のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

魔法にかけられて/2007年アメリカ

2011年06月23日 20時31分53秒 | 映画鑑賞
■魔法にかけられて/2007年アメリカ
■ストーリ
アニメーションの中の美しいおとぎの世界。アンダレーシアの森の奥深く、動物たちと暮らす一人の美しい娘がいました。彼女の名はジゼル。ある日、運命の出会いを果たしたジゼルと王子は結婚することになりました。しかし、王子の継母のナリッサ女王は、自分の玉座を奪われることを恐れ、ジゼルを騙して井戸の底へと突き落としてしまいます。「『永遠の幸せ』などカケラもない所へ行くがよい!」着いた先はなんと現代のニューヨーク。そこは優雅でロマンティックな「おとぎの国」とは正反対の世界が待ち受けていました。

■感想 ☆☆☆☆☆
見終わった後、とてつもなく幸せな気持ちになった。
ミュージカル好き、ハッピーエンド好き、ディズニー映画好きにはたまらない映画だと思う。もっともディズニー好きな方の中には、この徹底的に自虐的なセルフパロディの連続に少し反感を抱いてしまう人もいるかもしれない。けれど、私は立て続けの自分突っ込みの根底に自社の作品への愛情を感じることができた。

極彩色のアニメーションの世界で何をするでもなく優雅に、自分を慕ってくれる動物たちと楽しく歌って暮らしているジゼル。やがて「おとぎ話」のセオリー通りに「王子様と出会い、一目で恋に落ち、二人は結婚して幸せに暮らしました。」という人生を送ろうとするジゼル。この辺りの展開も嫌味なく、話がバタバタしてはいるけれど、いつも通りの「ディズニー」。そんな居心地の良い世界からいきなり現代ニューヨークに飛ばされてしまったジゼルを待ち受けるひたすらにセオリーの通じない世界。これでもか、これでもか、というぐらいかつてのディズニー映画の「お約束」はくつがえされる。
周囲に関心をまるで持たない忙しいニューヨーカーの中で歩くスピードすらまったくあわせられないジゼルは、人ごみに翻弄されてどんどん町のはずれにおいやられる。どんなときも歌で感情表現をしてきたのに「困ってしまったわ~♪」と大音量で歌い始めようとすれば、周囲からは「頭がおかしい人」のように見られる。優しいはずのおじいさんにすら、話しかけた途端、頭のティアラを盗まれてしまう。
この前半のセルフパロディのたたみかけが見事。そして、そんなセオリーの通じない世界に身を投じたにも関わらず、まったく動じることなく、へこむことなく自分を変えないジゼルも清清しい。どれだけ変な目で見られようと、人に冷たい仕打ちを受けようとも、今までのお約束が通じなくても、彼女は自分を変えない。どんなときもこの世界を楽しみ、明るく笑い、素直に人を信じ続け、気持ちよさそうに歌い続ける。現代ニューヨークでいつのまにか周囲の人を巻き込み歌い踊るミュージカル場面を繰り広げる場面は、見ているだけでなんだか楽しい気持ちにさせてくれる前半のクライマックスだと思う。

そして、後半。
ディズニー映画のセオリーどおりに恋愛模様が繰り広げられ始める。どんなに時代が変わっても、環境が変わっても、誰かを好きになる気持ちは変わらない。けれど、アニメーションの中の世界と異なるのは、人を好きになるのが楽しいことばかりではないこと。誰かを好きになって、その誰かも自分のことを思ってくれて、めでたしめでたし、で終わらないこと。現実世界の恋は苦味も切なさももどかしさもある。「好きだ」と歌に乗せて伝えて終わり、ではない。でも、だからこそより一層、好きだと思う気持ちが募るってことはあるだろうな、と思った。
前半、あれだけセルフパロディで自虐ネタを繰り広げておきながら、ラストは「いかにもディズニー、これぞディズニー」とも言うべき由緒正しいハッピーエンド。セオリーどおりの「めでたしめでたし」の笑顔が並ぶエンディングに自分たちの作品への揺るぎない自信を感じた。