のりぞうのほほんのんびりバンザイ

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犬を飼うということ

2011年06月13日 23時28分33秒 | テレビ鑑賞
■犬を飼うということ-スカイと我が家の180日間-
■のりぞう的2011年度春クール3位
■金曜深夜(23時15分) テレビ朝日放送
■出演
 錦戸亮、水川あさみ、久家心、山崎竜太郎、田口淳之介
 武田航平、風見しんご、杉本哲太、泉谷しげる
■脚本 寺田敏雄
■ストーリ
21歳でできちゃった結婚した本郷勇次(錦戸)と幸子(水川あさみ)は8歳の大(山崎竜太郎)と6歳の眞子(久家心)の二児の親。完成間近のスカイツリー近くの団地に暮らしている。サラリーマンである勇次の収入だけでは生活は苦しく、幸子がパートに出てやり繰りしている。家計は苦しくても家族でハワイ旅行をするためにお菓子の缶に貯金する微笑ましい一家である。しかし、それぞれが少しずつ言い出せずにいる小さな不満も抱えていた。そんなある日、眞子が犬を拾い、なりゆきで飼うことになり、そこから家族が再生し始める。

■感想 ☆☆☆☆
錦戸さんの演技が大好きです。
決して分かりやすいイケメンさんではないけれど
(というか、単に私の好みではないというだけ、ですが。)
彼が演じると、どんな役柄もとても魅力的になる気がします。
アイドルがこんな役を演じちゃってもいいの?!大丈夫?!
と衝撃的だった「ラストフレンズ」のDV彼氏さんも、序盤こそ、
「ありえん・・・怖すぎる!!」とドキドキしましたが
中盤以降はその演技力(というか、その恐ろしさ)に圧倒されて
むしろ「すごい!この人!!」と目が釘付けになりました。
どうしようもないDV彼氏なのに、その暴力の影に見え隠れする
「好きなのに自分でもどうしたらいいのかわからない」みたいな葛藤が
終盤に向かえば向かうほど、不憫になり、決定的には嫌いになれませんでした。
暗示にかかりやすい私は、彼の演技を見続けると、
なんやかんや言いつつも、最終的に彼の(役の)ことが好きになっているような。

というわけで、「犬を飼うということ」も期待大!で視聴しました。
そもそもこの枠のドラマは深夜枠だけに視聴率が取れないけれど
好みの番組に出会える確率が高いのです。
でもって、予想を裏切られることなく大好きなドラマでした。
主要登場人物みんなが困ったところもあるけれど、
その困ったところを愛しいと思える人たちばかりで
彼らが迷ったり傷ついたり、ぶつかりあったりしているところを
嫌な気持ちになることなく、全員に共感しながら見ることができました。

まじめで他人を陥れたり蹴落としたりできない主人公、
勇次が会社のリストラ政策に疑問を抱いてしまったがために、
会社をクビになってしまうところから物語が始まります。
どこか大人になりきれない、長いものに巻かれてしまえない不器用な主人公。
学歴はないし、新しい仕事も見つからない。
心のどこかにかつての夢だった「音楽」への未練もある。
けれど、家族を愛していて、音楽という夢よりも家族を、
父親としての責任を躊躇なく選べるへたれなのに
強くてあったかいお父さんが錦戸さんにぴったりでした。
特に素敵だな、と思ったのは最終回で飼い犬スカイが危篤状態になり、
担当獣医さんから
「人によって考え方は色々あると思う。たかがペットと言う人もいるかもしれない。
 けれど、僕はそれでも言いたい。家族に連絡をとりなさい。」
と言われた水川さん演じるお母さんが家族全員に緊急連絡を取る場面。
大急ぎで学校から帰ってくる子どもたち。
けれど、その連絡を確認しても、周囲の仕事仲間に動揺を見せることなく
黙々と仕事に取り組む勇次は、仕事が終わった後もいつものように
「お疲れ様でした。」と笑顔で挨拶をし、角を曲がったところから
ダッシュで病院に向かいます。携帯で奥さんに連絡を取り、そこで
自分が間に合わなかったことを知り涙する勇次の背中がとても印象的でした。
安易に「仕事よりも何よりも飼い犬の命が大事」
「ペットも人間も命の重さは同じ」というような一辺倒の結論に
落ち着かせないこのドラマの姿勢を素敵だな、と思いました。
命は勿論、とても大事だし、ペットも家族の一員だという考え方に共感もします。
けれど、父親として仕事を放り出さない勇次を
社会人として、人手が足りなくて困っている仕事仲間のことを思いやり、
お父さんとして、自分の仕事を全うした勇次をとてもかっこいいと思いました。

脇役陣もみんなキャラクターぴったりで素敵な方ばかり。
獣医さんを演じられた杉本哲太さんはいかにも杉本さん!という感じの
生真面目であったかく、そしてユーモアあふれるお医者さんで、
重い雰囲気になりがちなこのドラマを明るく引き立ててくれていた気がします。
このドラマが重くなりすぎなかったのは、
杉本さんの暖かい雰囲気があればこそ、じゃないかな。

そして、そしての泉谷さん!
最愛の奥さんが末期癌になり、なおかつ会社からリストラされるという
役柄を朴訥に、ぶっきらぼうに、でも丁寧に演じられていて、
彼の姿を見るたびに「年輪」という言葉をかみ締めました。
言動は荒々しいし、分かりやすい優しさはちっとも見せないけれど
勇次たち家族を見守るその視線の根底にある優しさ、あったかさが
しっかりこちら側に伝わってくる演技でした。
「家族」じゃなくても、人と人とがお互いに思いやりあえれば
あったかい関係が築けるんだな、としみじみ納得できる素敵な役でした。

それにしても子役さんたち。なんで?
なんで最近の子役さんたちはこんなに演技がうまいの?
とひたすら感嘆しながら、そしてそんな彼らの演技に
涙を誘われながらドラマを見続けました。本当にすごい。

最終回。
大切な家族の一員を失った彼らは、悲しみながらもお互いを支えあい
「スカイを忘れたいわけじゃない。」から「これから先も
気を紛らわせようとか考えないようにしようとか」そういう無理はせず、
スカイの想い出を抱きしめて生きていこう、と決意します。
その場面で、またも震災のことを、多くの失われた命のことを思いました。