のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

2011年6月の読書

2011年08月11日 20時55分52秒 | 読書歴
気が付けば8月です。
というわけで、自分用のメモ。私の記憶自体、既にあやふやな作品も・・・。
やはり記録に残すって大切だな。

60.ライラックの花の下/オルコット
■ストーリ
愛犬・サンチョと共に、サーカスから逃げてきた少年ベンの放浪生活は、
ライラックの花の下で終った。バブとベティーの姉妹に発見されたベンは
二人の娘の母親で愛情深いモス夫人と、屋敷の持ち主で、これからここに
住むことになった若き女主人シリアに暖かく迎え入れてくれたのだ。
死んだと噂される行方不明の父親にいつかは会えるかも知れないという
一縷の望みにすがりながら、ベンは自然や動物、モス夫人の二人の娘たちに
囲まれて、次第に志のある少年へと成長してゆく。

■感想 ☆☆
サーカスから、父を探すために逃げ出した少年と、彼のよき仲間となる
少年少女たちの楽しい日々。
オルコットの作品は大好きで、何度も読み返しています。
ただ、この作品だけは食指が動かず、数年(と言わず)積ん読状態でした。
満を持して読み始めましたが、私の直感も捨てたものではなく、やはり苦手でした。
その一番の要因は主要登場人物が「女の子」じゃなく「男の子」だからだと
思っています。男の子中心に話が動いているため、普段、私が「家庭小説」を
読むときに楽しみにしている洋服や食べ物に関する記述がほとんどないのです。
そこが少し物足りないな、と思ってしまいました。

61.母~オモニ~/姜 尚中
■ストーリ
お前とふたりだけの話ばしたかったとたい。遺品の中から見つかったテープは、
文字の書けなかった母から息子への遺言だった。社会全体が貧しく、家族間の
体温が熱かったあの時代の感触が濃密に甦る。
「在日」の運命を生き抜いた親子二代の物語。

■感想 ☆☆☆
教会員の方から、「若い人に読んでほしいの」と渡された本。
在日として生きてきた日々の苦労が読みやすい文章で書かれています。
私は、なぜか行く学校がことごとく「被差別」や「在日」、「平和学習」に
力を入れていたため、かえってトラウマのように「知りたくない」と
こういった本を避ける傾向にありましたが、やはり避けて通っていてはいけないな、
と思いました。ようやくそう思えるようになりました。
わずか60年前の日本のことを、
理不尽な境遇にあってがむしゃらにがんばった人たちのことを
あの戦争で多くのものを失った人たちのことを
忘れてはいけないし、知識として知るのではなく、
その方々の「体験」を聞いて心に刻みつけておかなければならないと思いました。

62.ロマンス小説の七日間/三浦しおん
■ストーリ
あかりは海外ロマンス小説の翻訳を生業とする28歳の独身女性。
ボーイフレンドの神名と半同棲中だ。中世騎士と女領主の恋物語を依頼され、
歯も浮きまくる翻訳に奮闘しているところへ、会社を突然辞めた神名が帰宅する。
不可解な彼の言動に困惑するあかりは、思わず自分のささくれ立つ気持ちを
小説の主人公たちにぶつけてしまう。原作を離れ、どんどん創作されるストーリ。
現実は小説に、小説は現実に、二つの物語は互いに影響を及ぼし、
やがてとんでもない展開に!

■感想 ☆☆☆*
あー。なんか底抜けに楽しい話が読みたい。
何も考えずに読める本と親しみたい!と思って手にした一冊。
思う存分、エンターテイメントの世界にのめりこみました。
ただ純粋に「楽しい!」だけの本も世の中には必要なんだよ!と思いました。
読み終えた後、ひっじょーにハーレクィンロマンスを読みたくなりましたが、
未だに図書館で借りる勇気がありません。
いや、別に恥ずかしがる必要もないんだけどね。

63.そこにいる人/矢口敦子
■ストーリ
大学生の直子には、生後半年で肝臓に欠陥があると診断され、長い闘病生活を
送っている姉がいる。姉を気遣い続けて生きてきた直子はある日、
大学のコンパで谷村という男と出会うが・・・。

■感想 ☆☆
初めて手に取った作家さん。とても読みやすい文体でしたが、結末は衝撃的でした。
あ・・・そういう終わり方なんだ・・・・と思いました。
あと数ページで終わり、というときに、
「このお話、一体、どう決着つけるつもりなんだろう?」と疑問には思ったのです。
まさかこんなにも情け容赦なく、いきなり結末に結び付けられるとは。
これが現実なのかもしれない。けれど、おそらく、この作品を読み返すことは
ない気がします。あまりに辛すぎる話でした。

64.人形になる/矢口敦子
■ストーリ
夏生は人工呼吸器なしでは生きられない。
ある日、彼女の隣のベッドに瑞江という女性が入院してきた。
それまでベッドに縛り付けられているだけだった人生の可能性を瑞江は拡げてくれた。
しかし、夏生は彼女の恋人、双一郎に恋をしてしまい・・・。

■感想 ☆☆
2冊目の矢口作品。「そこにいる人」は、肝臓移植が必要な女性を中心に
話が展開されていましたが、今作品は動くこともかなわないほどの
身体障害を持っている女性が主人公です。哀しく後味の悪い愛の話でした。
私にとって、「恋愛」は比重が軽いものなので、
彼らが「恋愛」に対して傾けている情念や情熱に共感できませんでした。
改めて「恋愛」に翻弄される人生は嫌だな、と思ったり、
でも、恋愛に翻弄されることもなくひとりで生きていく人生よりは、
恋愛に翻弄される人生のほうが豊かなのかな、と思ったり、
色々と考えさせられました。

65.孤宿の人(上)(下)/宮部みゆき
■ストーリ
讃岐国、丸海藩。この地に幕府の罪人、加賀殿が流されてきた。
以来、加賀殿の所業をなぞるかのように毒死や怪異が頻発。
そして、加賀殿幽閉屋敷に下女として住み込むことになった少女ほう。
無垢な少女と、悪霊と恐れられた男の魂の触れ合いを描く。

■感想 ☆☆☆☆*
雷が今よりずっと恐れられていた江戸時代。
立て続けに起きた雷害に右往左往する民衆の姿を見て、
「原発問題」で何を信じればいいのか分からないまま、
情報に振り回されている今の私のようだと思いました。
武士に町役人、住職に火消し係、村医者に、農民や漁民、
もっと力のない女子供たち。それぞれがそれぞれの立場で懸命に
よりよい明日を迎えようとがんばっているのに、
自然災害は容赦なく襲いかかります。次々に亡くなっていく人々。
そして、そのような危機的状況下でもうごめく政治的策略や人間の情欲。
人間の力ではどうすることもできないこと、
人間の力の範疇にないものがこの世の中にはある。
そして、人間の力の及ばないはずのことが
人間の欲望によって、更に被害を大きくすることもある。
大事なのは、どんなときも落ち着いて自分を見失わないこと。
入ってくる情報に惑わされないこと、
中途半端な知識で知ったかぶりをしないこと。
知識や知恵を身につけることの大切さを改めて思いました。
某サイトでは著者、宮部さんからのメッセージが紹介されていました。
「悲しいお話なのですが、
 悲しいだけではない作品にしたいと思って書き上げました。」
このメッセージどおりの作品です。

67.夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦
■ストーリ
私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。吉田神社で、出町柳駅で、
百万遍交差点で、銀閣寺で、哲学の道で、「偶然の」出逢いは頻発した。
我ながらあからさまに怪しいのである。
そんなにあらゆる街角に、俺が立っているはずがない。
「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど
繰り返す私に、彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。「奇遇ですねえ!」
「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」の運命は??
二人を待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々。

■感想 ☆☆☆☆*
図書館で見つけて「妹に読ませてあげねば!」と借りてきた本。
のはずでしたが、私も手に取り、再読しました。
再読と言うよりは、再々読。もう5回は読み返しています。
「内容はないよ。考えずに、ただ楽しんでね。」と妹には伝えました。
悪口じゃありません。全力で褒めています。大好きな作品ですから。
でも、内容を伝えようと試みるのがとても難しい作品なのです。
登場人物たちがみな生きていくのに必要ないことを
全力でがんばっている姿勢とか、ものすごく真面目に生きているのに
がんばる方向性を180度間違えている様子が大好き。
パンツ総番長、文化祭事務局長を愛してやみません。