風・感じるままに

身の回りの出来事と生いたちを綴っています。

生い立ちの景色⑱ お嫁さんが来る

2010-06-04 | 生い立ちの景色
1957年2月。11歳。

一番上のマサル兄ちゃんが嫁さんをもらうという。そういうとこの前、おっ母と二人で一張羅の背広を着て出かけていった。あれは見合いだったんだ。

隣村の採石場への仕事の行き帰りに相手さんの家の前を毎日通っていたのを親御さんが見ていたらしく、近所の世話好きさんに頼んで話しが進んだらしい。
嫁入りは田植え前の5月に決まった。

月が替わり3月になると大工さんが来て家の造作が始まった。オレとおっ父とおっ母の三人が寝ていた部屋を兄ちゃんとお嫁さんの部屋にするためにだ。姉ちゃん二人がお嫁に行って、いま家族は6人になったが、そんなに広くない家で…。オレはどこで寝るのか心配になった。

それから3カ月、嫁入りの日がきた。一週間前から買出しやら家の掃除やら、オレも結構忙しかった。
朝から親類のおっちゃんやおばちゃんがぎょうさん集まってきた。そして嫁さんがハイヤーで来た。
式が終わると座敷で宴会が始まった。酒好きの富田のおっちゃんが酔っぱらって踊りだした。いつも飲みすぎと怒られているおっちゃんやが、きょうは目出たい日やからみんなも手をたたいて笑っている。

オレもご馳走を腹一杯食っていっしょに手をたたいていたが、ちょっと心配事があった。
きのうおっ母に、「これからは他人さんといっしょに暮らすんやから、いままでと同じようにしとったらあかんのやで」といわれた。
この時のおっ母はいつになく強そうな顔つきやった。オレは「うん、わかった」といった。