『 首・肩の痛みを根本原因にアプローチ
改善のカギを握る「頸長筋」を鍛える2つのエクササイズを専門家が解説 と題された見出しを見たりした。
つらい「首や肩のこり」は、スマホやパソコンなどを使う時間が、
長いほど悩みは深くなってくる。
重度になれば、首や肩を動かすのもきつく、
しびれやめまいのような別の症状を抱えることも。
最近の研究で、痛みの原因が「首の使い方」にあること、
痛みの改善のカギを握るのが「頸長筋」であることが分かってきたという。
そこで、「頸長筋」を鍛える2つのエクササイズを専門家に教えていただいたので、ご紹介する。
☆教えてくれた人
金岡恒治さん/早稲田大学スポーツ科学学術院教授・整形外科医
☆鍵は喉の奥の筋肉
つらい痛みや手足のしびれ、めまいなどを伴う重度のケースでは、
別の筋肉へのアプローチが必要になる。
「喉の奥にある『頸長筋(けいちょうきん)』という深部筋を使うことが重要です」
こう語るのは、早稲田大学スポーツ科学学術院教授で整形外科医の金岡恒治氏だ。
北京五輪水泳日本代表のチームドクターを務め、数々のアスリートの身体を診てきた金岡氏は、
長年にわたり「正しい筋肉の使い方」を研究してきた。
「これまでは首や肩の痛みに対しては、
鎮痛薬をはじめとする対症療法に頼ってきましたが、
近年の研究で、痛みの原因が『首の使い方』にあること、
痛み改善の鍵を握るのが頸長筋であることが分かってきました」(金岡氏)
頸長筋(けいちょうきん)は、首の骨に接しており、頸椎を支えて首の動きを滑らかにする役割がある。
しかし現代人は、スマホやパソコンなどの使用で、
首の位置が、中心より前に出る生活を送ることが多く、
頸長筋が使われず、衰えているのだという。
「頸長筋を使わず、僧帽筋などの表層筋ばかりを使い、
これらの筋肉だけで首を動かしていると、
首がぐらついて頸椎の関節である『椎間関節』が炎症を起こす。
これにより、強い痛みやしびれを伴う重度の肩こり・首こりが発症してしまいます。
頸長筋を正しく使うことで、頭が正しい位置に戻り、
重い痛みやしびれが緩和されると考えられます」(同前)
☆肩・首の痛みを改善する2つのエクササイズ
都内の運動療法スタジオ「スパインコンディショニングステーション」で、
メディカルディレクターも務める金岡氏は、
誰もができる運動で頸長筋を鍛える方法を模索し、
重度の肩・首の痛みを改善する2つのエクササイズに辿りついた。
いずれも3分間ほどで行えるので気軽にできる。
1.首と頭のズレを正す「水平あご引きエクササイズ」
頭部を傾けず、水平に後ろに引く。
その際にあごを引きながら行なうことで、頭が頸椎の真上に位置する。
「ポイントは、なるべく首や肩を動かさないこと。
指であごを軽く押しながら引くと、感覚を掴みやすいでしょう。
そのうえで頭を前後、左右に倒し、左右回転運動も加えることで効率よく頸長筋を鍛えられます」
それぞれの動きを2回ずつ、1日2~3セット行なうと効果的だという。
<ポイント>
・あごを水平に引く
・前後、左右倒し、左右回転をそれぞれ2回ずつ1日2~3セット行なう。
・頸長筋が動くようになる
< 水平あご引きエクササイズのポイント>
・水平に後ろへ引く
頭を傾けずに水平を保ったまま、後ろに引く。
あごを軽く指で押すと引きやすい。
2.寝ながらできる「あご引き起床エクササイズ」
仰向けに寝ながら、水平あご引きの姿勢を取り、頭をゆっくり持ち上げる。
「あごを引くことを意識して床に頭をつけ、頸椎を床から離していくイメージです」(同前)
あご引き起床エクササイズは、1日に2~3回行なうのが目安だという。
<ポイント>
・仰向けであごを引く
・両足を肩幅の広さに開きひざを立てる
・頸椎を意識してゆっくり頭を上げる
・一連の動きを1日2~3回行なう
・頸長筋が鍛えられる
☆エクササイズは「痛気持ちいい」範囲に
「このエクササイズで、肩や首の痛みやしびれが改善されたケースを多数見てきました」(同前)
エクササイズを行なうタイミングはいつでもいいが、無理をしないことが肝要だ。
あくまで「痛気持ちいい」範囲に留めておく。
症状に応じたストレッチで、首と肩の悩みから解放されたい。
イラスト/河南好美
※週刊ポスト2024年10月4日号・・》
注)記事の原文に、あえて改行など多くした。