のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

ムーミンパパ、海へ行く/ヤンソン

2007年06月06日 23時58分32秒 | 読書歴
■ムーミンパパ、海へ行く/ヤンソン
■ストーリ
 かわいいムーミントロールとやさしいママ、おしゃまなミイに
 すてきな仲間たち。毎日が平和すぎて物足りないムーミンパパは
 ある日一家で海をわたり、小島の灯台守になります。

■感想 ☆☆
 「ムーミンパパのわがままっぷりにひくよ。」と
 薦められていた一冊。思っていた以上に、ひどいパパぶりに
 心から驚きました。ひどい!ひどすぎる!

 安定したムーミン谷を物足りなく感じるムーミンパパ。
 そんなムーミンパパのために、谷での生活を捨てて島に
 移住するムーミン一家は、慣れない土地で日々を奮闘して過ごす。
 しかし、慣れない土地ゆえに、ムーミンパパは勝手が分からず
 すべてが空回りする。ムーミンママは草木が育ちにくい島で
 ホームシックになり、ムーミン谷の家の庭を壁に描き綴り
 空想の世界に入り込むようになる。
 ムーミンは「海馬」なる不思議な生き物に心を奪われ、
 家族からの自立を図り始める。一方、ミィはどんなところでも
 自分のやりたいように生き、協調とは無縁の日々を送る。

 あと書きによると、「父親」という役にこだわりすぎて、
 すべてが空回りするムーミンパパはヨーロッパの父親像
 そのものだそう。どうやって終わるのだろう、最後はムーミン谷
 に戻っていくのだろうか、とはらはらしながら読み終えて、
 何も変わらないまま、話が終わってしまったときの驚きは大きい。

 あらためてムーミンシリーズは子供のための童話ではなく
 大人のための小説なのだと思い知った。
 極端に少ない登場人物。出番はほとんどムーミン一家だけだが
 唯一、灯台から逃げてしまった灯台守が大きな存在感で
 島にいつづける。何も語らず、ムーミンたちと交わりあうこともないが
 彼の存在に思うところは多い。ラストで灯台守の洋服を着せられた
 彼は、みんなから「ぴったりだね」と言われる。
 どんなに逃げても自分の人生からはにげられないのだと
 少し胸が痛くなった。
 余韻は残る。けれども私は、まだこの小説をしっかりと楽しむ
 ことができそうにない。そう感じた。

ムーミンパパの思い出/ヤンソン

2007年06月06日 23時52分59秒 | 読書歴
■ムーミンパパの思い出/ヤンソン
■ストーリ
 自由と冒険を求めて海にのりだした青年時代のムーミンパパ。
 ユーモラスな竜との戦い、嵐でたどりついたゆかいな王さまの島、
 おばけと同居したり、深海にもぐったり、様々な冒険をしながら
 ムーミンママとの劇的な出会いまでをパパが書き綴る。

■感想 ☆☆☆*
 ムーミンシリーズの中で一番好きなお話かもしれない。
 男の子って個人によって目立つ、目立たないはあるけれど
 概して、こういうとこあるよね、とほほえましく思いながら読んだ。
 自分が大好きで、自分の才能や将来を無条件で信じていて
 自分が経験していることを「大冒険」だと言い切ってしまう
 無邪気さ。そこには女の子が持つこまっしゃくれた計算はない。

 決して幸せな生い立ちとは言えないムーミンパパは
 それでも自分の可能性を信じて、常に前向きな考え方で
 「冒険」に対峙する。
 傍から見るとちょっぴり滑稽。でも本人は大真面目。
 そんなムーミンパパを見ていると、結局のところ
 人生を作り上げるのは自分なんだなと改めて思わされる。
 どんなにちっぽけで、たいしたことない出来事でも
 自分にとって「大事件」であれば大事件。
 「この事件によって、こんなに成長できた」と思えれば
 自分を成長させてくれた劇的な出来事になってしまうのだ。

 ゴーイングマイウェイ、大いに結構。
 人生は楽しまなくちゃ。
 そういう気持ちになれる一冊。
 ムーミンママとの出会いで終わる幕切れが素敵。