3月の中旬、大学が春休み中の有紀さんが数日間、帰省していた。
我が家の子供たちは、みな本を友としているが、中でも有紀さんの読書量はきわだっている。帰省すると、有紀さんからのリクエストに応え必ず女房どのが書店から本を数冊購入してくる。家にいるとき、有紀さんはそれをずっと読んでいる。
そんな有紀さんが、どんな本を読んでいるのかほとんど知らなかったのだが、ある時、読みかけの文庫本のタイトルが目に留まった。ドストエフスキーの「罪と罰」だった。驚かされた。若い作家のものばかりを読んでいると思っていた。
かつて読んだときはなかなか頭に入って来ず途中で挫折したそうだ。だが、今回はスッと入ってきたという。私の知らないところで有紀さんが成長している。