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腑抜けども、悲しみの愛を見せろ/2007年日本

2011年08月03日 23時55分16秒 | 映画鑑賞
□腑抜けども、悲しみの愛を見せろ/2007年日本
□原作:本谷有希子
□監督・脚本:吉田大八
□出演
佐藤江梨子、佐津川愛美、永作博美、永瀬正敏
□ストーリ
北陸の山間部の小さな集落。両親の訃報を受け、東京から戻ってきたふたりの長女・和合澄伽に長男の宍道と妹の清深はとまどい、宍道の嫁・待子は三人の関係を不思議な目で見ていた。女優を目指し、家族の反対を押し切って上京した澄伽だったが、その傲慢な性格が災いして、女優活動はうまくいっていない。しかし、自分勝手でワガママな澄伽は自分がうまくいかないことをすべて家族のせいにする。そんな澄伽をうとましく思いながらも気遣う宍道と清深。この家族には待子の知らない秘密があった。

□感想 ☆☆
ブラックコメディ・・・なんですか。
え?!本当に?!と見終えた後に思いました。
どのサイトであらすじを確認しても「ブラック・ユーモア」とか「ブラック・コメディ」という言葉でカテゴリされていましたが、私にはこの映画のユーモアを感じ取ることができませんでした。見ている間中、胸が痛くなるような辛さと、ホラー顔負けの気持ち悪さ、人と人が関わり合うが故の恐ろしさに襲われていました。息をすることも忘れるぐらい張りつめた気持ちで、眉間にしわを寄せて家族の行方を見守った2時間。よくも悪くもこの映画の世界観に見事に巻き込まれました。
ただ、あまりに辛かったため、もう二度とこの映画を見返すことはないと思います。それぐらい人間のエゴや家族の因習が痛く、辛い映画でした。
 人が持っているエゴや弱さや甘えを極端にデフォルメした登場人物たち。
それを極端に打ち出されたキャラクターがヒロインである澄伽ですが、結局のところ、姉におびえながら暮らしているように見えて、心の底で姉を馬鹿にしている清深も、自分自身の弱さと罪悪感を直視したくないがために、ふたりの確執をも見ないふりをする長兄もみんながみんな「エゴ」にまみれて生きていて、人というものの業の深さを見せつけられます。デフォルメされてはいるけれど、そのエゴは私の中にも確かにあるもので、だからこそ、私は途中で直視できないぐらい不愉快な気持ちになったのだと思います。そして、家族だからこそ、ストレートに負の感情をぶつけあい、家族だからこそ、どんなに負の感情でがんじがらめになっても離れられず、お互いを捨てることもできない彼らの関係が純粋に、ただひたすらに恐ろしく感じられました。

佐藤江梨子さんがエゴのままに生きる不愉快な女性を熱演。この映画を見て、彼女には負の感情がとても似合うな、と思いました。(褒め言葉にまったく聞こえないけれど、全力で褒めています。)