峰野裕二郎ブログ

私の在り方を問う

since 2005

親と子の絆をどう築く

2008年01月12日 | 家族
殺害後も切りつける?次男と母の腕に傷 八戸の殺人(朝日新聞) - goo ニュース

何故、これほどまでの惨【むご】さで母親と弟妹は、我が子に兄に殺されなければならなかったのだろうか。子が親を、親が子を殺害するという痛ましい事件が後を絶たない。

生まれてすぐの赤ちゃんを抱き寄せ、じっとその目を見つめると、赤ちゃんもまたじっと見つめ返す。出産を終え、深い感動に包まれている両親と、狭い産道を必死の思いで生まれ出てきた赤ちゃんとの初めての対面、それは赤ちゃんにとってこれからの人生の中で最も大切な出会いの瞬間だ。そしてその誕生の瞬間から始まる親の子に対する無償の慈【いつく】しみが親子の絆【きずな】を築くのであり、同時にそれがその後のその子の他者との人間関係の在り方を作る基礎となるものだ。

一昨々日、佐々町教育委員会主催の平成19年度「あひる学級(乳幼児を持つ親の講座)」の1月講座担当となっていた私は、佐々町に暮らす若いお母さんたちに『絵本の読み聞かせを通して考える子供の育ちと親の在り方』という少々長い題でお話をさせていただいた。

昨年の春に主催者から講話の内容・題、すべてお任せしますということで今回の依頼があった。胎児・乳幼児を持つ若い母親に伝えたいことのある私は有難くお引き受けした。
当初、題を掲げ、決められた時間の枠の中で話をするとなれば、その伝えたいことをどのように順序立てて話すかの構成を考えなければならないだろう。まぁ、時間もあるし、きっちりレジュメでも作ろうと考えていた。しかし、結局は講座の2日前に徹夜して構想を練ることとなる。
ところがそれがそんなに甘い作業ではないことにやがて気が付く。日頃考えていることを思いつくまま書き連ね、それを基に構成を考えたのだが、文章として成立しても、それをみなさんの前で読み上げるわけにはいかない。脚本が出来上がっても、それを上演するとなれば何ヶ月もの稽古が必要なことなど子供にでも分かる話だ。
日曜日が出初式で、例のごとく昼過ぎから深夜まで飲み、翌月曜が冬期講習最終日で夜の授業もあっての徹夜だった。翌日が新学期だったので朝食後から夕方4時までパソコンのキーを叩き、A4用紙16枚になったところでそれに気付いた。
よし、日頃、入塾を希望される保護者にお話しするようにやろう。夜の授業が終わり、食卓につくとき腹が決まった。

翌朝、目が覚めた瞬間、最初と最後に話すことがパッと浮かび、女房どのにそう告げた。女房どのは出掛けに「あまり上手に話さないでね。あちこちから依頼がくるようになると困るけんね」と、私が緊張しないようにとの思いからだろう声をかけてくれた。
また、朝のうちにブログを更新し、午前10時の開講に間に合うようバタバタと身づくろいをしていて、食卓の端にアイロンのかかったハンカチが用意されているのに気付いた。私の意気込みを感じた女房どののエールが響く。

午前9時半、3人の娘たちとよく読んだ絵本20冊前後をバッグに詰め込み、会場の健康相談センターに到着。担当の方と打ち合わせているところへ数日前、仲間と共に電話をくれた愛ちゃんが顔を見せに来てくれた。
そうこうしているうちに乳幼児を抱っこしたり手を引いたりしてお母さん方がお見えになる様子が窓越しに見えてきた。赤ちゃんたちは玄関ホールでボランティアのみなさんに預けられる。お母さんにとっても子供にとっても、しばらくの辛抱【しんぼう】だ。
辛抱といえば、先日、古いノートのぺージを繰【く】っていたところ「忍耐を苦痛と同義と考えてはならない。忍耐は希望への技術である」と書き留めてあるのを見つけた。

やがて始まった私の話は、日頃、私塾の保護者に話すのと同様、脱線に次ぐ脱線を繰り返ししながらも、聞き手のの熱心な眼差【まなざ】しに私の魂が呼応し、残り30分間の質問コーナーをつぶし丸々2時間続いたのだった。
講話が終わった後、個別に尋ねてこられるお母さんが数人おられた。担当の方に来年度も頼むだろうからよろしくと言われた。

心が通じ合った喜びと新しいことをやり遂げた後の開放感をかみしめながら帰宅し、夕方の小学生の授業に臨んでいるところへ、担当の方がお母さん方の書いた感想文のコピーをわざわざ届けてくださった。そして、話に聞き入り写真を撮るのを忘れてしまったと詫びられた。謝られることはない。それは話し手にとって最上級の褒め言葉に値することだからだ。

授業が終わり居間に降りてくると、女房どのがその感想文を読み上げてくれた。どれも嬉しいことが書いてあった。間もなく、くるみさんが帰宅したのでそれを渡すと、声に出して読みながら「こんなふうに書いてもらうと嬉しかねぇ」と共感してくれた。

台所に入ると、新しい酒が2本並んでいた。
「おっ、何これ?」「今夜はこれを飲んでゆっくり眠ってください」
いつもながら嬉しい心遣いだ。
この日のことをあれこれ話す私に、女房どのが新境地を開いたねと言ってくれた。

以下、若いお母さんたちからいただいた感想を紹介させていただきます。

*持参された本の残り、説明されなかった本が少々気になっています。どんな説明、お話をされるために持参されたのかな?と。
 本当に子育ては大変!責任を感じます。結果が10年後出るから。
 先生と一緒にお酒飲んでみたいですね。おしゃべり大好き子ヨリ。
 楽しいお話でした。ありがとうございました。

*楽しく話を聞くことができました。また楽しく育児をしていきたいです。
 親のする通りに育つ、今私や主人のまねをよくします。本当にその通りだと思います。子供にいつも見られていることを忘れずにすごそうと思います。

*正月のイライラが今日の話でふっとびました。
 機会があれば また ききたい。

*今日のお話をきいて あらためて「子供と親」は他者であるということに気づかされました。たしかに 子供がある程度言葉を理解しだすと 要求することも多々あります。今が大切なのを本当に つねに「意識」して お互い いい関係を きずいていきたいと思います。

*お話の中、子供は親の言う通りには育たず、親のするとおりに育つという話を聞 いてあらためて あー もっともだ って思いました。
 まだ5年とはいえ、意識=生まれてきてくれた日の喜びを日々忘れつつある の で、あらためます。
 お話は良かったんですが 絵本の題名等 もっと知りたかったです。

*ついつい 自分の言う事を通して子供に押しつけてた大事に気づかされました。 子供=自分の子でなく 1人の人として見てあげれるように視線をむけようと思 います。

*自分の言う通りには育たないの言葉にはっとさせられました。自分のする通りに するに あっ そうだなと思いました。よく見てるなぁと思う時が ちょこちょ こあるので今日の言葉 の通りだと実感しました。

*たのしい話でした。絵本を一緒によみたくなりました。
   テレビとかじゃなく、目の前でいろんな方のお話を聞けるのは楽しいし、た めになります。
 ありがとうございました。

*私の表情や気持ちが子供に伝わるということが またあらためてわかりました。
 私自身がいきいきと明るく毎日をすごしていこうと思います。

*とても楽しく参考になりました。
 色々 考えさせられました。
 子育てを見直して がんばろうと思います。

*良いお話を聞く事ができました。
 今 自分にできていない事をおしえていただいたようです。
 父親にも聞かせてやりたいなと思います。

*話を聞き、今まで子供に対して自己中心的な態度で接していたと反省してしまいました。
 “我が子であっても他者なのだ” 心にズッシリとひびきました。

*心が育てば、全てが育つように感じました。
 ついつい、親の思う通りに言葉掛けなどして育ててしまっているので子どもには 大きな負担となっているので その点には気をつけていきたい。
 先生の話は楽しく、とても勉強になりました。

*とても楽しくお話を聞かせていただきました。ありがとうございました。
 こんなに楽しく心に残る話で感動しました。

これほどまでに柔軟に他者の意見を受け止め、より良く生きていこうとする若い母親たちに敬意を表します。
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3 コメント

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奥様の大きな力 (ぶな太)
2008-01-13 09:32:51
峰野さん 地元の若い母親を対象に子育ての話をされたブログを興味をもって読ませていただきました。講義の題名から峰野さんが適役だと思いました。
一番印象に残ったことは、その日の朝奥様がおっしゃった「あまり上手く話さないでね・・・」という言葉でした。それは何気ない励ましであり、「肩の力を抜いてください」という気持もこめられているようにもとれ、奥様の大きな力を感じました。
そういう奥様の願いとは反対に、若い母親の感想を読んで、これから子育ての講演の依頼が増えるのではと思いました。
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Unknown (chiga)
2008-01-14 18:02:48
 正月に妻の実家に帰ったとき”親が夫婦仲良く、毎日を楽しく過ごしていれば、子供も姉妹仲良く明るく元気に育つぞ”と言われました。年末、少々仕事で落ち込んでいましたが、その言葉で正月は家族で明るく楽しく過ごしました。”親の背を見て子は育つ”と言いますが最近はひしひしと感じています。

 やはり、狭い家庭では客観的に生活を見直す機会がなくなってしまいます。我が家の娘達も小学生になり、今まで以上にわがままを言ったりと妻を困らせています。峰野さんの講演を聞いて、おかあさん達は気がついたことが多かったのではないでしょうか。どのようなお話だったのでしょうか。私も是非聞いて見たいです。

 
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子供の心が育つ親の在り方 (峰野裕二郎)
2008-01-15 09:23:03
ぶな太さんの仰るとおりです。私が自由に好きなことをやれるのは女房どののおかげです。

chigaさん、奥様の親御さんの仰るとおりです。今回、我が家の子供たちの育ちや、私塾で見てきた思春期の子供たちとその子供たちとの親御さんとの関係、さらに保護司として接してきた青少年の育ちとその環境、民生児童委員として見てきた子供たちとその親御さんの在り方等、これまで経験してきた中から、見えてきたものをお話させていただきました。
お母さん方の感想からは「子供は、親の言う通りに育つのではなく、親のする通りに育つ」これは、奥様の親御さんの仰ることと同じことですね。あるいは「我が子であっても、子供は他者として尊重されてしかるべき存在だ」「意識して子供に向かう」「赤ちゃんには胎児のうちから心ある存在として接し、慈しみの糸で紡がれる親と子の絆を結ぶこと」「知育にはしらないこと。心が育てば、すべてはうまくいく」「中学生では遅すぎる」「絵本を読み聞かせることがどんなに楽しく、素晴らしいことか」「お母さんが仕合せでいてほしい。また、その知恵を持ってほしい」というような言葉が心に響いたように思われます。
chigaさんといつかお話できる機会があることを願っています。
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