母の日、いつものように絵理子さん一家から花かごが届いた。女房どのが嬉しそうなのがうれしい。
そういえば、建築中だった彼女らの家が完成し、ちょうど今日が引き渡される日だった。
夫婦それぞれに仕事を持ち、かつ、それぞれが職場で重要なポジションに立ち、2人の子育てをしながら、彼女らは家造りにもこだわった。
先ずは、どこに住むかということからだ。色々と調べ上げた末に此処だという地域を見つけた。次にどの業者に建築を依頼するかにも時間と労力を惜しまなかった。さらに、どんな家を造るかということにもとことんこだわった。絵理子さん自ら描いた間取り図は、その正確さで業者を驚かせたと研二くんが語ってくれたことがあった。
絵理子さん夫婦は、太陽がギラギラと照りつける人生の真夏を生きている。
母の日から1日遅れた昨日、有紀さん・くるみさんそれぞれのメッセージの付いた花かごが届いた。やはり、女房どのが嬉しそうなのがうれしかった。
くるみさんが有紀さんと同じ大学に進学したことで2人は比較的近い所に住むことになった。それで時々、有紀さんが車でくるみさん宅を訪ねているようだ。先週末も有紀さんがくるみさん宅に泊まりに行ったという。そこで相談し、2人して母の日のプレゼントをということになったのだろう。
有紀さんは、現在、大学院の研究室で学術研究員として教授のもとで仕事をしている。彼女らしく、じっくり、ゆっくりと心の専門家としての道を歩み始めている。
有紀さんたちは、新緑濃い人生の初夏を生きている。
くるみさんは、いよいよ本格的に学究生活に入った。それは、道なき道を究めようとする営みだ。しかし、飽くなき好奇心の塊のような彼女にとって、それは望むところだろう。
くるみさんは、春まだ浅い日々を生きている。
私と女房どのは、清々しい初秋の頃を迎えている。