
<北の便り-枯葉の手紙>
冬の終わりに出会った白い鳥を
雪の化身だといまだに思っている。
なごり雪の止んだ春の日に
無事に北の国へ着いたらしいけれど
あの鳥が風切羽で
美しい物語を紡いでいた事を全く気付かず
見てはならない戸の隙間から
折れた羽がのぞいていて
知ったのは深い深い鳥の哀しみ
遠くで北へ帰った鳥の鳴き声を聞いた
たった一声だったけれど
未だに羽の傷は癒えないらしく
南へ飛べるのは雪の舞う頃か
私は鳴けないから笛を作る事にした
たぶん忘れているだろう私の声の代わりに
目印になるように空色にして
北斗七星を刻むことにした
「笛の色はね、あの北の湖の
エメラルドブルーにしたんだよ
音はかすかで届かないかも知れないから
目印に北斗七星を刻んだよ
ひしゃくの柄の先端に向かって
飛べばいいから
新しい風切羽できっと飛べるから・・・」
めずらしく夜更かしをしていて
カーテンをゆらす風の気配
夕方の雨が
連れてきたのか置き忘れたのか
懐かしく白い風の気配
線香花火の火が消えないよう
あわてているうちに
煙のにおいだけ
のこして過ぎる夏の夜の夢
窓のカーテンを揺らした風の中に
その鳴き声は紛れ込んでいた
本物かまぼろしかととまどううちに
風は止みカーテンは澄ましている
ふた月もすると北の山々は雪になり
雪に乗って鳥たちの渡りが始まる
風の去った窓ガラスに
木の葉の手紙が一枚はさんであり
「わたしはげんき ふえのおともきこえているよ」
と書かれたひらかなだけの文字の手紙
北の便りには
枯葉の切手に雪模様の消印が押されていた