ついにと言うか、やはりと言うべきか、将棋界史上最年少の四冠王が誕生しました。
第34期竜王戦七番勝負の決着がついたのは昨日の午後6時41分、豊島前竜王が持ち時間をちょうど30分残したところで「負けました」と投了を告げました。
敗者である豊島竜王はもちろんのこと、敗者の痛みを知る藤井三冠も無言のまま、ただ空調の音だけがわずかに低く響く、重苦しい時間がしばらく流れました。
ややあって、なんとか気持ちの整理を付けたであろう豊島さんが口火を切り、勝負どころの感想を語り始めました。
間もなく、取材陣が対局室に入って来て、インタビューが始まります。
先ずは、勝者の藤井新竜王に対して、一局を振り返っての質疑応答に始まり、竜王位戴冠について、四冠の最年少記録について、一連の豊島前竜王との戦いについてと続きました。
目の前で行われている勝者に対するこのやりとりを、失冠した敗者は、うつむいたままただ黙って聞いていました。その場を逃げ出すわけにもいかないまま。
豊島さんは、今年に入り、王位戦、叡王戦、そして竜王戦と立て続けに藤井さんを相手にタイトルをかけた戦いを繰り広げてきました。
かつて、豊島さんが全て手にしたタイトルです。それを、この日ですべて失うことになったのです。
あの日の栄光と歓喜が失意に変わった瞬間でした。
勝負の世界に生きる者たちの定めと言えば、それまでですが、厳しい勝負の世界の非情さがそこにありました。
藤井さんへの記者のインタビューの後、豊島さんにもマイクが向けられました。
勝者へのインタビューの間に気持ちを整えたであろう豊島さんは、「竜王戦もそうですが、王位戦や叡王戦も合わせて実力不足を痛感したので、実力をつけていかないといけないと思います」と、顔を上げ、はっきりとした口調で答えました。
好漢・豊島さんの新規まき直しを期待しています。