約束どおりM爺さんに会いに行った。三方を山に囲まれた静かな。猫を膝に抱いて玄関口で待っていてくれた。一年ぶりだが猫の方はこちらを全く覚えてはいない。スマートで美しい猫に成長していた。授乳中の母猫が交通事故死し、仔猫を拾い上げたときは風邪にやられ衰弱しきっていた。ミルクに薬を溶かしスポイトで飲ませようとしたが、吐いたり、ぐったり動かなくなったりして一週間ほどは眼が離せなかった。それが今では、モグラやネズミを捕ってきて、爺さんの膝元に運んでくるという。誉めてやるので次の日も捕まえてくるという。 この爺さんにはこの猫・・・・ホント! 出会いと相性の妙を強く感じた。
今日、6月14日は僕の誕生日。ミッドウェイ開戦時、母が二十歳のときに生まれた。 「人間は、おしっことうんちの間の穴から飛び出してきた」 聖アウグスチヌスの言葉。まことにまことに含蓄のある内容である。それを証明するかのごとく、僕は12歳まで夜尿症がつづいた。毎晩のことであり、一晩に二回やってしまうこともある。初めての修学旅行は心配で眠らないようにしていた。(ねしょべん小僧はどなたでござる 恥ずかしながら私でござる) 住み込みの姉やが、僕の寝巻きを洗濯しながら聞こえよがしに唄っていた。一緒に寝せられて、夜中にねしょべん掛けられて、未だ16・7歳の姉やも気の毒なことであった。そのときの少年が突然還暦を越え、こうして知ったかぶりの顔になって生きている。今でもときどき夢を見ては、おそるおそる股間に手をやったりすることもある。