに遭い,離れて暮らす父の元へとやって来たヒロイン糸真(しま,黒島結菜)が,ようやくのことで仲良くなった女子グループと街中で待ち合わせるシーンがある。場所は三越百貨店1階のライオン像の横。結局友達はひとりも約束の時間にはやって来ず,糸真はしばらく待たされた挙げ句に携帯電話も繋がらなかったことで,ようやくハブられた(のけ者にされた)ことを知る。友達と待ち合わせる,という行為自体が何年も前に廃れてしまったおじさんにはピンとこなかったのだが,ある女性から「今どきの若者はライオン像の所でなんて待ち合わせない。地下でしょ普通。ライオン像はおばさんが待ち合わせる場所。その時点でもうその約束,嘘くさいわ」と言われて,私は「待ち合わせ場所にそんな深い意味があったとは!」と仰け反った。全編札幌ロケ,という惹句に吊られて観に行ったは良いものの,どう楽しんだら良いのか困惑してしまった「プリンシパル」も,そんな風に日常生活と物語を結びつけられる女子が観るとまったく違った評価になるのかもしれない。映画って,深いわ〜。

極端にコミックには疎い故,知らなかったのだが,札幌在住のマンガ家「いくえみ綾」氏による原作は累計売り上げ150万部を突破する人気作とのこと。黒島結菜をヒロインに,という企画に,ジャニーズWESTの小瀧望,仮面ライダー出身の高杉真宙を引っ張りだして,雪の札幌で黒島にバレエを踊らせる。結構,いけるんじゃねえ?というノリで制作されたのかどうかは知らないが,出来上がったものを観ると,どうにもすべての要素が消化不良の感を免れない出来だ。

基本的には男女の三角関係に,男同士の友情と葛藤,女同士の嫉妬と連帯が絡む,という筋立てなのだが,恋愛部分はまだしも,男二人の家同士の付き合いに関するプロットが未整理で,映画全体のリズムを壊してしまっている。各々のキャラクターにそれなりの魅力があれば少しは立て直せたかもしれないが,特に小瀧演じる弦の造形が平面的で,台詞回しを聞いていると何だか歌舞伎でも観ているような気分になってくる。これは小瀧の演技力の問題と言うよりも,ぶっきらぼうだが友達思い,という設定をそれ以上のものに膨らませられなかった脚本と演出に決定的な責任があるように思える。

黒島がヒロインになるはずが,川栄李奈の的確に役を掴まえる鋭い感性のみが目立つ結果となってしまった。大通公園から赤れんが,そして旭山公園まで全力で駆け抜けるという荒業(何キロ走ったのだろう?)をこなした黒島に「ご苦労さまでした」と声をかけてやりたい。
★☆
(★★★★★が最高)


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