ベンベエの詩的つぶやき

世の中をちょっと斜めに見て・・・

しおからとんぼ

2006-06-05 20:12:23 | 日記・エッセイ・コラム

今年第一号のしおからとんぼを発見! 森に囲まれた郊外の静かな鍼灸院の庭。車の音も町の喧騒もここには届かない緑の空間。びわの木の隣り、ナスの花に紋白蝶が舞っている。彼方の青田で一羽の白鷺が瞑想している。ふと、眼の前の石の上に小さな影が落ちる。目を凝らしてみると、しおからとんぼであった。しおからとんぼには盛夏のじりじり灼ける日を思い浮かべるが、こんなに早い時季に現われていたとは・・・・。 僕が鈍いのか、それともやはり自然界の異常現象だろうか。  最近、糸トンボやオハグロトンボも見かけなくなった。これらは水質汚染の所為だろうが、トンボやシジミチョウやれんげそうの花が一つ一つ僕の視界から消えていく。もう随分たくさんのものが消えていった。そうやってやがて僕もこのうつし世の視界から消えていくのだろう。

           石になりたくてしおからとんぼうよ


伏目がちの犬

2006-06-05 11:26:43 | 日記・エッセイ・コラム

野良猫たちの餌をかぎつけて、日に三度、犬がやってくる。                 首輪をしているので、人間に関わった犬であることは確かだ。棄てられたか迷子になってしまったか・・・・。伏目がちにやってきて、器を空っぽにしてそそくさと帰っていく。 猫たちは塀の上から見守っているだけ。自分が盗み食いさせてもらっていることを自覚しているのだろう。その姿が憐れである。妻は容器を大きなものに替え、餌をたっぷり入れておく。                 生まれつきのノラにはそれなりの自由さがあって憐れを感じることはないが、人間の温もりを覚えてしまった棄て犬は憐れである。 優しかった人の顔が瞳の奥に残っている。抱きしめてくれた柔らかな腕の感触が身体の隅々に残っている。名を呼んでくれた嬉しい声が耳奥に残っている。                                                        棄てるならはじめから優しくしてはいけないのだ。