久々の落語ブームに、しょっちゅう訪れる児童小説ブーム、そして、定期的に訪れるノンフィクションブームが私のもとにやってきました。つまり、本を読むことに疲れていると思われます。疲れると、なぜか(って、あまり考えることなく読み進められるから、ですが)児童小説に手を伸ばしたくなるのです。懐かしく「あの頃に」立ち帰れます。それにしても、落語との再会は私にとって幸せな収穫でした。でも、ただでさえ、好きなものが多すぎて時間が足りない私にとって、好きなものが増えるのはちょっと困ったことでもあるのです。
37.カフーを待ちわびて/原田マハ
■ストーリ
沖縄の離島・与那喜島で、雑貨商を営みながら淡々と暮らしている明青のところに、ある日「幸」と名乗る女性から便りがやってきた。明青が旅先の神社で絵馬に残した「嫁に来ないか」という言葉を見て、手紙を出してきたのだ。「私をお嫁さんにしてください」幸からの思いがけない手紙に半信半疑の明青の前に現れたのは、明青が見たこともないような美(チュ)らさんだった。幸は神様がつれてきた花嫁なのか?戸惑いながらも、溌剌とした幸に思いをつのらせる明青。折しも島では、リゾート開発計画が持ち上がっていた。
■感想 ☆☆
ラブストーリーが読みたくなって借りた作品。ラブストーリーって難しいな・・・と思いました。読みやすくて面白かったけれど、ラブストーリ部分よりも島のリゾート開発のほうが私にとってはインパクトが大きかったために、主人公ふたりそっちのけで読み進めてしまいました。経済が立ち行かなくなった島でのリゾート開発は、そこで暮らす人にとってどんな意味を持つのか。生きていくためには、きれい事だけではすまされないけれど、こうやって私たちはいろんなものを失ってきたのかもしれない、と思わされました。玉山鉄二さん主演で映画化されてるんだとか。見てみたいなー。
38.ストーリー・セラー/有川浩
■ストーリ
小説家と、彼女を支える夫を突然襲った、あまりにも過酷な運命。極限の選択を求められた彼女は、今まで最高の読者でいてくれた夫のために、物語を紡ぎ続けた。
■感想 ☆☆☆☆
「ラブコメ大好きで何が悪い」有川さんの名言です。この作品はコメディではないけれど、それでも有川さんの信念が伝わってくる作品でした。本人を彷彿とさせる男前なヒロインたち。彼女と彼女とともに歩む夫が互いに支えあい、思いあう姿に、思わず目頭が熱くなりました。ずるいなぁ、そう思わずにはいられない作品です。
39.炉辺荘(イングルサイド)のアン(第七赤毛のアン)/モンゴメリ
40.アンをめぐる人々(第八赤毛のアン)/モンゴメリ
41.虹の谷のアン(第九赤毛のアン)/モンゴメリ
42.アンの娘リラ(第十赤毛のアン)/モンゴメリ
■ストーリ
今やアンは6人の子どもの母親となりました。アンの愛と知恵とユーモアに溢れた子育ての日々を描く「炉辺荘のアン」一見平穏なアヴォンリーに起る様々な事件を愛とユーモアで紹介する「アンをめぐる人々」アンの子供達と隣家の牧師一家の子供たちの交流をユーモアたっぷりに描く「虹の谷のアン」そして、アンとアンの末娘リラを中心に、第一次世界大戦が勃発した世界で、成長した息子たちや娘の恋人たちが次々に出征していく中、悲しみに耐える残された人々を描いた「アンの娘リラ」
■感想 ☆☆☆☆☆
ようやくようやく赤毛のアンシリーズをすべて読み終えました。途中で放り出したままだったアンシリーズですが、最後まで読めて本当によかった。大好きな古い友人の「その後の生活」を知ることができて満足しました。もっとも印象的だったのは、シリーズの中でテイストが異なる「アンの娘リラ」。平和でのどかだったアヴォンリーの生活に戦争が影を落とす様を丁寧に描いていて胸が痛くなりました。どこの国であろうと、「国のために戦う若者の姿」や「残される人たちの悲しみ」は変わらないのだということを改めて実感しました。
43.おおきなかぶ、むずかしいアボカド~村上ラヂオ2~/村上春樹
■内容
1.人の悪口を具体的に書かない、2.言い訳や自慢をなるべく書かない、3.時事的な話題は避ける。村上春樹さんがエッセイを書く時に自ら課したルール。その法則に則って書かれた、どうでもいいようだけど、やっぱりどうにも読み過ごすことが出来ない、心に沁みる興味津々のエピソード。大橋歩さんの美しい銅版画を挿画に綴られたアンアンの人気エッセイを書籍化。
■感想 ☆☆☆☆
どの文章からも伝わってくる村上さんの誠実な、でも一風変わった人柄が心地よいエッセイ集。村上さんの文章を読むたびに、私は彼の文章から漂う品の良さ、そして揺るぎない信念が好きなのだと実感します。このエッセイ集を図書館から借りている間に3度ほど読み返しました。
44.よってたかって古今亭志ん朝/志ん朝一門
■内容
生前、他人にあまり自分の内面を見せることがなかった古今亭志ん朝。直弟子たちによって語られた芸に厳しく、人間味豊かな名人の素顔。
45.名人―志ん生、そして志ん朝 /小林信彦
■内容
2001年10月1日、古今亭志ん朝急逝の報にふれて衝撃を受けた著者が、哀惜の念をこめて、志ん生と志ん朝、父子二代の落語家を論じる。
46.志ん朝の走馬灯/京須 偕充
■内容
古今亭志ん朝が生前唯一、その落語の録音を許したプロデューサーであり、数多くの落語家の音源制作を手掛けた著者が、折々に書いてきた「古今亭志ん朝」の素顔、横顔、そして志ん朝落語に関する評論を、あらたに書き下ろした文章も追加して一冊にまとめたもの。初めて言葉を交わした日から、早すぎる死まで。一人のプロデューサーの記憶に焼きついた志ん朝の姿を追憶する。
■感想 ☆☆☆☆
時折襲われるフィクション疲れによる「本読みたくない病」のため、普段は滅多に訪れないノンフィクションの棚で本を物色しました。つらつらタイトルを眺めているとふと目についたのは落語関係の本。無性に読みたくなり、一番多く並べられていた志ん朝師匠に関するものを3冊借りました。この3冊が大当たりで、3冊それぞれに弟子、ファン、プロデューサーと異なる視点から偏りなく志ん朝師匠を知ることができ、大いに楽しみました。
そもそも落語が好きとは言え、詳しくはなく、志ん生師匠の落語は聴いたことがあるものの、志ん朝師匠の落語は未聴。だからこそ、稀代の落語家、志ん朝師匠の落語に対して、物狂おしいほどのあこがれにかられました。ぜひ一度、聴いてみたかった。同じ時代を生きていたのに、一度も聴いたことがないなんて、なんてもったいないことをしたんだろう、とそういうふうに思わされました。
また落語家(より、私は噺家という言葉のほうが好きですが)さんたちの独特な師弟関係も興味深く読み進めました。伝統芸能でもある落語故の口伝による芸の受け渡し、「この噺は、あの師匠筋のものだから」という筋の通し方など、潔く、すがすがしさを感じさせられる風習にさわやかな気持ちになりました。とはいえ、お弟子さんたちによる「よってたかって~」によると、そういった風習も徐々にすたれてきており、今の噺家さんは師匠の噺をテープに録って覚えたり、違う師匠筋の噺も何の断りもなく高座にかけたりすることがあるんだとか。「伝統」を大切にしている噺家さんたちすら、時代によって少しずつ変わっていく寂しさ、面倒だけど、大切に残してほしい風習が失われていくやりきれなさを感じさせられました。
3冊の本すべてから伝わってきたのは、志ん朝という稀代の噺家の厳格さ、芸に対しての真摯さ、厳しさ、誇り高さ。プライドを持って、芸に生きた噺家の姿を憧れを持って読み進めました。
この本のおかげで、テレビでたまに放映されている高座をビデオ録画するようになりました。またタイミングよく、志ん朝師匠の大須演芸場での独演会がCDブックとして発売されてしまったのです。全30巻!見たい!でも、高い!!うっかり買ってしまわないように気を付けないと!
47.水底フェスタ/辻村深月
■ストーリ
村も母親も捨てて東京でモデルとなった由貴美。突如帰郷してきた彼女に魅了された広海は、村長選挙を巡る不正を暴き、村を売ろうとしている由貴美に協力する。だが、由貴美が本当に欲しいものは別にあった。
■感想 ☆
ここ最近、辻村作品との相性が悪く、今回も作品世界にまったく入り込むことができませんでした。読み進めるのがとてもつらい作品でした。ただ、文章の持つ訴求力は高かったので、辛かったのは純粋に、私がこういった話が苦手だからだと思われます。人が「好き」だの「嫌い」だのそういった感情に振り回されて、理性を失う話がとてつもなく苦手なのです。ただ、作品全体の空気感は単館系日本映画で、映画化されると面白いのかもしれないとも思いました。文章だけで読み進めると、「あちらの世界に堕ちていく」緊張感が私にとって、息苦しすぎましたが、映像だとやや緩和される気がします。
その場合、ヒロインのイメージはビジュアル的には、市川美和子さんです。でも、菅野美穂さんもこういった「魔性の女」を嬉々として演じそうだな、とも思います。彼女にふりまわされる年下の男の子は、三浦春馬さんかなー。・・・ちょっと違うかな。も少し芯が強い感じなんだけどな。
48.バレエものがたり./アデル・ジュラス
■ストーリ
舞台の上のロマンチックな踊りの世界が物語になりました。お姫さまや王子さま、美しい乙女や奇妙な生きものたちが、恋をしたり、変身したり、幽霊になったり、ふしぎな魔法のお話をくりひろげます。「ジゼル」「コッペリア」「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」「火の鳥」の6話による短編集。
■感想 ☆☆*
有名な話ほど、漠然とストーリーの流れを知ってはいても、詳しいところはよく知らなかったり通して読んだことはなかったりするもんだな、と思いました。「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」は絵本で読んで話の流れまでちゃんと記憶に残っているけれど、「ジゼル」も「コッペリア」も通して読むのは初めてで、とても新鮮でした。
49.人形の家/ルーマ・ゴッデン
■ストーリ
小さなオランダ人形のトチーは「人形の家」で両親と弟のりんごちゃん、犬のかがりと幸せに暮らしていました。しかし、ある日、ごうまんな人形、マーチペーンが「人形の家」に入りこみ、思いがけない事件がおこります。
■感想
小さいころ、共に遊んだ人形やぬいぐるみを懐かしく思い出す作品。幼いころは何の疑問もなく、人形には人格があると信じていたし、今も心のどこかで「もしかしたら・・・」という想いを捨てられないで抱えている気がします。だから、人形の擬人化は抵抗なく受け入れられるし、意地悪な子もいれば、高慢な子がいたり、賢くはないけれど正直な子がいたり、という人間(人形?)模様も面白く読み進めました。
分かりやすく意地悪な子よりも、一見、人当たりがよくて、でも心の中に野望を抱えている子のほうが百倍ぐらい怖いし、たちが悪い。そして、争いの火種となる最も恐ろしい感情は「愛されたい」という欲望に「自分だけが」という特権意識が付与されたときなのかもしれない、と思いました。みんなと同じように愛されたい、でもなく、みんな同じぐらい愛されたい、でもなく、みんなより少しでも多く愛されたい、私だけが愛されたい、という想いは独占欲へと発展し、そのために周囲の人たちをおとしいれたりする感情につながるのだろうと思いました。そんな目には見え難い悪意に立ち向かえるのは「賢さ」とか「優しさ」ではなく、「自分を信じる心」「自分に正直な心」なのかもしれない、とも思いました。自分を信じているから、理不尽な要求にも屈しないし、自分が大切にしていることを守り通す。不器用な強さがまぶしく輝く作品でした。
50.くらやみ城の冒険/マージェリー・シャープ
51.ダイヤ城からの脱出/マージェリー・シャープ
52.くらやみ城の冒険/マージェリー・シャープ
53.地下の湖の冒険/マージェリー・シャープ
54.オリエントの冒険/マージェリー・シャープ
■ストーリ
優美で勇敢なミス・ビアンカが様々な人たちを助けに行く冒険譚。
第1巻では、ネズミたちで結成されている囚人友の会はが最悪の牢獄「くらやみ城」に投獄されたノルウェイ詩人を救出するため、ノルウェイ語を話せるノルウェイ鼠を招くところから始まります。ノルウェイ鼠を招くためには、ノルウェイに行く必要があり、かくして、外交官に飼われ、せとものの塔に住み、飛行機で世界中を行ったり来たりしているミス・ビアンカに白羽の矢が立ちました。そして、ここから彼女と大使館の厨房に住む鼠のバーナードの冒険が始まり、意地悪な女王の館から孤児の女の子を助けたり(2巻)、孤児の女の子を逃してしまったために、女王から罰として塔に閉じ込められている元悪者の大臣を助けたり(3巻)、地下の湖から行方不明の男の子を無事に連れ帰ったり(4巻)、オリエントの女王の罰を受けて象に踏みつぶされる運命にある給仕の男の子と女中頭の女性を救い出したり(5巻)するのです。
■感想 ☆☆☆☆
とにかくビアンカが魅力的!白い艶やかな毛並みに漆黒の瞳、細いしなやかな体につけられた細い銀のネックレス。優美で優雅な語り口調、品よく、育ちも良く、思いやりもあって、でもほんの少し世間知らずで、思い立ったらすぐ行動に移してしまう向う見ずなところもある。そんなビアンカが持ち前の行動力で次々の人間を救い出す行動力は読んでいてすかっとします。第1巻を読み終えた瞬間にシリーズ全作品をよみとおしたい!と強く思いました。残り2巻。ビアンカとバーナードの間に漂うそこはかとない恋愛感情は実を結ぶのか、大使のぼっちゃんは無事に成長し、ミス・ビアンカと一緒でなくても平気になってしまうのか(それも寂しい・・・・)。彼女たちのこれからを見守ります。
37.カフーを待ちわびて/原田マハ
■ストーリ
沖縄の離島・与那喜島で、雑貨商を営みながら淡々と暮らしている明青のところに、ある日「幸」と名乗る女性から便りがやってきた。明青が旅先の神社で絵馬に残した「嫁に来ないか」という言葉を見て、手紙を出してきたのだ。「私をお嫁さんにしてください」幸からの思いがけない手紙に半信半疑の明青の前に現れたのは、明青が見たこともないような美(チュ)らさんだった。幸は神様がつれてきた花嫁なのか?戸惑いながらも、溌剌とした幸に思いをつのらせる明青。折しも島では、リゾート開発計画が持ち上がっていた。
■感想 ☆☆
ラブストーリーが読みたくなって借りた作品。ラブストーリーって難しいな・・・と思いました。読みやすくて面白かったけれど、ラブストーリ部分よりも島のリゾート開発のほうが私にとってはインパクトが大きかったために、主人公ふたりそっちのけで読み進めてしまいました。経済が立ち行かなくなった島でのリゾート開発は、そこで暮らす人にとってどんな意味を持つのか。生きていくためには、きれい事だけではすまされないけれど、こうやって私たちはいろんなものを失ってきたのかもしれない、と思わされました。玉山鉄二さん主演で映画化されてるんだとか。見てみたいなー。
38.ストーリー・セラー/有川浩
■ストーリ
小説家と、彼女を支える夫を突然襲った、あまりにも過酷な運命。極限の選択を求められた彼女は、今まで最高の読者でいてくれた夫のために、物語を紡ぎ続けた。
■感想 ☆☆☆☆
「ラブコメ大好きで何が悪い」有川さんの名言です。この作品はコメディではないけれど、それでも有川さんの信念が伝わってくる作品でした。本人を彷彿とさせる男前なヒロインたち。彼女と彼女とともに歩む夫が互いに支えあい、思いあう姿に、思わず目頭が熱くなりました。ずるいなぁ、そう思わずにはいられない作品です。
39.炉辺荘(イングルサイド)のアン(第七赤毛のアン)/モンゴメリ
40.アンをめぐる人々(第八赤毛のアン)/モンゴメリ
41.虹の谷のアン(第九赤毛のアン)/モンゴメリ
42.アンの娘リラ(第十赤毛のアン)/モンゴメリ
■ストーリ
今やアンは6人の子どもの母親となりました。アンの愛と知恵とユーモアに溢れた子育ての日々を描く「炉辺荘のアン」一見平穏なアヴォンリーに起る様々な事件を愛とユーモアで紹介する「アンをめぐる人々」アンの子供達と隣家の牧師一家の子供たちの交流をユーモアたっぷりに描く「虹の谷のアン」そして、アンとアンの末娘リラを中心に、第一次世界大戦が勃発した世界で、成長した息子たちや娘の恋人たちが次々に出征していく中、悲しみに耐える残された人々を描いた「アンの娘リラ」
■感想 ☆☆☆☆☆
ようやくようやく赤毛のアンシリーズをすべて読み終えました。途中で放り出したままだったアンシリーズですが、最後まで読めて本当によかった。大好きな古い友人の「その後の生活」を知ることができて満足しました。もっとも印象的だったのは、シリーズの中でテイストが異なる「アンの娘リラ」。平和でのどかだったアヴォンリーの生活に戦争が影を落とす様を丁寧に描いていて胸が痛くなりました。どこの国であろうと、「国のために戦う若者の姿」や「残される人たちの悲しみ」は変わらないのだということを改めて実感しました。
43.おおきなかぶ、むずかしいアボカド~村上ラヂオ2~/村上春樹
■内容
1.人の悪口を具体的に書かない、2.言い訳や自慢をなるべく書かない、3.時事的な話題は避ける。村上春樹さんがエッセイを書く時に自ら課したルール。その法則に則って書かれた、どうでもいいようだけど、やっぱりどうにも読み過ごすことが出来ない、心に沁みる興味津々のエピソード。大橋歩さんの美しい銅版画を挿画に綴られたアンアンの人気エッセイを書籍化。
■感想 ☆☆☆☆
どの文章からも伝わってくる村上さんの誠実な、でも一風変わった人柄が心地よいエッセイ集。村上さんの文章を読むたびに、私は彼の文章から漂う品の良さ、そして揺るぎない信念が好きなのだと実感します。このエッセイ集を図書館から借りている間に3度ほど読み返しました。
44.よってたかって古今亭志ん朝/志ん朝一門
■内容
生前、他人にあまり自分の内面を見せることがなかった古今亭志ん朝。直弟子たちによって語られた芸に厳しく、人間味豊かな名人の素顔。
45.名人―志ん生、そして志ん朝 /小林信彦
■内容
2001年10月1日、古今亭志ん朝急逝の報にふれて衝撃を受けた著者が、哀惜の念をこめて、志ん生と志ん朝、父子二代の落語家を論じる。
46.志ん朝の走馬灯/京須 偕充
■内容
古今亭志ん朝が生前唯一、その落語の録音を許したプロデューサーであり、数多くの落語家の音源制作を手掛けた著者が、折々に書いてきた「古今亭志ん朝」の素顔、横顔、そして志ん朝落語に関する評論を、あらたに書き下ろした文章も追加して一冊にまとめたもの。初めて言葉を交わした日から、早すぎる死まで。一人のプロデューサーの記憶に焼きついた志ん朝の姿を追憶する。
■感想 ☆☆☆☆
時折襲われるフィクション疲れによる「本読みたくない病」のため、普段は滅多に訪れないノンフィクションの棚で本を物色しました。つらつらタイトルを眺めているとふと目についたのは落語関係の本。無性に読みたくなり、一番多く並べられていた志ん朝師匠に関するものを3冊借りました。この3冊が大当たりで、3冊それぞれに弟子、ファン、プロデューサーと異なる視点から偏りなく志ん朝師匠を知ることができ、大いに楽しみました。
そもそも落語が好きとは言え、詳しくはなく、志ん生師匠の落語は聴いたことがあるものの、志ん朝師匠の落語は未聴。だからこそ、稀代の落語家、志ん朝師匠の落語に対して、物狂おしいほどのあこがれにかられました。ぜひ一度、聴いてみたかった。同じ時代を生きていたのに、一度も聴いたことがないなんて、なんてもったいないことをしたんだろう、とそういうふうに思わされました。
また落語家(より、私は噺家という言葉のほうが好きですが)さんたちの独特な師弟関係も興味深く読み進めました。伝統芸能でもある落語故の口伝による芸の受け渡し、「この噺は、あの師匠筋のものだから」という筋の通し方など、潔く、すがすがしさを感じさせられる風習にさわやかな気持ちになりました。とはいえ、お弟子さんたちによる「よってたかって~」によると、そういった風習も徐々にすたれてきており、今の噺家さんは師匠の噺をテープに録って覚えたり、違う師匠筋の噺も何の断りもなく高座にかけたりすることがあるんだとか。「伝統」を大切にしている噺家さんたちすら、時代によって少しずつ変わっていく寂しさ、面倒だけど、大切に残してほしい風習が失われていくやりきれなさを感じさせられました。
3冊の本すべてから伝わってきたのは、志ん朝という稀代の噺家の厳格さ、芸に対しての真摯さ、厳しさ、誇り高さ。プライドを持って、芸に生きた噺家の姿を憧れを持って読み進めました。
この本のおかげで、テレビでたまに放映されている高座をビデオ録画するようになりました。またタイミングよく、志ん朝師匠の大須演芸場での独演会がCDブックとして発売されてしまったのです。全30巻!見たい!でも、高い!!うっかり買ってしまわないように気を付けないと!
47.水底フェスタ/辻村深月
■ストーリ
村も母親も捨てて東京でモデルとなった由貴美。突如帰郷してきた彼女に魅了された広海は、村長選挙を巡る不正を暴き、村を売ろうとしている由貴美に協力する。だが、由貴美が本当に欲しいものは別にあった。
■感想 ☆
ここ最近、辻村作品との相性が悪く、今回も作品世界にまったく入り込むことができませんでした。読み進めるのがとてもつらい作品でした。ただ、文章の持つ訴求力は高かったので、辛かったのは純粋に、私がこういった話が苦手だからだと思われます。人が「好き」だの「嫌い」だのそういった感情に振り回されて、理性を失う話がとてつもなく苦手なのです。ただ、作品全体の空気感は単館系日本映画で、映画化されると面白いのかもしれないとも思いました。文章だけで読み進めると、「あちらの世界に堕ちていく」緊張感が私にとって、息苦しすぎましたが、映像だとやや緩和される気がします。
その場合、ヒロインのイメージはビジュアル的には、市川美和子さんです。でも、菅野美穂さんもこういった「魔性の女」を嬉々として演じそうだな、とも思います。彼女にふりまわされる年下の男の子は、三浦春馬さんかなー。・・・ちょっと違うかな。も少し芯が強い感じなんだけどな。
48.バレエものがたり./アデル・ジュラス
■ストーリ
舞台の上のロマンチックな踊りの世界が物語になりました。お姫さまや王子さま、美しい乙女や奇妙な生きものたちが、恋をしたり、変身したり、幽霊になったり、ふしぎな魔法のお話をくりひろげます。「ジゼル」「コッペリア」「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」「火の鳥」の6話による短編集。
■感想 ☆☆*
有名な話ほど、漠然とストーリーの流れを知ってはいても、詳しいところはよく知らなかったり通して読んだことはなかったりするもんだな、と思いました。「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」は絵本で読んで話の流れまでちゃんと記憶に残っているけれど、「ジゼル」も「コッペリア」も通して読むのは初めてで、とても新鮮でした。
49.人形の家/ルーマ・ゴッデン
■ストーリ
小さなオランダ人形のトチーは「人形の家」で両親と弟のりんごちゃん、犬のかがりと幸せに暮らしていました。しかし、ある日、ごうまんな人形、マーチペーンが「人形の家」に入りこみ、思いがけない事件がおこります。
■感想
小さいころ、共に遊んだ人形やぬいぐるみを懐かしく思い出す作品。幼いころは何の疑問もなく、人形には人格があると信じていたし、今も心のどこかで「もしかしたら・・・」という想いを捨てられないで抱えている気がします。だから、人形の擬人化は抵抗なく受け入れられるし、意地悪な子もいれば、高慢な子がいたり、賢くはないけれど正直な子がいたり、という人間(人形?)模様も面白く読み進めました。
分かりやすく意地悪な子よりも、一見、人当たりがよくて、でも心の中に野望を抱えている子のほうが百倍ぐらい怖いし、たちが悪い。そして、争いの火種となる最も恐ろしい感情は「愛されたい」という欲望に「自分だけが」という特権意識が付与されたときなのかもしれない、と思いました。みんなと同じように愛されたい、でもなく、みんな同じぐらい愛されたい、でもなく、みんなより少しでも多く愛されたい、私だけが愛されたい、という想いは独占欲へと発展し、そのために周囲の人たちをおとしいれたりする感情につながるのだろうと思いました。そんな目には見え難い悪意に立ち向かえるのは「賢さ」とか「優しさ」ではなく、「自分を信じる心」「自分に正直な心」なのかもしれない、とも思いました。自分を信じているから、理不尽な要求にも屈しないし、自分が大切にしていることを守り通す。不器用な強さがまぶしく輝く作品でした。
50.くらやみ城の冒険/マージェリー・シャープ
51.ダイヤ城からの脱出/マージェリー・シャープ
52.くらやみ城の冒険/マージェリー・シャープ
53.地下の湖の冒険/マージェリー・シャープ
54.オリエントの冒険/マージェリー・シャープ
■ストーリ
優美で勇敢なミス・ビアンカが様々な人たちを助けに行く冒険譚。
第1巻では、ネズミたちで結成されている囚人友の会はが最悪の牢獄「くらやみ城」に投獄されたノルウェイ詩人を救出するため、ノルウェイ語を話せるノルウェイ鼠を招くところから始まります。ノルウェイ鼠を招くためには、ノルウェイに行く必要があり、かくして、外交官に飼われ、せとものの塔に住み、飛行機で世界中を行ったり来たりしているミス・ビアンカに白羽の矢が立ちました。そして、ここから彼女と大使館の厨房に住む鼠のバーナードの冒険が始まり、意地悪な女王の館から孤児の女の子を助けたり(2巻)、孤児の女の子を逃してしまったために、女王から罰として塔に閉じ込められている元悪者の大臣を助けたり(3巻)、地下の湖から行方不明の男の子を無事に連れ帰ったり(4巻)、オリエントの女王の罰を受けて象に踏みつぶされる運命にある給仕の男の子と女中頭の女性を救い出したり(5巻)するのです。
■感想 ☆☆☆☆
とにかくビアンカが魅力的!白い艶やかな毛並みに漆黒の瞳、細いしなやかな体につけられた細い銀のネックレス。優美で優雅な語り口調、品よく、育ちも良く、思いやりもあって、でもほんの少し世間知らずで、思い立ったらすぐ行動に移してしまう向う見ずなところもある。そんなビアンカが持ち前の行動力で次々の人間を救い出す行動力は読んでいてすかっとします。第1巻を読み終えた瞬間にシリーズ全作品をよみとおしたい!と強く思いました。残り2巻。ビアンカとバーナードの間に漂うそこはかとない恋愛感情は実を結ぶのか、大使のぼっちゃんは無事に成長し、ミス・ビアンカと一緒でなくても平気になってしまうのか(それも寂しい・・・・)。彼女たちのこれからを見守ります。